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いじめっ子視点 悪魔が彼女を乗っ取った #9
弐虎れいな
9話です。
ただいま、この小説のキャラへの質問をリクエスト箱で受け付けます。
じゃんじゃん質問お願いします。
詳細はリクエスト箱に書いてあります。
俺―――|桐山竜馬《きりたにたつま》は今、必死に逃げていた。
くそ、どうして俺がこんな目に!
事はおよそ4時間前に遡る。
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朝礼時、いつものようにエリカが美春にちょっかいをかけていた。
記憶喪失なんて、奴には関係ないらしい。
俺はギリッと歯ぎしりをした。
許せない、エリカの奴。美春の注目を集めて。
《《美春が注目するのは俺だけじゃなきゃ》》。
ところがどうしたことだろう?
美春はちっともオドオドせず、真っ直ぐにエリカを見ている。
気に食わない。なんだあの態度。
美春はもっと怯えていなければならないのだ。《《俺にだけ》》。
思わず、椅子から立ち上がる。
美春は怯えるどころか真っ直ぐにこちらを見る。
そうだ。《《もっと俺を見ろ》》。
俺は美春に昼休み校舎裏へ来るように言った。
美春は、普段の美春がしないような禍々しい笑みを浮かべて頷く。
まさかあんなことになるだなんて、ちっとも思ってなかった。
破滅へのスタートは切って落とされた。
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昼休み。
いつもより早く弁当を食べ終えた俺は、取り巻きたちと共に校舎裏へ向かう。
校舎裏へは既に、美春が来ていた。
俺は少し驚きつつ、美春に手を振る。
「よぉ。美春。ずいぶんと早いじゃないか。」
「そりゃそうでしょ。私、お弁当食べてないもん。」
ニンマリと笑いながらそういう美春に背筋にヒヤリとするものを覚える。
俺が美春に怯えてる?ふざけるな。
俺は美春の肩を強く掴む。美春は忌々しそうにこちらを睨む。
気に入らない。気に入らない!
俺はどんどん力を込めていく。
「ねぇ、―――いてぇんだけど?」
美春は自分の肩に乗せられた俺の手を掴む。
そして俺の視界は―――逆さになった。
「ぐはっ!」
強い衝撃と共に俺は地面に転がる。
投げられたのだと、この時初めて気づいた。
「あー。やっぱこの細腕じゃ投げ飛ばすのが精々、か。」
美春はまるで俺なんていなかったように、取り巻きたちを見る。
「じゃあ?次。誰が来るの?」
取り巻きたちは一斉に美春に飛びかかる。
美春は怯えるかと思ったが、取り巻きたちを見て、ニヤリと笑う。
ゾッと怖いものを感じた俺は取り巻きたちを静止させるべく声をあげる。
「ま、待て!そいつは何かおかし―――」
次の瞬間。取り巻きたちは全員吹き飛ばされる。
何が起きている?一体どうして―――
美春はくるりとこちらを見る。
「さぁ、第二回戦。始めよっか?」
「ひぃっ!」
凶悪な笑みを浮かべる美春。
いや、本当に美春なのか?コイツは。
とりあえず、俺はこの場から逃げ出した。
そして、冒頭に戻る。
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体育館倉庫に隠れた俺は見つからないよう、生きを潜める。
「どこにいるの〜?返事して〜?」
「っ!」
美春の形をした悪魔が迫ってくる音がする。
普段美春がしないような媚びるような、いたぶるような声。
やっぱり、悪魔が美春を乗っ取ったんだ。
俺は、普段の美春のことを思い出していた。
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最初に目に入ったのは入学式の時。
オドオドしている態度。俯きがちな髪。
それに似合わない綺麗な顔。
その目がこちらを見た時、ドッと心臓が音を立てた気がした。
その目はすぐに逸らされたが、俺の目はまるで縫い付けられたかのように彼女から離れなかった。
それから、美春に見られたい。見てもらいたい一心で、ちょっかいをかけだした。
始めは小突いたり、ぶつかったり。
それが段々エスカレートしていった。
髪を引っ張ったり、殴ったり、蹴ったり。
美春が怯える目をこちらに向けた時。
俺はたまらない気持ちになる。
『ご、ごめんなさい。もう、やめて⋯』
その綺麗な声が俺に向けられるたび、俺は満たされる。
その綺麗な体に痣を作るたび、耐え難い快感を覚える。
もっと、もっとだ。もっともっともっともっともっと!
美春が事故により入院。世界が凍りついたような心地がした。
頼む。無事でいてくれ。そして、もう一度、その綺麗な目をこちらに向けてくれ。
そんな願いが通じたのかは知らないが彼女は戻ってきた。―――記憶喪失になって。
ならば、思い出させればいい。そして、この俺を見ればいいんだ。
竜馬は結構やべぇ奴だと思います。
そんな奴に一目惚れされてしまった美春は普通に可哀想な子です。