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箱入り姫と6人の騎士 ⑨
赤都 乃愛羽
終わらない逃走〜
嵐の夜だった。
5人がリビングで、これからの「ちぐの管理計画」について話し合っている隙を突き、彼女は裸足のまま裏口から飛び出した。
「はぁ、はぁ……っ! 嫌……もう、あそこには戻りたくない……!」
冷たい雨が、国宝級と謳われる美しい顔を叩く。濡れたパジャマが肌に張り付き、体温を奪っていく。
でも、今の彼女にとって、凍えるような雨風よりも、5人の執拗なまでの「愛」という名の監視の方が、よほど恐ろしかった。
(ドクンッ……! ドクンッ……!!)
走り始めて数分。胸の奥で、心臓が警鐘を鳴らすように激しくのたうち回った。
「……っ、るぅとくん……ダメだよ、邪魔しないで……!」
心臓が痛い。まるで内側から「行かないで」「僕を一人にしないで」と、るぅとの声が直接脳内に響いてくるようだ。
恋愛音痴だった彼女が、初めて自分の意志で選んだのは、誰かを愛することではなく、「彼らから消えること」だった。
「……ちぐ! どこだ、ちぐ!!」
遠くから、ななもり。の焦燥に満ちた叫び声が聞こえる。
ライトの光が、暗い森を切り裂く。さとみやころんたちの足音が、刻一刻と近づいてくる。
「見つけた……!」
背後から伸びてきた力強い腕が、ちぐの細い腰を強引に引き寄せた。ジェルだ。
「離して! お願い、放っておいてよ!!」
「ダメだ。お前が死んだら、あいつの心臓も止まるんだぞ。そんなこと、俺たちがさせるわけないだろ!」
ジェルに組み伏せられ、泥まみれになりながらも抵抗するちぐ。そこへ、他のメンバーも次々と到着した。
「……ちぐ、ひどいよ。俺たち、こんなに君を想ってるのに」
莉犬が、雨に濡れて透き通るような冷たい瞳で、ちぐを見下ろす。
「もう二度と、外には出さない。……分かった?」
ななもり。の声は、優しさを完全に失い、絶対的な支配者の響きを帯びていた。
その瞬間、ちぐの胸の鼓動が、ピタリと穏やかになった。
まるで、連れ戻されることが決まったことに、るぅとの心臓が「安心」したかのように。
「……あ、……ぁ……」
絶望のあまり、ちぐの意識が遠のいていく。
気を失うちぐを抱き上げた5人は、二度と彼女が逃げられないよう、シェアハウスの最上階にある「窓のない部屋」へと彼女を運んでいった。