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探偵事務所と仲間たち
「キミの持ってるテディベア、ちょうだいナ?」
歩いていると小学生? と思わしき子どもがいきなり現れた。
「突然どうしたの? なぜ僕が持ってるって知っているんだい?」
「教えなイ。早くちょうだいナ」
だんだんこちらへと近づいて来ている。嫌な予感がするような。
「無理だよ。ごめんなさい!」
怖くなって走り出した。ある程度走って後ろを振り向くと誰もいなかった。なんだったんだろう。あの子、よく見たら足元に影が無かった。日差しの強い中、影が無いのはただの錯覚か? 昨夜よく眠れなかったからなのかもしれない。
4階建ての雑居ビル。2階と3階が探偵事務所になっている。所長さんは僕の父さんと同級生なのだそうだ。一緒に探偵の仕事をしていた時期があったらしい。今では父さんはたまに手伝いをしている程度なのでこうして僕にファイルを持っていくように言ってくる。自分で行けばいいじゃないか、と思うけどあえて言わないでおく。
ノックするも反応無し。鍵は開いているし、勝手にお邪魔しようかな。
「おはようございます……っているじゃないですか」
「よく来たね。|咲耶《さくや》君」
所長さんがソファーに腰かけていた。居たなら返事をして欲しい。
「いらっしゃ~い、白波くん今日も元気そうだね~」
と|彩歌《いろか》さん。今日も楽しそうだ。
「よぉ、さっくん。所長に彩歌さんも、おはようございます」
「ぐっもーにーん、今日は勢揃いだねー? 今日は何かあったっけ?」
僕の後から|遥太《ようた》くんと|楽間《らくま》さんがやってきた。
「今日は父からファイルを返しに来たのとと僕個人で相談があって来たんです」
「珍しいね相談なんて、君の隣にいるテディベアのことかな?」
「そうなんです……実は……ってなぜ知っているんですか?……ってあれ?」
所長さんが指を指した方向へ、バッグの方へ視線を移すと、テディベアと目があった。隣に座っている。いつの間に取り出したのだっけ? 手を振っている……じゃなくて、
「はぁ?」
ビックリしすぎて間の抜けたような声しか出なかった。例のテディベアが動き出していたのだ。
「おはようさん。サクヤ。コトンだよ。ところでここはどこだい?」
ついには喋りだしてしまった。なぜ僕の名前を知っている。
「な……はい?ここは僕の入り浸っている探偵事務所だけど?」
「一回、落ち着いたらどうかな?」
こんな時でも所長さんは冷静さを保っている。見習った方がいいのだろうか。
「お茶を持って来たのだけど、そんなに騒いで何かあったの?……ってあらぁ?」
「お茶菓子に駅前でカステラをって、みんなどうしたのー?」
彩歌さんと楽間さんがやって来た。まぁ、普通ならそんな反応になってしまうよな。
「かわいいクマちゃんね!」
着眼点そこ?
「面白そうなクマちゃんじゃないか。どうしたんだよこのクマちゃん」
「クマちゃんじゃないよ? コトンだよ。コトンはラルのお友達。ラルに頼まれて来たんだ」
「喋れるんだね~腹話術?」
「僕にそんな芸当はできません」
「んじゃ何、この子、勝手に喋って動くの? 魔法みたいだ」
「そうみたいですね」
だんだんとこんがらがってきた。
「さっきから騒がしいがどうしたんだよ?……何それ、さっくんのぬいぐるみ?」
遥太くんもご登場。
「一旦状況を整理しようか、詳しい話を聞けていないし」
確かに一回状況を整理した方が良さそうだ。