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未明からの会話 - ミチの事故の事2 - (4話)
お泊まり林間学校 - ミチの事故の事1 -(3話)の続きです。
ミチとは家が近かったので
学校帰りに少しお喋りをしたり
何度か偶然のように会って散歩したり
それぐらい
僕はミチが大好きだが
片思いだったかもしれない
とても恋愛関係と呼べるような
ものではなかった
でも恋愛関係といえるような
仲になれていたなら
あの事故で一緒に死んでいても
幸せだったかもしれない
なんて考えが
心のどこかで湧いてくる
と同時に
シンラツの言い方に
ちょっと気になる点もある
もしかしたらミチと父親は
事故では致命傷ではなかったが
適切な医療を受けられなかったために
亡くなったのでは
そんな気もしてくる
雲が出てきたのだろうか
星も所々で見えなくなってきた
シンラツに詳しい話を
教えてもらいたい気持ちもあるが
なかなか言葉が切り出せない
そしてなによりも知りたいのは
なぜ僕達は事故にあわなければ
いけなかったのか
なぜミチは死ななければ
ならなかったのか
運転手のせい?
車社会のせい?
スターオーアイの為政者のせい?
ミチの誰も恨んで欲しくないとの言葉も
心に甦る
思考は堂々巡りのもやもや
無言の時間は
長いようにも
短いようにも感じたが
シンラツが口を開く
|「《sN》私達の時代の社会は
なにもかもがダメダメだ
社会の常識もダメダメ
歴史もダメダメ
人は他者を思いやったり
広い範囲の事情を考慮して
自分のやるべきことを見出す
高い能力を本来持っている
しかし私達の社会では
そんな素敵な能力は抑圧され
お金儲けのことばかりが
考えられている
それはお金を儲けなければ
生活できないから
まあ中には
病的にお金儲けが好きな人もいるが
多くの人達は
生活のため
そんな社会は
一部の病人たちが
自分達の都合のよい世界をつくるために
長い歴史の中で
仕込んできたこと
お金がお金を生む
土地などを持っているだけで収入がある
そんなシステムは
格差を拡大し
やがで分断を生み
最後に破滅する
持続可能であるわけがない
でも私達の時代では
それが常識
その常識が
間違いであることを
私はこの未来の文明を見て
気づいた
それは単に
長い歴史の中で
一握りの病人たちが
自分達の都合のよい
社会のシステムを作ってきただけ
彼らが病人であることは
他者を差別し
分断を生み
戦争を起こし
人類全体の寿命を縮めている
ことからも明らかだ
人類自身だけではなく
他の多くの動物種・植物種も
彼らによって絶滅した
既に取り返しのつかない事柄が
沢山おきている
彼らは他者を思いやり
広い範囲での事情を考慮するとの
人間本来の能力が欠損している
病人
私達の時代では
病人が健常者を支配し
病気に対する耐性の弱い健常者が
適応障害などと病人扱いされている
健常者が
権力や経済にがんじがらめにされ
健常者としてふるまえないのが
問題だ
目の不自由な人が時に
目の見える人の助けを受けて
生活しているのだから
病人は病人らしく
健常者に助けてもらいながら
生きて行けばいいのに
権力と武力
これらがやっかいだ
こんなものがあるから
病人が病人であることを恥じもせず
むしろ誇って
健常者を支配しているのだ」
また静寂が訪れる
雲が増えてきたのか
星はほとんど見えなくなり
辺りはすっかり暗くなってしまう
|「《tD》ミチは
そんな社会の
犠牲者
なのかな
だれか特定の人だけの
責任ではない
強いて言えば
こんな社会を作ってきた
多くのご先祖様達と
今社会を牛耳っている人々と
彼らを選んだ民衆と
…
」
|「《sN》そうだな
多分
」
星も見えなくなり
真っ暗闇の中で
僕達は長い時間
語り合った
なぜこんな社会になったのか
どこで道を間違えたのか
これからどうしたらよいのか
色々なことを
思いつくがままに
話し合った
衣食住
普通の社会生活をしていれば
