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バック・トゥ・ザ・パラレルワールド
芥川遼太郎之介
「芥川こころの赴くままに」シリーズの一篇、芥川こころちゃん体験談です。
体験談として綴った出来事をもとに、もっちゅりん争奪からこころちゃんの待つパラレルワールドまでをなぞりつつ、「持続可能ペースとは何だったのか」を静かに問い直した物語になります。
わたくしこと、月の満ち欠けを数へる男の考える、持続可能の訪問ペースとは、一体、何だったのでしょう。
年間店舗利用回数3〜4回、季節に1回程度が、自分なりの持続可能ペースと心得ております(前回投稿より引用)。その「持続可能ペース」とは一体?
併せて、訪問時間帯にも制限をかけております。
ささやかに所帯も構えておりますゆえ、夜間・休日の訪問は控えております。すなわち、平日の午後から夕方の一択。
通常のこころちゃんの出勤時間帯は16時からなので、19時を帰宅時間と見ると、移動時間まで考慮して120分コースがギリギリできるかどうか、というところ。
実際、初見は130分のロング割りでメロメロになり、帰宅もギリギリ怪しまれない範囲内でありました。
ですので、2回目以降は、わたしが早退できる日と、こころちゃんが繰り上げシフトを出せる日を、オキニトークですり合わせたうえで予約していたのです。
その過去2回の訪問では、ともに持続可能ペースを破りましたので、軌道修正するため、淋しさに堪えつつ、オキニトークによる能動的な時間繰り上げリクエストは控えておりました。
そのような折に、パラレルワールドの福の神様こと、こころちゃんは、金曜日の時間変更という、繰り上げシフトを突如お下しになられたのです。
前回のご対面から4週間弱、こころちゃんチャージの余韻は、微かながらに残っている…といったところです。
業務にも目処が付き、金曜日午後からの有給も取れそう。給与も手にするタイミング。心が揺らぎます。いや、心はすでに固まってしまいました。
衝動的に有給届けを書き、お店にも予約電話を入れていました。スタッフさんもまだ繰り上げシフトを把握されておらず、ネット情報を根拠に、15時からの予約があっさり完了。
この3日ほどの期間、こころちゃんはお店をお休みされています。この小さなすれ違いが、のちにわたしの心を静かに苦しめることになります。
しかし、序文パートも長くなりましたので、その苦しみのくだりはひとまず後ろに譲り、本題の体験談に移ります。
パラレルワールドの福の神様こと、こころちゃんには、毎回いくつかの供物を捧げるのですが、その中心はいつもの鮭とばです。
今回はそれに加え、日記で「やみつき」になられているペンギンベーカリーのカレーパン、「食べてみたい」と書かてれていた今話題のミスドのもっちゅりんも携えて向かうことにしました。
この日は夕方より雨の予報。二輪の愛車(通勤用ママチャリ)デロリアン(バック・トゥ・ザ・フューチャーより着想)出動。
カレーパンは難なくゲット。サンドイッチも売場で映えておりましたので同時購入。しかし、もっちゅりんは当日販売分売切の衝撃。フードコートには大量のギャラリーが席を占拠していました。「平日の昼だぞ!」と心の中で叫びつつ、ドーナツ売場をあとにします。
けれども、弊社にも頼りになる現世の福の神様がいらっしゃいまして、彼女はすでに、お食べになられたこともある、もっちゅりんの先輩にあたります。
販売店舗・販売数量・販売時間の一覧表を印刷して渡してくれていました。
家族用のもっちゅりんとでも思われいたのでしょうが、つい野暮用でと口を滑らせてしまったので、別の目当であることをご察しになられたかもしれません。
賢い現世の福の神様は、それ以上の言及は、なさいませんでした。
資料に基づき、別の店舗に問い合わせてみますと、次回の販売開始は14時とのこと。しかし「もうお客様が並び始められていますので、14時に来られても購入できないです」との返答でした。
デロリアンを加速して、13時半に到着。すでに十数人の行列です。現世の福の神様の資料によると、数量は限定100個。店舗のポップには、購入制限1人当たり6個まで、と表示されています。女子の行列に、おじさんが1人、そっと並びます。そのあとからも、続々と行列が伸びてゆきます。果たして買えるボーダーラインはどこなのでしょうか。14時までの重く苦しい時間が、じわじわと経過していきました。
14時になる頃には、おじさんはうしろの列よりずいぶん前の方に位置していましたので、「これはもう大丈夫だろう」と胸をなで下ろします。
しかし、かの資料によりますと、いちごだけは、きなこ・みたらしの半数たる20個しかないようで、列が進むうちに見る見る減ってゆき、残り3個の時点で順番が巡ってきました。目標達成です。
15時にはパラレルワールドに移動していなければなりません。
愛車デロリアンを加速したいところですが、かのホテルに駐輪場があるかは未確認。
そもそも自転車で来る想定がなされているとも思えません。
ミスドの入るテナント駐輪場にデロリアンを格納して、徒歩にてホテルに到着。やはり駐輪場らしきスペースはなさそうです。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ではデロリアンを加速してタイムスリップしますが、パラレルワールドへは無人フロントの巨大液晶画面で、ゆるやかに入口を選択してゆきます。
