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クローバー
この世界では、かかると死ぬ病が流行した。
この国にははまだ感染者はいなかったが、他国では何万人もの人がその病によって命を奪われていた。
私には愛する彼女がいた。
髪は長くウルフカットで、左耳の上には黒いヘアピンをつけていた。
目はぱっちりとしていてかわいかった。
ある日一緒に帰ると、彼女は声がガラガラになっており少し苦しそうにしていた。
彼女は、「明日学校休むかも」と言っていた。
次の日、彼女は学校に来なかった。
彼女からの連絡によると症状が悪化したようだった。
数日後、彼女が死んだとの連絡が来た。
今まであんなに話していたのにと信じられなかった。
これも全部夢なんだと思い込み頬を叩くが、しっかり痛く、頬が微かに赤くなった。
私は、学校に行かなくなった。
数日後、私も彼女と同じ症状が出始めた。
喉の痛み、吐き気、頭痛。
あの日うつってしまったのかもしれなかった。
翌日にはさらに症状が悪化し、ベッドから起き上がることもできなくなった。
天井を見上げると、相変わらず少し黒ずんでおり、少しばかりある黒い点やシミらしきものを見つめる。
別にこれでよかった。
そう思っていたが彼女の視界はみるみるぼやけていく。
天国に行ったら、彼女に会えるといいな。
そう思い、目を瞑る。
彼女は、夢の中で白い狼を見た。
その狼はクローバーに囲まれ、こちらを優しい眼差しで見つめていた。