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ボス真宵SS①
⚠️少々過激な発言、思想アリ
⚠️過去作
一応初投稿になりますお手柔らかに…
静かな部屋。
機械とパソコンのタイプ音のみが響く部屋に、真宵はいた。
真宵「…ふぅ。」
記録(ログ)の名を冠すその人は、今日も与えられた仕事を着々とこなしていた。
真宵「っうぅ〜、疲れた…」
朝方から行っていた仕事にやっと区切りをつけ、軽く伸びをしながら呟く。
組織の全てを記録する真宵の仕事量はいつも膨大で、基本業務時間は休みなく仕事をしている彼は、現在時刻がお昼休憩である事を認めて、昼食を取る為に席を立ち上がった。
パソコンをシャットダウンして、顔を上げた時だった。
真宵の目に、1人の人影が映った。
真宵「!!ボス!」
ボス「はは、急にごめんね真宵、お邪魔だったかな?」
いつもと同じ様な笑みをたたえた、真宵にとって最も大事なヒト。
ボスが部屋のある椅子の一つにゆったりと腰をかけていた。
真宵は昼食を食べようとしていたことさえ忘れて、ボスの方へと駆け寄った。
真宵「全然邪魔なんかじゃないです‼︎何なら嬉しいです!」
ボス「それならよかった。仕事は順調かな?」
真宵「はい!ボスの為に今日もしっかり働きました!」
ボス「ふふ…そっか。偉いね、真宵は。」
ボスは真宵の頭を撫でる。
真宵のよく手入れされた髪が僅かに乱れるが、真宵は全く気にした様子もなく、何なら頭を撫でやすい様に少し頭をボスに傾け、喜びを顔いっぱいに浮かべて大人しく撫でられていた。
真宵「えへへ…それで、今日はどんな要件で?」
ボス「ん?あぁ、それは…」
真宵が何気なくボスに問うと、ボスは真宵を撫でる手を止めた。
そしてそっと真宵の頭からその手が離れていく。
真宵「あっ…」
何処か名残惜しそうな、悲しみの表情を浮かべる真宵。
そんな真宵に、ボスは言った。
ボス「…真宵、そろそろ’元’ に戻る事を…少し、考えてるんだ。」
真宵「っえ…?」
真宵の思考が一瞬フリーズする。
‘元’ 、詰まるところ、このifの世界ではなく、自身達の元あるべき場所、自分達がオリジナルであれる場所のこと。
しかし、そこに帰れば異なる世界線である真宵とボスが出会う事はない。
真宵「な、何で、急にッ…」
ボス「…君だよ、真宵。」
真宵「!!!」
ボスは切ない様な笑みをうかべた。
ボス「真宵が私のことを慕ってくれているのはわかっているんだ、でも…いつまでも真宵という優秀な人材を私で縛っているのはいけないだろう?」
ボス「私は真宵の事をよく知っている。今も、過去も。だからこそ真宵をいつまでも縛っておくのは違うと思うんだ、どうかな?」
真宵「っあ…」
心臓の鼓動が早くなっていく真宵に対してのボスの言葉は、恐ろしいほどに穏やか。
その余裕が、真宵を更に動転させる。
幾ら落ち着こうと唾を飲み込んでも喉が乾くだけで何の効果もなかった。
ボスが自分のせいで自分の前からいなくなる?そんな事はあってはならない。
ボスがいない人生なんてもう考えたくもないのだ。
あの時、自身に伸ばしてくれたその手が離れる事は真宵にとっては死ぬも同然の様な事。
嫌だ嫌だ嫌だ、そんな子供じみた感情が真宵の心を埋め尽くし、正常な思考と呼吸が出来なくなっていく。
もはや記録(ログ)としての体裁を全て失った真宵は、ボスに縋り付く。
真宵「や…嫌、ですッ…」
ボス「…真宵?」
真宵「嫌ですッッッ!ボスがいないなんて嫌です、僕何か悪かったですか、だったら直します、足りない所があったならどんな事だってします、いや、いやなんですッ…」
ボス「落ち着くんだ真宵、物事を冷静に考えて。」
真宵「落ち着いてられないです!だって’元’ に帰るって事は僕を…僕を見捨てるって事でしょう?」
悲壮的な顔でボスを見上げる真宵。
ボスは真宵から少し目を逸らす。
ボス「…結果的には、そうなるね。」
真宵「っボ…主様と離れるなんて僕に出来る訳無いじゃないですか!何で…何でそんな意地悪言うんですか主様…」
真宵はボスの呼び方も昔に戻る。
それほどまでに荒れていた。
ぐちゃぐちゃの頭を必死に回してしゃべった。
ボスは一つ息を吐いて諭す様に口を開く。
ボス「真宵、君は些か私に依存し過ぎている。元々私達は交わってはいけないさだめであるにも関わらず交わってしまった。」
真宵「でもッ」
ボス「勿論真宵は私にとって大事な存在だ。ここのオリジナルとも’元’のオリジナルとも比べる程じゃないくらいには。 」
真宵「あるじ、様…」
ボス「だからこそ私は君を離れる。私と真宵…黎が戻ってもこの組織は残りの2人だけでも十分やってはいけるだろうしね」
真宵「…」
このままでは本当にこの人は居なくなってしまう。
なら自分はどうすればいい?何を言えばいい?