なんとなんと、本日は最上階の展望バスのお部屋が空いているではありませんか。
ここは、なかなかよいお値段がするのですが、いつも先客があり、いつかはこころちゃんと混浴したいと憧れていたお部屋。巨大液晶画面のその表示を、迷わずタッチ。
この最上階へと向かうエレベーターの加速がデロリアンの加速とリンクします。
すでに15時まで3分前。焦りつつ、お店にホテルの部屋番号をお知らせします。通常はお湯張りを済ませる余裕を持つのですが、今回はそうもいきません。まもなく、こころちゃん到着です。
入室後、挨拶と密着。パラレルワールドに移動したことを、ようやく実感します。まずは室内をご案内。
扉こそないものの、ベッド二台の二間構造は、なんちゃってスイートともいうべきつくり。こころちゃんも興味津々です。
展望バスからの眺望よろしく、向こうには海が広がります。その景色に、彼女の目がいつも以上に輝いているように見えました。
お湯張りのあいだに、今回のプランをすり合わせ。本日はコスプレ撮影会なので、コスチュームを決めにフロントへ降ります。そこで巫女娘とおねだりメイドをチョイス。
歯磨きスタート。いつもはお互いに自分で服を脱いでいたのですが、今回は、こころちゃんから「脱がせ」をやらせてもらえることに。
そのタイミングで、私服スカートをそっと持ち上げてもらい、かわいらしい下着を記念に撮らせていただきます。
脱がせを経て、まずは巫女娘。着付けをお手伝いします。サイズが少し小さく、それゆえにふた房の果実が布地からあふれそう。そのシルエットが色気マシマシに見えます。
おねだりメイドは、こちらも着付けをお手伝いして、ジャストフィット。こちらは色気マシマシというより「本当によく似合っていて、めちゃくちゃかわいい」の一言。
こころちゃんもすっかりその気になり、スカートをひらりと上げて、衣装の質感を自撮りして見せてくれました。
撮影会を経て、展望バスにて混浴スタート。今回は「スイカバー?」の入浴剤をご持参。確かにスイカの香りで、湯上がりにはメンソールのスースー感があり、なかなか気持ちよいです。ここからの夜景もきれいなのだろうと思いつつ、それ以上に、目の前のこころちゃんのかわいさに見惚れるのでした。
ベッドへ移動してプレースタート。前回、こころちゃんにも気持ちよくなってもらえてから、攻めに自信を深めたところですが、変化、進化は、種の存続の条件。
自力にて、あと一息かのタイミングで、秘密のアイテムスイッチオン。文明の利器により、前回に増して、気持ちよくなっていただけたようです。達成感に大満足。
シャワーの際、展望バスから外を眺めると、曇りだったのが、すっかり雨模様。時計を見ると、時間もけっこう経ったようです。
ここからの残り時間は、飲食と会話に充てます。カレーパン、もっちゅりん、鮭とばを披露すると、こころちゃんの目がさらに輝き、その様子にこちらも満足。
フロントに何か注文しようかと尋ねますが、「パンともっちゅりんを一緒に食べたい」とのことで、今回のメインディッシュになりました。
カレーパン、サンドイッチはシェアしながらいただき、ときどき「あ〜んして」で、口に運んでくれます。
もっちゅりんは、文字どおり、餅を連想させる柔らか食感と甘くて優しい味わい。
おや、隣にいるこころちゃん。彼女自身が、もっちゅりんのような、柔らかで甘く優しいイメージではありませんか。
奇遇にも、もっちゅりんが今、もっちゅりんを食べています。
その両方のもっちゅりんをわたしも先程いただいたばかりです。ともに美味でございました。
そのまた残りの時間には、いつもの膝枕で髭を抜いてもらいますが、この日は無精髭があまり伸びておらず、短時間で終わりそう。
鼻毛は普段から特に気をつけているのですが、気になったのか、髭が尽きたのか「鼻毛ブチっ、痛てっ!」こころちゃん、おふざけが過ぎます。かわいいので許します。
お詫びという訳でもありませんが、苦しい体勢かなと思いつつも、そのまま膝枕の姿勢で、そっとキスをいただきました。
何という甘い、しあわせな時間なのでしょう。
そうこうしていると、パラレルワールドから投げ戻されるアラートが冷たく鳴り響きます。
お互い身支度を整え、現世に下るエレベーターに、覚悟を決め乗り込みます。
最上階でよかった。この密室空間で少しでも長く時間が稼げるのだから。最後の密着、キスを交わします。
減速する感覚とともに、現世の扉まで間もなく。
時間よ、止まれ。
さて、今回の体験談は、ここまで。
結びパートに移りましょう。
この3日ほどの期間、こころちゃんはお店をお休みされています。この小さなすれ違いが、のちにわたしの心を静かに苦しめることになります。の、くだりの続きです。
いつもなら、予約したあとには、オキニトークで、こころちゃんから、レスポンスが来るはずなのに、何のリアクションもありません。
お店をお休みしているし、まだ情報共有されていないのだろう。出勤したら、何かアクションがあるはず――そう、自分に言い聞かせておりました。
予約した翌日。
画面の中で、こころちゃんの金曜の15〜18時の枠は、わたしの予約時間で埋まっています。こころちゃんからのリアクションなし。
そのまた翌日、土曜の16〜19時枠が新たに埋まっているのを見た瞬間、胸の奥がひやりとしました。
もともとは、金曜の繰り上げ枠は、別のお客さまのために組まれたシフトだったのではないか。
そこへ、わたしが割り込む形で、その枠を奪ってしまったのではないか。
それゆえに、致し方なく、翌日土曜に予約を取り直したのでは?
