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#8 電話
『自分で死んじゃったんだ』
いえ…私は…まだ……せめて…彼女……が…
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また読み漁る。
アンドロイドの再起動について。人工知能が自ら強制シャットダウンするなんて、ほぼありえないから。
「ねえなんでよ!なんでそんなっ…ネット?ねぇネット?わたしたち、《《最っ高で最っ愛で世界一の相棒で4年一緒に歩いてきた相棒》》のはずなんでしょう!?わたし、あんまり記憶なんてできないけど、このことだけは覚えてるよ。ねえ!ネット!!」
肩をどれだけ揺さぶっても、頭を撫でても、ピクリともしない。
強制シャットダウンの解除方法、どうだったっけ…
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ネットが強制シャットダウンしてから1週間。あんまり食べ物も食べていないし、そういえば洗濯機も回していない。
生活の中に、ネットは組み込まれていた。もう呆然として、死を迎えるしかないのか。それだけ重大なレベルのことだった。
ピコン、と通知音が鳴り響いた。
スマホを見る。そのあと、ネットが意地でも見させようとしてくれなかったなと思いだす。
『強制シャットダウンした理由、知りたい?』
___何?知りたくないわけない。知りたいよ。
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目眩がして寝た。独りはやっぱり寂しい。
入ってきたメールは、差出人不明とはなっている。
『じっくりお話がしたいです。電話番号を教えてもらえませんか?』
『電話番号ですね』
送られてきた数字を打ち込み、かける。プルルルル、という音はそんなに長くはなかった。
「もしもし」
『もしもし、お電話ありがとうございます』
「名前を名乗ったほうが良いですか?」
『お好きに』
「なら、わたしは…井田彩音と申します」
『イダアヤネ…ああ』
知っているような口ぶりだった。
「わたしの助手アンドロイド、ネットが強制シャットダウンした理由って」
『はい。ネットとは誰なのか、詳しく教えてください』
洗いざらい話した。相槌はうんともすんとも言わなかった。
「…というのが、ネットです」
『つまり、貴方にとってネットは大切なモノだと?』
「はい、大切な人です」
『どんなものに代えても』
「はい」
『…ああ、やっぱり。裏切ったんだ。もう希望がないや』
は、という声が漏れた。
『《《インター》》。この声はフィルターをかけているんだ、だから貴方が知っていたものとは違う』
「…なんで。なんでインターの名を?」
『簡単だよ。私は《《ラネット》》、《《貴方に捨てられたアンドロイド》》』