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    1.魔法使えるってマ?
    
    
        第一話目!
    
    
    暇。どうしようもなく暇。
僕、ノア・フォークナーは楽しいことが大好きだった。そもそも両親共に自由を愛していて、純血の貴族であるのにも関わらずマグル界へよく遊びに行くほどだった。僕が小さい頃から勝手に庭の鳥を一羽から二十羽にしても、浴場を真っ黒にして魔王の風呂見たいにしたとしても、ひとつも怒らなかった。それどころか一緒に遊びだす始末。僕が唯一両親に怒られたのは、家を半壊させたときぐらい。マジで怖かった。拘束呪文で逃げないようにされ、二日間父のお説教を食らった。ほんとゴメン。父ちゃん。
そんな家庭で育った僕は、暇を大の苦手としていた。
このバチクソ広い家は五年もすんでりゃ探索しきるし、この世の一人遊びも全部しきった。対戦物は執事とやれば良いと思うかもしれないが、どう言っても手加減される。
「…遊び相手を作れば良いんじゃないか?」
口について出た言葉だった。
よく考えればそうだ。僕天才か?そうと決まればすぐ行動!
「オリヴァー!マグル界にいくから用意して!」
…僕何でマグルって言ったんだろう。
オリヴァーがてきぱきと用意してくれ、マグルのくらす所へ早速行くことになった。
「坊っちゃん、行き先は何処で御座いますか?」
「とりあえず、マグルの孤児院!」
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孤児院につくと、人の良さそうな女性が出てきて案内をしてくれた。子供達はいかにも貴族としか見えない格好をした僕と執事のオリヴァーを見て緊張している。ちょっとキラキラ過ぎたか。ごめん。
う~んこの子は一緒に走りまわれなさそう。この子は戦術系のゲーム苦手かも…
「この孤児院はこの子達だけですか?」
「いえ…もう一人いますが、少し難しい子で…。」
一応見ときたい。可能性があるなら!
「案内して下さい。」
「でも、少し危険で…。」
「大丈夫です。執事が居るので。」
「…分かりました。こちらです。」
女性は少し考えて、孤児院の奥へ歩いた。
薄暗い廊下にポツンと置かれた扉の前に案内された。物置っぽいけど。
女性が扉を開けると、黒髪黒目の恐ろしく顔が整った子供がいた。
「何ですか。」
「あなたを見たいと言う人がいらっしゃったの。」
「新しい精神科医か?僕はおかしい子供なんかじゃない!」
「違います!子供を引き取るためと見に来て下さった人よ!」
言い争う二人のことなんか気にしてなかった。
かわいい!何で?!僕の好みドストライク!!好き…。
オリヴァーとこそこそ話す。
「オリヴァー、僕絶対この子。」
「何故ですか?坊っちゃん。」
「顔。一目惚れした!」
「承知致しました。」
「君、名前なんて言うの?」
「お前に名乗る名前なんて無い。」
「僕引き取る気マンマンだったんだけどな…。」
女性が驚いた声をあげた。
「すみません。一対一で話してみたいのですが…。」
「わ、分かりました。」
「ごめん。僕が名乗って無いじゃん。僕はノア・オーウェン・フォークナー。」
素直に謝った僕に彼が驚いた。
「お前、怒っていないのか?」
「もちろん。」
「…僕はトム・リドルだ。」
「そう。よろしく。」
僕が女性に引き取る旨を伝えようと動くと、トムは察したのか「待て!」と言った。
「自分で言うのもおかしいかもしれない…僕は変な子だぞ。」
ふーんと興味なさげに言うとトムは少しイラッとしたようだった。
「なんで?」
と僕が言うと、彼の机の上の物が一斉に上へ上がった。
「へぇー。こりゃすごいや。」
「驚かないのか?」
と聞かれたけれど、正直すごくびっくりした。お前、魔法使えるってマ?やば。
「僕も出来るからね。」
と返すので精一杯。
でも、僕の言葉にトムが目玉をかっぴらいて本当なのか?と聞いた。
「嘘つくわけ無いよ。」
「見せろ。この場で。」
トムがそう言うから、僕は指をふってみせた。僕たちの足元が青い花の咲きほこる野原に変わった。
「本当なんだな。」
「まあね。」
今度こそ僕が伝えに行こうと動いても、トムは何も言わなかった。
色んな手続きはオリヴァーがやってくれた。女性は終始驚きっぱなしで、僕が帰るというとありがとうと言った。
…トムってそんな嫌われてんの?
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「なんでお前は僕を引き取ったんだ。」
「単純な理由だよ。僕が君に一目惚れしたってだけ。」
僕がそう言うとトムは顔を赤らめた。トムの黒目が赤く光った。かわいいな。お前。
「君の目赤くなってる。僕と対照的だね。」
トムはよく分かっていないようだった。
「僕の髪は白いけど君は黒い。目だって僕が青で君が赤。真逆じゃん。」
トムは納得したようだった。
「というか、今更だけど君とかお前って辞めようか。僕のことはノアって呼んで。君のことは何て呼べばいい?」
「トムでいい。」
「おっけー!よろしく!トム。」