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『底辺からの叛逆〜転生した世界で「呪術」を極め、神殺しの王座へ登り詰める』 第6話 『黒炎呪縛(カース・バースト)』と不浄の解放
地下スラム『グラウンド・ゼロ』の最深部。そこには、不法に捕らえられた亜人や、神殿から「罪人」の烙印を押された人々が家畜のように売り捌かれる巨大な奴隷市場があった。
鉄格子の檻がいくつも並び、すすり泣きと、悪徳商人たちの下卑た笑い声が響いている。
「おい、次の精霊族のガキを連れてこい。光の貴族様が高値で買ってくださるぞ」
市場を仕切る巨漢の奴隷商人ガイルが、葉巻をふかしながら部下たちに命令を下していた。
その時、奴隷市場の分厚い鉄扉が、凄まじい衝撃音と共に内側へひしゃげた。
バギィィィン!!
「な、何事だ!?」
立ち込める煙の向こうから歩み出てきたのは、ボロ布を巻いた漆黒の剣を持つ少年レイスと、フードを深く被った天翼族の少女イルミ。そして、二人の後ろには、死んだ魚のような目で武器を構えるスラムの男たち――レイスが操る『生ける屍(ドール)』の軍勢だった。
「誰だ貴様らは! ここをどこだと心得ている!」
ガイルの怒声に応じ、市場を守るお抱えの重装傭兵たち数十人が一斉に抜刀する。
「ただの押し込み強盗さ。ただし、お前たちの命と、ここにいる奴隷(すべて)を貰い受ける」
レイスの冷徹な声が響く。
「生意気なガキめ、叩き潰せ!」
重装傭兵たちが地響きを立てて突撃してくる。彼らは神殿から横流しされた、光の加護を持つ強力な盾と鎧を身にまとっていた。並の魔法や物理攻撃は一切通じない、鉄壁の陣形だ。
「イルミ、あの光の盾ごと焼き尽くすぞ。お前の炎を俺の剣に貸せ」
「ええ、レイス。私たちの怒りを、あいつらに刻み込んであげる」
イルミが両手を突き出すと、彼女の背中から吹き出した【背徳の黒炎】が、レイスの漆黒の呪剣へと吸い込まれるように巻き付いた。
漆黒の刀身に、ドス黒い炎が爆発的な勢いで燃え盛る。
レイスは脳内のアーカイブから、属性統合の術式を紡ぎ出す。
【呪術・黒炎合一――怨嗟の黒炎波(カース・バースト・レイ)】
レイスが呪剣を大きく一閃した。
放たれたのは、ただの炎ではない。イルミの「すべてを焼き尽くす黒炎」に、レイスの「因果を腐らせる呪力」が交じり合った、禍々しい暗黒の波動だ。
「なぁっ!? なんだこの不吉な炎は――うぎゃあああああああ!?」
最前列の傭兵が掲げた『光の盾』が、黒炎の波に触れた瞬間、ガラスのように呆気なく粉々に砕け散った。
炎は防具の隙間から容赦なく侵入し、肉体だけでなく、彼らの魂そのものを内側から焼き焦がしていく。
「ヒッ、化け物……化け物だ!」
一撃で半数以上の傭兵が炭化し、崩れ落ちる光景を見て、ガイルは葉巻を落として腰を抜かした。
生き残った傭兵たちも恐怖で武器を落とし、逃げ惑う。
レイスは、恐怖に震える奴隷商人ガイルの前に静かに歩み寄ると、呪いによって完全に生気を失った男の喉元に呪剣を突きつけた。
「ひ、引き上げる……奴隷は全部やる! だから命だけは……!」
「お前が今まで奪ってきた奴らの命に、同じことを言ったか?」
ザシュッ。
冷徹な一振りが、ガイルの首を撥ね飛ばした。
ガイルの死体、そして死んだ傭兵たちの肉体から、最大級のドス黒い呪力が立ち上り、レイスの身体へと吸収されていく。
レイスは呪剣を鞘に戻し、並ぶ檻の鉄格子を次々と斬り裂いていった。
檻から出てきた亜人や異端者たちは、あまりの光栄に言葉を失い、呆然とレイスを見上げている。
レイスは彼らに向けて、傲然と言い放った。
「俺は神ではない。お前たちを無償で救うつもりはない。だが、この最底辺から這い上がり、お前たちを虐げたあの光の神どもに復讐したい者がいるなら――俺の軍勢に加われ。衣食住と、奴らを蹂躙する『力』を保障してやる」
奴隷たちの目に、かつてない激しい光が灯った。
彼らは一斉にレイスの前に跪き、地を這うような忠誠の誓いを立てる。
「レイス、これで大きな一歩ね」
イルミが満足げに微笑む。
「ああ。この地下をすべて喰らい尽くし、地上へ打って出るぞ」
スラムの闇を統べる王としての片鱗を見せ始めたレイス。
彼らの叛逆の炎は、地下で着実に、そして巨大に燃え広がっていく。
(つづく)