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11.ぷよぷよ
寮の自室で、罪木蜜柑は3DSを握りしめていた。
画面には、カラフルな「ぷよ」が次々と降ってくる。
彼女の目標は、壮大な連鎖を組むこと。
『ぷよぷよ』も、今ではすっかり上達していた。
テトリスのようにぷよを積み上げては、連鎖を発動させる。
「えへへ、全消し…!見せてあげますから…!」
そして、狙い通りにぷよが連鎖していく。
消えるぷよの軽快な音と、キャラクターのボイス…。
しかし、ゲームはいつも順調に進むわけではない。
時折、積み方をミスしてしまい、連鎖が途切れてしまうことがある。
そんな時、罪木はベッドの上で叫んだ。
「せ…SEGAったーっ!!!!!」
『ぷよぷよ』の販売元であるSEGA。
その名前を、失敗の代名詞のように叫ぶ。
それは、普段は決して口にしない、感情を爆発させた罪木の一面だった。
そして、対戦相手に敗北すると、彼女は深い絶望に打ちひしがれる。
「うう…SEGAのせいだ…!」
決してゲームや自分のせいではない。
責任転嫁することで、罪木は悔しさをどうにか消化しようとする。
だが、一度でも勝利を掴むと、彼女の態度は一変する。
「や、やった…!アトラスのおかげですっ!」
『ペルソナ』シリーズの制作会社であるアトラス。
『ぷよぷよ』で勝利したにもかかわらず、感謝の言葉を捧げるのだ。
『ぷよぷよ』というゲームをプレイしているはずなのに、
彼女の感情はいつも『ペルソナ』の制作会社であるアトラスと、
販売元であるSEGAの間で揺れ動く。
罪木は、今日も『ぷよぷよ』をプレイする。
勝利の時はアトラスに感謝を捧げ、敗北の時はSEGAのせいにする。
その姿は、ただの学生だった。