それは…
真宵「…ぁ、るじさま。」
沈黙する事幾ばくか、真宵は口を開いた。
その声は喉につっかかった言葉を無理やり出す様な、幼子の様な、そんな声だった。
真宵は床に崩した正座で座り込み…目前の椅子に座っている敬愛すべくヒトに祈りを捧げる様に両手を強く握り、それを見上げた。
誰かがその光景を見れば、真宵は狂信者の様に見えていただろう。
真宵「主様。どんな世界でもたった1人の、僕の主様。」
真宵「大好きです。こんな言葉じゃ足りないくらい大好きなんです。」
真宵「貴方は僕に全てをくれました。それこそ、貴方がいなければ生きていけない位に」
一つ一つ、丁寧に言葉を紡いでいく。
この思いを、願いを、伝えるにはどうすればいいのか。
それはごく単純だった。
真宵「僕は貴方に一生の忠誠を誓った犬です。これまでもこれからもそれは変わりません。」
真宵「もう僕は既に貴方に身も心も全て捧げました。ですから…ですからご慈悲を頂けませんか」
真宵「主様がお嫌ならば無理は言いません。僕は主様に死ねと言われたら死ねる覚悟もありますから。」
真宵「でも…でも見捨てないで下さい。貴方が消えたら僕は…もうッ…」
最後は少し崩れてしまったが、言いたい事は言えた。
自分が今何を言えばいいのか。
それは『忠誠』だ。
忠誠を示し慈悲を頂く。これが自分が今やるべき行動なのだ。
ボス「…ふふ。」
真宵「あるじさま…?」
ボス「わかった、いいよ。私の忠犬の忠義に対し答えない訳にはいかない。」
真宵「っ主様ッ!!!」
真宵は抑えきれずボスに飛びついた。
ボスはそれを優しく受け止め、ひっついて離れない真宵をそっと抱擁する。
ボス「そうだ、そう言えば今日は最上位会議だったね。」
真宵「あっ…そうでした。」
ボス「会議室に行かなきゃいけないんだけど…このままだときついかな?」
真宵「!うぅ…」
明らかに落ち込む真宵。
そんな真宵にクスッと笑うボス。
ボス「冗談だよ。通路じゃなくて裏通路を使おう。そうすればこのままいける。」
真宵「〜っ主様ぁ〜♡」
ボス「はいはい…笑」
そして2人はそのまま裏の通路へと向かっていった。
---
———会議室
御厨黎は、会議室前の扉で固まってい
真宵「あるじさま!もっと!」
ボス「あはは、全く…」
何故なら、目の前に飼い犬の様にボスになでなでをせびる記録(ログ)…真宵がいたからだ。
勿論真宵がボスを異常に崇拝レベルで慕っているのは知っている。
でもこれはどういう事だろうか。
灯「わ、れいれいー!来たんだ!」
愛月「黎ちゃんじゃなぁ〜い!半月ぶり位かしら?おかえり〜♡」
既に着席している同期に目を向け、『あれ』という感じに2人を指差す。
灯「あー、あれ?あれはねー…ボスの悪癖。」
黎「は?」
いけない、思わず本心が出てしまった。と心の中で思う。
愛月「最初はそうなるわよねぇ…」
灯「ボスねー、偶にこうやって真宵の事精神的に揺さぶって『こう』させるの好きなの」
黎「…???」
そう言った感性的には一般人の黎には理解が追いつかなかった。
灯「れいれい真面目に考えなくていいんだよー?そういうものだって思えば」
愛月「真面目な黎ちゃんにはちょっと難しいでしょうねぇ、でも度々これ起きるから、慣れておいた方がいいわよ〜♡」
黎「…これ、初めてじゃないのか」
灯「そうだよー、これまで見なかったのは運良かったんじゃなーい?」
