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黄泉へと続く道
超短編。
ホラーで珍しい、主人公助かり系。
『|きぃまりをやぶったわぁるいこ《決まりを破った悪い子》』
『|よぉみにおちて《黄泉に堕ちて》』
『|しぬうんめぇい《死ぬ運命》』
『|おぉにとなぁりはて《鬼と成り果て》』
『|じゅぅかつぅむぐぅ《呪歌紡ぐ》』
『|おぉにがこのよぉをしはいするぅ《鬼がこの世を支配する》』
『|あのよにぃおちるはいぃきたひと《あの世に落ちるは生きたひと》』
何処からともなく、禍歌が聞こえてくる。そんな暗い隧道に、二人は居た。
「ねぇ。本当にこの道で合ってるの?」
真っ青になりながら、莉花は莉子に聞いた。
「合ってるわ。|伊賦夜坂《いふやざか》の先に、黄泉に通ずる扉があるの。その向こうに行けば、お母さんに会えるわ」
莉花とは対照的に、暗闇を楽しんでいる莉子は答える。
「ほら、ここよ」
やがて彼女達は、道の最奥に辿り着いた。そこは壁になっていて、先には行けない。
「黄泉に通づるこの扉
我らの願い
叶える為に
今開かんと
歌紡ぐ
黄泉に通づるこの扉
扉にかかった
封印を
今解かんとし
歌紡ぐ」
莉子は、その壁の前で不思議な歌を歌った。
背筋がぞくっとする、不思議な歌を。
その歌に呼応するように、壁が輝き始める。
一際強い光を放ったのを最後に、壁は元に戻った。
しかし、その壁の前には黒い|紗《ヴェール》を被った女性がいた。
『黄泉へ、行きたいの?』
思ったよりも柔らかく、若い声だ。
「えぇ。そうよ」
莉子ははっきりとした声で答える。
『なら、このお菓子を食べて。食べれば、黄泉に行けるわ』
「これは・・・?」
莉子が不思議そうに手を伸ばすと、横から手が伸びてきて、お菓子を手から叩き落とした。
「え?」
突然の介入に驚くと、伸ばされた手の持ち主は、いなかった。
「誰・・・なの?」
驚いて言葉を失う莉子。
そこで、莉花はある言い伝えを思い出した。
「お姉ちゃん、逃げよう!」
そのまま、莉花は莉子の手を引っ張って暗い隧道を必死に走り、出口へと向かう。
「なんで?」
困惑し切った莉子が声を上げると、莉花は更に走る速度を上げながら答えた。
「あのお菓子、ヨモツヘグイだよっ!」
「よもつへぐい?」
「あれを食べたら、あの世行きになるのっ!」
それを言い切ると、莉花は悲鳴を上げた。
『逃げ切れると思うなよ!』
先ほどの女性が、追いかけて来たのだ。
被っていた黒い紗は取れ、その下には醜悪な面立ちがあった。
「まずい、|黄泉醜女《よもつしこめ》だ!」
「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
どちらからともなく叫び声が上がる。
追いつかれそうなのだ。
二人は益々速度を上げて、これまでに無い程全力疾走した。
やがて、外の光が見えてきた。
けれど、黄泉醜女はあと一歩のところで二人に手が届きそうなまでに近づいていた。
付かず離れずを繰り返し、長距離を走ってきた二人はもはや体力が限界。
隧道から抜け出たが、それでもなお黄泉醜女は追ってくる。
森の中に突入した時。
__刹那。
「左に逃げて」
何処からともなく、声が聞こえた。
莉子達は、その声に従い、左に曲がった。
「次は、右」
またもや声が聞こえる。
「左だよ」
「右だ」
「右に曲がって」
「次は左へ」
声がする度に、二人は従い続けた。
どうやら、この声は黄泉醜女には届いていないらしい。
やがて、森は開ける。
その頃には、黄泉醜女はいなくなっていた。
「助かった、のかな?」
莉花が呟く。
「それにしても、さっきの手と声は誰なんだろうね」
莉子が、至極真っ当な疑問を口にした。
それに対し、莉花は言う。
「きっと、道反の大神だよ。黄泉から皆を守ってる、て聞いたことある」
「ちがえしのおおかみ?」
「そう。」
「じゃあ、”ちがえしのおおかみさま”が守ってくれたんだね」
二人はその後、家に無事に帰った。
その後ろ姿を微笑みながら眺める、一つの影があった。
「もう黄泉に、近づいてはいけないよ・・・・・・?」
`「だって、黄泉醜女に捕まったら、生きたまま食われてしまうんだから」`