公開中
魔術師の門出
花の季節、陽の季節、実りの季節、星の季節
四つの季節が来るくる廻る
星たちが眠りにつく、そんな明け方。大切なものをカバンに詰め込んで、アリフェ・モカメリアは旅に出る。クラーディという村の外れにたたずむ小さな小屋、この家に暮らしていたのはアリフェだけだった。家族は数年前に事故で亡くなっている。
「いってきます」も「いってらっしゃい」もなく、ただ、秒針の音だけが部屋のなかで響いていた。しんとした雰囲気で村はまだ眠りについている。静かでアリフェ以外の姿はない。一人きり。それはそれで都合が良かった。村の人々はなにかとを気にかけてくれる。とても温かかった。一応小屋には置き手紙を残しているけれど、きっと心配をかけるに違いない。しかし、今、アリフェの見ている世界は思いの外狭かったようで知らないことが多すぎた。世界はまだまだ広いらしい。とある噂を聞いてそんな風に思って広い世界に向かって飛び出した。
「さよなら」
それだけを残して。
日の光が暖かな花の季節だった。
村を抜け出して草原。夜が明けて日が昇る。どこに行こうか。少し考えて西の隣町、ニジュレへ向かうことにした。隣町には大きな図書館がある。まずはそこで情報収集としようと歩みを進めた。
クラーディ
アリフェの暮らしていた村。毎年花の季節に豊作祈願のための花祭りが有名。
アリフェ・モカメリア
魔術師
両親は数年前事故で他界した。年の離れた兄がおり兄自身も旅に出ている。両親の影響で魔術や植物に関する知識を多くもつ。誰にでも敬語で話す。魔術の次に料理が好き。