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【第一話】~何も変わらない一日~
朝、人々が目を覚ます。
何も変わらない普通の一日。
小さな足音と共にドアが開いた。
「おはようございます。」
そう言って部屋に入ってきたのはノア・グレイヴだった。
表情は穏やかですらあるのに、なぜか安心できない人間だった。
島の狂気に慣れきった者特有の静けさが彼にはあった。
「急ぎのためノックは省かせていただきました。」
彼はそう言いながら部屋の持ち主であるイル・レイヴァルの背後に足を寄せた。
「資料は」
ノアはそれを聞くと即座に応じた。
「こちらです。」
差し出された資料を、イルは振り返らずに受け取った。
今日は何かが違うように感じた。
だがその足音だけは、いつも通りだった。
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また朝が来た。
気のせいだろか…
帰れる場所が、少しだけ遠くなった気がした。
だが問題はない。
必要な距離は、すでに測ってあるから…
狂気は、計測され尽くした日常の隙間に
そっと息を潜めていた。