これれか普通に保障される
それが社会のシステムで最低限必要
でも
僕達の時代は
お金を過剰に儲けたい人達のたくらみで
その仕組みさえ崩壊している
贅沢な暮らしをしている人々を
羨む人も多いが
それは間違い
贅沢が幸福なんていうのは
お金を集めたい病人達が
これまたお金を稼ぎたいマスコミと
一緒に作り上げてきた
幻想
贅沢を貪っている人
贅沢を誇っている人
彼らは文明の寿命を縮める
病人
そこまで贅沢できるなら
彼らが提供する品物やサービスを
もうすこし安価にしてもよかったのでは
労働者達にもっと利益を配分しても
よかったのでは
そこまで儲かったのなら
社会の歪で苦労している所に
回してもよかったのでは
でも贅沢な暮らしをしている人々を
為政者も保護している
それは長い年月をかけて
彼らと為政者が
親密な関係を築いてきたから
そして
一般の民衆から
贅沢な暮らしをしている人達へ
さらにお金が流れるシステムを
作ってきて
さらに増強している
社会の格差は広がり
やがで分断を生む
贅沢をすることが幸せだと
思い込んでいる人々も多いが
それも
長い年月をかけて
為政者と一部の病人達が
社会に染み込ませてきた
考え方
それは病気持ちの自分達でも
お金という道具を使って
人々を操りやすくするため
そもそも為政者が
贅沢をしている人から
お金を受け取った瞬間
それは民主主義崩壊の瞬間
健康な人間なら
贅沢をするより
人を思いやることの方が
はるかに幸せの度合いが大きい
そんなあたりまえのことさえ
僕達の時代では
忘れられている
お金を儲けるために
人への迷惑を無視すること
環境への悪影響を無視すること
社会への悪影響を無視すること
将来の社会への悪影響を無視すること
搾取すること
過剰な報酬をとること
過剰な報酬をこっそりとること
当たり前の分配をしないこと
これらは僕らの時代の資本主義社会では
あたりまえのことだけど
人としては間違っている
人間は本来
分け合うことに喜びを感じ
幸せを感じる生き物
でも僕達の時代の資本主義は
奪い合うことを推奨している
人として間違っていることを
強いられるのだから
適応できない人間だって
多いのがあたりまえ
世界を破滅に導く
病人達だけが
いきいきとしている
そして僕達の時代は
人を蹴落としてまで
お金を稼ぐことを考えないと
生活さえなりたたない状況
そのような状態は
その社会の終末期といってよい
終末期の社会の不満を
国内から海外に向けさせて
外国に振り向け
戦争を始める為政者もいる
戦争を始めたい為政者は
民衆から言論の自由を奪うことから
まず始める
言論の自由の制限
それは戦争への道のり
宗教も言論の自由を奪うことがある
それはその宗教の本来の姿ではなく
宗教の内部で
権力を持ちたい病人達の
企みではないのか
そして宗教も
多くの戦争の原因になってきた
言論の自由を奪われてしまったなら
もはや意見を述べることもできない
だからその予兆を早めに察知して
引き返せるうちに引き返さなければならない
でも
どこで
どのように
引き返すのか
それが難しい
為政者や宗教家で
権力を持つ者は
その国や信仰のためと妄信して
言論の自由を奪う
でもそれは本当は
国や信仰のためではない
結局は自分の権力を守るため
さらに大きな権力を得るため
それに気づいていない権力者もいるだろうが
それは彼らが人間としてなにか欠けている
病人だから
当たり前といえば当たり前
こんな社会の中で
自分達がなにかできることは
ないのだろうか
軍備を増強しようとしている国や
核兵器を持っている国
それらに対してなにかできることは
ないのだろうか
一般市民としてできることは
それらの国からの輸入品を買わないこと
それらの国に投資や輸出をしている
国内企業の製品やサービスを
できるだけ避けること
それをすると生活が不便で
そんなことができないほど
僕達の時代の資本主義社会は
病人達によって巧みに仕込まれている
でもできるところから始めないと
