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本編22
「は?司センパイと遊びに行く?」
耳を疑った
なんで急に?遊ぶ?どういうことだ…
「センパイと遊びに行くって…今絶対そんな状況じゃねぇのに…」
「いや、遊びに行くというか…ちょっとでも息抜きになればいいと思ってな」
「…なるほどな」
「んでお前はなんでここにいんだよ」
冬弥の隣にいるピンク髪サイドテールのこいつは、なんだかすごくニコニコしている
こういう時の暁山に会うと、ろくなことがない
「ふっふっふ〜…ボクも司先輩の力になりたくてさ、いろいろ考えてたんだよね」
「それで、みんなで駅前に行こうってか?」
「んな知り合いしかいなさそうな所に行って大丈夫なのかよ?」
「それは俺も思ったんだが…」
「平日の昼間に!学校サボって行こうってわけ!」
「いやいやサボりって…できるわけねーだろ」
「えーー、じゃあ深夜…はお店開いてないよね…」
「やっぱりサボって平日昼間に行くしかないよ!ね!一生のお願い!」
なんで暁山がそんな必死なんだよ…
…まあ、俺もセンパイの様子知りたいし…あーでもな…無理に連れ回すわけには…
「司先輩からの了承は得ている。俺からも頼む、彰人」
「冬弥……」
「…ったく……仕方ねえな…」
「…!!やったー!ありがとう弟くん!」
「ありがとうな彰人…!」
「ちょ、声でけーって…」
「あ…………」
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「はーっはっはっはー!オレのかっこいいポーズを見よ!」
「ちょ、声でかいですって!」
「ったく…いろんな人に見られてるじゃないすか…」
「みんなオレのかっこよさに見惚れているんだろう!」
「はあ………」
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懐かしい
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう
また、もう一度、司センパイの元気な声を聞きたい
「ん?弟くん?なんかぼーっとしてるけど…大丈夫?」
「あ?あー…大丈夫だ…」
「そうか、あまり無理はするなよ」
「ああ…じゃあまた来週な」
「はーい!またね!」
…センパイ、前より悪化してないといいけど
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「えっと…帽子と薬…ハンカチ…財布…」
久しぶりに外出するからな…万が一知り合いがいたら嫌だし、帽子だけは忘れないように…
…………
「なんだか…オレのためにここまで時間を作ってくれて…」
「…申し訳ないな」
誘われたから行くだけ…って感じだが、
それでもやっぱり暗いことを考えてしまう
こんなのいつものオレじゃな……
「……………」
「いや、これがいつも通りのオレか」
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両親は今日、用事でいない
帰ってくるのも遅いみたいだし、これならバレずに出かけられそうだ
「…すみません父さん、母さん」
「行ってきます」
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「は?あんた今日学校行かないの?」
「バカッ、母さんに聞こえるだろ!」
「あ、ご、ごめん…というかなんで急に?」
「…前うちに来たセンパイのことで…」
「え、つか…天馬くん?またなんかあったの?」
「あーー…まあいろいろあんだよ」
「…もしかしてさ、今日行くところって駅前の雑貨屋さんだったりする?」
「え、ああ…それがなんだよ」
「前に瑞希のこと誘ったけど先約あるからって断られたの!!」
「だからさ、お土産として何か買ってきてよ!可愛いやつ!」
「は?自分で行けばいいだろ」
「じゃあよろしくね〜いってらっしゃーい」
「ちょ…はあ……仕方ねーな…」
「…行ってきまーす」
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「えっと…あれ、ボクが一番乗りじゃん!」
てっきり弟くんが最初に着いてるのかと思ってたけど…
「これは絵名につかまってるな〜♪」
「…暁山?」
聞き覚えのある声…
振り向くと見覚えのある顔が目に入った。
「へっ?うわああっ!!つ、司先輩!?」
「驚きすぎだろう…その、おはよう」
「お、おはよ!全然気づかなかった…」
黒い帽子に白のパーカー
目元にはクマができていて、顔色はとてもいいとは言えない
以前より痩せた気もする
「…弟くんと冬弥くん遅いね〜」
「オレらが早すぎるだけではないか…?」
「あははっ、ボクずっと楽しみにしてたからね〜!」
「バイト代入ったばっかだし、今日はいっぱい買い物するぞ〜!」
「…はは、いつも通りの暁山で安心したぞ」
……やっぱ無理してる…よね
もしかしたら同級生がいたりするかも…
うーん…ちょっと強引だったかな…
「…暁山」
「オレは別に、迷惑だとか、嫌だとか思っていない」
「…え?」
「なんなら…オレのために時間を作ってくれてありがとうな」
「誘ってくれて嬉しかったぞ」
「…!」
司先輩には全部お見通しなんだな…
ボクの考えてること、表情だけで分かっちゃうなんて
「お、もう着いてたのか」
「彰人、冬弥…久しぶり、だな…」
「…おはようございます」
「はざっす、んじゃ行きましょうか」
…なんか冬弥くん、何とも言えないような顔して……
「ほら、早く行くぞ暁山」
「楽しみにしていたんだろう?」
「あ…」
「………よーしっ!今日はいっぱい楽しもうね!」
とにかく今日は、先輩のことを少しでも笑顔にできるように…!
いっぱい楽しんで、いっぱい頑張ろう!