公開中
なまぬるいじごく
少し前に書いたお話を投げる。
彼女の地獄は、ほんの少しの気持ち悪さと温度と、そして小さな自業自得で出来ていました。
ですが彼女の地獄は生ぬるく、誰かに同情されるほどのものではありません。
だから平然とした顔で、周りは彼女を下に見ます。
そんな幻影を見ます。信頼とは関係ない幻影を見ます。
「自分のほうが苦しんでいる」と。
彼女が小さな不幸で苦しむたびに、彼女の周りは声高に叫び続けます。
不幸の押し付けで原型がなくなる彼女の地獄に、彼女はいつまでいればいいのでしょう。
永遠に続く地獄の中。誰でもない私のためだけに生きる私。
今日も目覚まし時計がなって、昨日の願いが無に帰ります。
薬はただの点鼻薬です。
カッターではなくただのペンです。
鬱も躁も、きっと何も正しくないです。
ひけらかされた灼熱と薬と、病気と不自由と。
嫌になりました。
私が必死に死のうとしたことすら馬鹿みたいで、心から嫌になりました。
ちっぽけなことでした。
だって小さな世界だったのです。
彼女より不幸な人がたくさんいる世界で、彼女だけが幸運でした。
彼女だけが幸福でした。
だから貴方だけが不幸だったのでしょう。
「私から見た貴方はここまでです」
もう熱のないエンディング。
「私が知っているのは、彼女が願いとともに消去法で空を飛んだことくらい」
慟哭が地獄を冷やして、だから彼女が死んだ。
「貴方にとっては、指先の熱が死んだだけでしょう?」
虚無を抱いたのは貴方なのに、どうして今更「こんなこと」を聞くのですか?