世界はいつまでたっても変わらない
戦争に巻き込まれた時の苦労や
戦争に巻き込まれた人々の苦労を
考えれば
ある程度の不便は
今のうちにしておかなければ
ならない
まず大事にしなければいけないのは
歩いて行ける範囲で
地元のお客さんのために
がんばっている
地元の農家や工房やお店
地元で獲れる食材や
生活必需品の材料
核兵器を持っている国に
お金が流れないように
地元だけで生活ができるような
社会を回復していかなければならない
ミチの父親は
通信分野でも
スターオーアイへの依存を
断ち切ろうとしていた
でもそれを止めなければ
娘の命はないと
脅され
そして
娘も自分の命も奪われた
スターオーアイも
自国の経済を成長させたいとの
思いがあるのだろう
でも経済の成長が好ましいというのは
間違った常識
物価も賃金も上がればよいと
考える人は多いが
物価が上がった歪は
様々な所に現れ
社会の中の格差は広がっていく
経済が成長すると良いというのは
多くの人々から財を奪い
自分の所にもっと富を集めたい
一部の病人達が
社会に仕込んできただけのこと
本当の社会の成長というのは
全ての人が
より安全・安心に
より健康に暮らせるようになること
経済的な指標よりも
それが本当に大切なこと
このように
当たり前のように教育されている
間違った常識は多い
そもそも
今の常識を作ってきたのは
戦争を繰り返してきた
ダメダメなご先祖様たち
マスコミの言うことだって
簡単に信じてはいけない
彼らの多くは
お金を儲けたいだけの輩
できれば僕達も
多くの間違えた常識が
払拭された
この未来の時代に生まれたかった
などなど
思いつくままに
沢山のことを話し合った
話に夢中になっているうちに
辺りは少し明るくなってきてた
|「《sN》でも
やっぱり
無理だな
ダメダメな
私達の時代の文明は
一度滅びないといけない
なにをしても無駄だ
ダメダメだ」
朝焼けの美しさも
話してきた内容のためか
どこか不気味に感じる
明るくなってくると
少し離れた場所で
山並みを縫う
白い道のようなものが
見えてきた
|「《sN》
…
あの白い帯は
人の白骨が
積み重なってできている
峠道があったのだろうな
戦闘による道の破壊
混乱による事故の多発
暴徒による車両の破壊
燃料の不足などで
交通機関が麻痺
飢餓状態の都市部の人々が
少しでも食料が確保できる可能性のある
農村部を目指し
歩き続け
屍を乗り越え歩き続け
そして命を落としていった
その
跡
だ
…」
朝焼けの赤さも
どことなく
血の色に見える
|「《sN》やっぱり
私達の文明は
もう引き返せない
ダメダメな所にきている
…
少しでも生き残る可能性を見出すなら
その来るべき日に
人口集中部から
大勢の人々の流入するリスクのない
辺境の地で
自給自足可能な
コミュニティを構築することだ」
|「《tD》
…
」
|「《Hk》でも
私は
まだ色々やってみようと思う」
目の前に
突然の人影
ちょうど昇ってきた太陽を背に
眩しい
逆光で顔はよくみえないが
…
ヒカリ
…
今までの
暗い口調での会話を吹き飛ばすような
明るい口調
|「《Hk》ごめん
勝手についてきて
盗み聞きしてました
へへ
」
夜の間草原と思っていた辺りは
実はお花畑で
陽の光が差し込んでくると
花が開き始めていく
|「《Hk》歌なら
こんな社会も
変えていく力があるのかな
そんな幻想を
私はまだ
持ってるの
トリディボウ君
音楽できるんでしょ
手伝ってくれないかな」
朝の爽やかの風が吹き抜けていく
さっきまでの不気味な雰囲気が
嘘のようだ
一瞬で雰囲気を変えてしまう人が
本当に世の中にはいるのだと感じた
|「《sN》まぁ
その努力も
来るべき日に
世界の各地で生き残る
コミュニティを増やすことは
できるかもしれないな」
(つづく)
つづき は 10月3日に投稿の予定です。予約投稿日を設定して、少しずつ書き進めています。なので、作者になにかあった場合は、未完成の状態で投稿される可能性もあります。