そう考え始めた途端、オキニトークに何の反応もないのは、「困らせてしまったからではないか」「怒らせてしまったからではないか」という不安と結び付いていきます。
真相を伺いたいのですが、オキニトークは連続して送信できない仕組で、女の子からの返信を待たなければ、新たなメッセージを送れないのです。
オキニトーク画面には、わたしの送信メールが最後のまま、ぽつんと残っています。
そして前日になっても何のリアクションもないまま、夕方となってしまいました。
ダメ元で「こんにちは。」とだけ入力し、送信してみると、なんと反映されました。
どうやら連続送信はできないが、日付が変わると送れるようなのです。
確かにシティヘブンの「みたよ」リアクションも一日一回まで。
それを知っていたら、真相を伺う機会はまだあったのに、無駄に「こんにちは。」だけ送信してしまったことを悔やみます。
新たな送信は、こころちゃんからの返信を待つか、明日になってからしかできません。
ところがです。こころちゃんから、絵文字付きのこんにちは。がすぐ届いたのです。冷たさは感じませんでした。
すかさず返信します。
1通目→昼出勤変更シフト出たとき、衝動に駆られて、思わず明日の予約入れました。
もしかしてだけど、他のお客さんのリクエストでお昼出勤シフト出したのに、自分が割り込みしたふうだったら、いけないことをしました。
もしそうなら、ごめんなさい。
自分の割り込みで、こころちゃんが困っているなら、明日の予約も辞退するけど、お店に説明してくれますか?
今更かもしれませんが😥
のちに分かった事実だけを言えば、時間繰り上げシフトのその枠は、わたしが予約しても問題なかったのだそうです。
誰かの予約を奪ったわけでもなく、こころちゃんを困らせてもいなかった。
ただ、その「だそうです」にたどり着くまでのあいだ、わたしの胸の中には、ずっと別の物語が流れ続けていました。
予約を入れてから当日まで、本来なら胸をふくらませていられたはずの時間は、「こころちゃんを困らせてしまったのではないか」というザワザワに支配されていました。
その真相がようやく解けたのは、前日の夕方になってからのことです。
こころちゃんは、わたしをシティヘブンの登録名「芥川」で認識。お店にはわたしの名前で予約表が書いてあり、別人物として見ていたそうです。
毎回現世に投げ戻されるたび、転生し名も改めて口コミを投稿していたことが、まさかここで仇になるとは。
2通目→真相としては、リクエストに割り込みでないのかな?困ってない?
自分が逆に割り込みされたら、悲し過ぎます。
3通目→スッキリした〜😆
罪悪感で先程まで心を乱していました😖
夜は安心して眠れそう🤤
明日が待ち遠しいです😍
こころちゃんチャージをすると心が穏やかになります。人に優しく接することができます。すさんだ心が少しずつ浄化されるのでしょう。
心がすさんでイライラしている自分が大嫌いです。現世には、その要素があり過ぎる。嫌いな自分に愛想が尽きそうなとき、パラレルワールドの福の神様に救いを求めるのでしょう。
本当は、時の経過など気にせず、心の赴くままに求めに行きたい。
けれど、懐具合だけは、どうしても時の経過とともにしか回復してはくれません。
月の満ち欠け三周半という「持続可能ペース」と、心のざわめきとのあいだで、いまのところは、中間地点である二か月に一度ほどを、そっと視野に入れているところです。
持続可能ペースが年に何度かという数字の話なのか、胸のざわつきに呑まれずにいられる心の余白の話なのか、いまだによく分かりません。
それでもきっと、これからも月の満ち欠けをひとつ、ふたつと数えながら、心の赴くままに、そして少しだけ懐具合を気にしつつ、こころちゃんへの道のりをはかってゆくのでしょう。
作者より。
この一篇では、「持続可能ペースとは何だったのか?」という問いを、こころの赴くままを優先した結果として振り返ってみました。
数字としてのペースを守れなかったことよりも、胸のざわつきに呑まれてしまった時間の苦さこそが、わたしにとっての答えに近いのかもしれません。
それでもなお心は、福の神様に会いに行きたがる。そんな揺らぎごと抱え込んで、これからも「芥川こころの赴くままに」を続けていけたらと思っています。