公開中
第六夜:盆灯籠の音
町の神社「灯明社」の娘・朝比奈遥は、盆に飾る灯籠について語った。
「今年の灯籠から、夜になると“カン…カン…”って金属の音がするんです。誰も触ってないはずなのに」
祖父である宮司の話では、その音は“霊が道に迷っている”印なのだという。灯籠は霊を導く迎え火と送り火の役割を果たすが、道を間違えると音が鳴り、霊が彷徨うのだと。
遥は灯籠をひとつひとつ確認したが、異常はなかった。ところが、その夜、境内の灯籠の一つが突然燃え上がり、その場には濡れた封筒が落ちていた。
封筒の宛名は「大澤陽一」。しかも、その墨の濃さは今まで見た中でも異様に滲みが強く、まるで中から溢れ出てくるようだった。
遥は一瞬、燃える灯籠の中に、人影のような揺らめきを見たという——それが誰かは、言えなかった。