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キスで私を狂わせて
2回聞いても理解できなかった
「あの…肩代わりしたってどうして?」
「お前が助けを求めたんだろ?」
それはそうだがそう言う意味ではなくてあの男を追い払う為に助けて欲しいと言う意味で…
大体、「助けて」と言われて見ず知らずの人間の借金を肩代わりする人間がいるのだろうか
思った事が顔に出ていたのか先程龍之助と名乗った男は小さくため息をついた
「まぁ何でお前の借金を肩代わりしたかと言うと…」
何だろう、もしかして今のうちに恩を作っておいて後からこき使ってやろうとか…?
--- 「お前の見た目が好みだったから」 ---
「…はい?」
予想外の理由に度肝を抜かれた
いや見ず知らずの人間の借金を肩代わりする理由なんてどんな理由でもぶっ飛んでると思うがこれはかなり衝撃だった
「綾って言ったけ…?お前どうして借金取りになんか追われてんだよ?」
初対面の、しかも自分より何倍も大きな男にこの話をするのは危険だと思う
でも今私を助けてくれた彼に頼るのもいいのかもしれない
そう思って私は事の経緯を話した
話終わった後私は泣いてる事に気づいた
「おいおい、泣くんじゃねーよ。そんなに好きだったのか?そのクズ彼氏の事」
やっぱり翔琉はどんな人からしてもクズだと思われるらしい
でも今は翔琉に振られた事で泣いてるんじゃない
そう意思表示する為私は首を左右にゆっくりと振る
「じゃあ何だよ。やっぱり怖かったか…?さっきの」
「借金取り」とハッキリ名を出さないのは彼なりの気遣いだろう
確かに怖かった、でもそれも今私が泣いてる理由ではない
私はもう一度左右に首を振る
「本当に何なんだよ、これじゃお前の事慰めたくても慰めれねーだろ」
そうため息を吐きながら彼が言う
私が泣いている理由、それはこうやって話を聞いてくれる彼が優しいと思ったから
その優しさで泣いているんだ
そう思っても口に出せない
そんな私を呆れたと言う様な顔で見た彼が私を優しく抱きしめて背中をさすってくれた
更に涙が溢れ出す
こうしてしばらく私は泣いていた
「…すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって」
そう言うまでに何分かかっただろう
「いーよ、別に俺何もしてないし」
何もしていない訳がないだろう
見ず知らずの私の借金を肩代わりし、話を聞いてくれる
充分に迷惑をかけた
「そんな事よりお前、これからどーすんの?家とか、生活とか」
そう聞かれ私の頭は働き出した
ついさっきまで翔琉と住んでいた家、彼と別れた今あそこに住む事は出来ないだろう
生活については翔琉は働いていなかった為、私の給料だけで私たちの生活を支える必要があった
その為翔琉と別れた今、自分1人の生活さえ支えられらばいいので以前より多少は余裕が出来る
それでも新しいアパートやマンションに住むにはお金が足りないだろう
「どうしよう…」
そう言ってまた泣きそうになる私を彼は再度抱きしめてくれる
「困ってんならさ、これから先のお前の未来、俺が保証してやろうか?」
普通ならこの誘いに答えるのも可笑しいし、危ないと思う
それでも私の窮地を救ってくれた彼を信じたいと思って私は彼の腕の中でそっと頷いた