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第4話 異世界へレッツゴー!
「私にそんな力なんてないからっ!」
要は、感情がなくなった世界を、小説の力で蘇らせるのが私だ、ということ。聖書とか政府とかは知らないが、取り敢えず、しらない世界を知らない世界で蘇らせなければいけない。
「いや、ある。金賞をとったから」
「ンなの、子供のただの遊びでしょ!大人のプロ作家に任せなよ!」
「プロは、感情が分かりにくい。単純明快な子供の小説こそ、蘇らせやすい。取り敢えず、来てほしい」
文読さんは水色バックの青矢印アイコンをタップして、壁に向けてリモコンのようにした。すると、ぐるぐると渦巻いた大きな穴。黒にいろんな色を混ぜた絵の具みたい。
「いくよ」と私の手を引いて、文読さんはパッと穴に飛び込んだ!私もつられて飛び込み___
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「うわっ…ここ」
灰色のコンクリートは鉛色で重々しい。いや、|人気《ひとけ》がない。町中には楽しげな広告が並んでるはずなのに、ただ文字が並ぶだけの広告ばっかり。
「どうしたんだ」
「いや…ここ、幾らなんでも酷すぎない?感情がないにも程がある」
「煩いな。僕から見れば、君は感情がありすぎる。煩すぎるんだ。取り敢えず、政府に行く」
「政府?」
もう文読さんはわたしのことに興味すらないようで、手を引いて連れて行ってくれた高層ビルに入った。指紋認証らしきものと、パスコードロックと、顔認証でくぐり抜けた先には、灰色の壁が広がっていた。
「こんな時間にありがとう。私は…いえ、こんなに呑気に自己紹介をしている場合じゃない。取り敢えず、現状を話したいの」
色素が薄い茶髪のボブヘアを揺らして、その女性はにっこりと微笑んだ。彼女は流暢かつ饒舌な喋り方で私を出迎えた。文読さんとは馬鹿みたいに違う感情の表しぶりに、私はちょっとだけ戸惑った。
「現状って…」
「私のこと、怪しいと思っているんでしょう?だって、感情があるように見えるから。私は政府の人間よ」
「政府の?」
「この星は高度な文明があるって、書に教えてもらったはず。高度な文明を用いて、私たちの先祖は宇宙旅行に行ってたの。他の星に移住できるかの調査をしていた、俗に言うインテリな一族。感情が失われたのは、旅行に行っていたその途中で、私たちは一切影響を受けなかったの。提案をしたのも私で、今この星で感情があるのは、貴方と私くらいなの」