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人形遊び
作った人形をバスケットに入れて、きょうも公園へいく。
昨日のことだ。
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ふらふらと歩く。通学路の近道は、この公園を経由するルートだ。
いつもは|人気《ひとけ》のない公園だが、ベンチに座っている子がいた。
「あら、この公園にもいたのね、お客さん」
しっとりとした感じの長い黒髪。白いブラウスに紺色のスカート、ハイソックス。
『麗しい』という言葉がぴったりのその子は、にっこりとベンチで微笑んでいた。
「み、見かけない人…ですね」
「ここに久しぶりに来たのですから。わたしはレイ。よろしくね」
「わ、わたしは|雨森風花《あまもりふうか》です。よろしくお願いします」
ふふふとレイは上品に笑った。
「風花、あなたが好きな遊びは何かしら?」
「えっ、えっと」
本当はお人形遊びが好きなのだけれど、そんなこと言えない。
「特にないです」
「そうなの?」
ガサゴソと、どこから現れたのか分からないバスケットを漁る音が聞こえた。
その中から出てきたのは、可愛らしいぬいぐるみと、人形。布製で、おばあちゃんのあたたかみがあるような、市販のものにはない感じがする。
「わたしはこの遊びも好きなのよ。あなた、とってもかわいいお人形を持っているわよね?明日、ここでお人形を見せ合いっこしましょうよ」
「わあ…!作ったの?」
「ええ、まあ。着せ替える服もあるのよ」
「すごい!」
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持ってきた人形で、人形劇をした。なんと、レイは『魔法をかけた』と言って、人形を動かせるようにしてくれたのだ。もちろん、ここだけで。
いつの間にか日が暮れて、真っ赤になっていた。
もう帰ったら、という言葉どおりわたしは帰った。
そして、言われた。このことは絶対に秘密よ、と。
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「ねえ、2年生!」
「ど、うしたんですか」
2年生、という声が聞こえた。由来は雨森風花という名前が2年生でもう書けるから。ちなみに風以外すべて1年生。
彼女は|桐谷萌音《きりたにもね》。いついじめをしてもおかしくないような子。
「昨日、花形公園で見た。2年生が、女の子といっしょに人形で遊んでたところ」
バカにされるのかと思った。
「人形が、動いてたんだけど?」
「!?」
「どういうこと?その人形、どこにあんの?きょう、花形公園に行くから」
無駄に抵抗してもかえって怪しまれるため、わたしは平然を装った。
「わかりました」
「ふっふっふ、その人形、貸してもらうから」
そんな…レイと、遊べなくなっちゃう。
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「きゃあああああっ!!」
誰かの悲鳴が聞こえた。
「レイ!?」
「あら、風花。残念だけど、これで風花と遊べるのはおしまいね」
「…なんでっ?」
「見られたからよ」
見られたのが、何が悪いの。
「また会いましょう。次は、もっと人形を持ってくるわ。あなたは遊んでて楽しかったから、はやく戻ってくるわ」
ふっと、レイは消えた。
地面を見下ろす。そこには、傷ついて気絶しているとみられる萌音と、ズタズタの人形があった。