自分は役割柄会議にいつもいる訳ではないので、いつも真宵からまとまった概要のみ貰っていたが、流石にこんなことになっているのは知らなかった。
黎「…本人の前で喋っていいのか?」
途中で思っていたこの疑問。
真宵…は兎も角、ボスには聞こえているだろう。
灯「あーいいのいいの!ボスこれ見せつけたくてやってるし」
更によくわからない単語が出てきた。
愛月「ボスは真宵をあの状態にして最上位の私達に見せつけるまでがセットなのよ〜、あの真宵くん可愛いものね♡」
一体何をしているんだボスは。
灯「ほら見て!ボスいつもよりちょっと愉しそうでしょー!」
灯がそういうのでボスを見ると、いつも通りの穏やかな微笑に紛れてどこか真宵に対するドロドロした感情が垣間見えた。
最も、この機敏に気づく人間は自分(最上位)達位なのだろうが。
ボスの事を疑ってはいない。尊敬はしているし、クソったれた元の世界から救い出してくれた恩も感じている。
でも。
…少しだけ。ほんの少しだけ、真宵の過去の傷に漬け込むようなボスのやり方に怒りを感じた。
灯が精神的に揺さぶると言っていたのは、きっと真宵を見捨てる様な発言なんかをしたのだろう。
真宵は『時雨(雫兄さん)をころしきれなかった後悔を持った柊眞白(桐ヶ谷真宵)』の世界の人間。
対しボスは『全てにおいて最悪の結末を選び続けた白露雫(時雨)』の世界の人間。
真宵(眞白)が雫兄さん(時雨)に縋るのは、当然の結末だったのかもしれない。
真宵の世界の雫兄さん(時雨)は既にいない。そんな絶望の淵に別の世界とは言え死んだ人間が自身を救ってくれたのだ。あぁなるのも理解できる。
俺も…あの時に死んだ雫兄さんが帰ってきた様で嬉しかったから。
だからこそ真宵にとって、ボスとは全てだ。
細部まではわからないが、粗方追い詰めて追い詰めた先に自分の望んだ回答まで誘導した感じだろう。
世界線が違うとは言え一緒に10年以上過ごした兄だ、それくらいは分かる。
だからこそ気に食わない。
真宵は『こちら』の世界ではあんなに仲がいい俺(神楽)だからか、境遇が似ているからかは分からないが、一緒にいて気負いしない友人だ。
大抵の境遇はどちらも知っているので、こちらではしにくい様な話もしやすい。
それくらいは一緒にいるし喋ってきていた。
そもそも、何が嬉しくて兄と友人のドロドロの共依存を見なければいけないのか。
はっきり言って、真宵は精神的に脆い。
偶に小さな子供の様に見えるその背中は、必死に自分の弱さを隠そうと見栄をはっている。
それを意図的に崩そうとするのは真宵の努力に対する冒涜だ。
そんな感情を僅かに滲ませてボスにあてると、ボスはゆっくりとこちらを見た。
その目は全てを悟った様に全てを語り、俺にこう言った。
ボス『口出しするな、幾らお前でも潰すぞ』
と。
俺は強烈なそれに当てられて一歩あとずさる。
殺しに関して以外は、俺は白露雫(ボス)には叶わない。それはどの世界であっても変わらなかった。
ボスというある意味最硬の鳥籠に閉じ込められている真宵は、そんな事には気づかず満面の笑みでボスの膝下に座っている。
…救えない。
俺はいつも通り、部屋の隅の壁に寄りかかる。
それを認めたボスは、いつものセリフを口にする
ボス「それじゃあ…最上位会議を始めようか。」
尚、真宵がまともに話し合いに参加出来なかったために話し合いの進みが悪かったのは言うまでもない。
人物名は誰がしゃべってるのかわからなかったので後付け