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私のことを救ったあの人を⑬
星
男の冷酷なカウントダウンが、静まり返った路地裏に響き渡る。「……一」男の人差し指が、ゆっくりと引き金(トリガー)にかけられた。銃口を突きつけられた朝日先輩は、地面に顔を伏せたまま、悔しさで歯をくいしばっている。桜の頭の中は真っ白になり、涙がボロボロとこぼれ落ちた。もう本当に、完全に無理だと思った、その時。カチッ……ジジジジ……。桜の並外れた「耳」が、男たちの背後にある、古い倉庫の壁に設置された【化石のような古いスプリンクラー】のタイマーが作動した、かすかな音を捉えた。その真下には、男たちがさっき蹴飛ばした、ゴミ溜めの大きな鉄パイプが今にも崩れそうに積み上がっている。(あのスプリンクラーが回れば、水圧で鉄パイプが崩れる……! あと二秒!)口を真一文字に結んだ桜は、必死の思いで朝日先輩に視線を送った。一か月間、誰よりも桜のことだけを考えていた朝日先輩だからこそ、その涙に濡れた瞳が何を訴えているのか、直感で理解した。(桜……! 何かがあるんだな……!?)「これで終わりだ、ガキども」男が引き金を引こうとした、まさにその瞬間!プシューーーッ!!!突然、古いスプリンクラーから猛烈な勢いで水が噴き出した。凄まじい水圧に押され、積み上がっていた大量の鉄パイプが、ガラガラと大音量を立てて男たちの足元へ崩れ落ちた!「うわっ!? なんだぁっ!?」不意を突かれた男たちが一瞬、完全に怯む。「桜、走れぇぇぇッ!!」朝日先輩は痛む足の限界を超えて地面を蹴り、男の手を振り払って桜の腕を強く引っ張った。二人はバックしてきた高級車の脇をすり抜け、狭い路地の隙間へと全速力で駆け抜けた。「クソッ、待ちやがれ!」男たちが銃を構え直したときには、すでに路地裏の向こうから「ウーーーッ!」と、本物のパトカーのサイレンの音が近づいてきていた。異変に気づいた近所の人が、すでに通報してくれていたのだ。「チッ、サツだ! ズラかるぞ!」男たちは大慌てで車に飛び乗り、激しいタイヤの音を立てて夜の闇へと逃げ去っていった。安全な大通りまで逃げ延びたあと、二人はその場にへたり込んだ。「はぁ……はぁ……、助かっ、た……」桜は震えながら、冷たいアスファルトに座り込んだ。「くそっ……!」朝日先輩は激しく震える自分の拳を地面に叩きつけ、情けなさの涙をポロポロと流した。「俺、お前を守るって約束したのに……。また足がもつれて、桜の耳に助けられて……。俺、全然助手なんかじゃないじゃんか……!」そんな朝日先輩の泥だらけの手を、桜は両手でそっと、あたたかく包み込んだ。「そんなことないです! 先輩が私の前に立って男たちを引きつけてくれたから、私は音に集中できたんです。二人の勝利ですよ、先輩!」本物の悪党を退けた二人。恐怖は去ったけれど、朝日先輩の心には「もっと強くならなきゃいけない」という、新しい炎が静かに燃え始めていた――。