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あと一歩、君に。
ちょすりん
初めまして!ちょすりんです!今回、初めて小説を書かせて頂きました!ちょっと誤字、脱字や不備があっても温かい目で読んでいただけると幸いです。それでは、お楽しみください!!
『あと一歩、君へ』
第一章 春、君を知る
「おはよう。」
その一言が、私の高校生活の始まりだった。
四月。
まだ少し肌寒い朝。
教室の窓から差し込む光の中で、私は新しい席に座っていた。
知らない人ばかり。
話しかける勇気もなくて、教科書を何度も開いたり閉じたりしていた。
「隣、いい?」
顔を上げると、一人の男子が立っていた。
柔らかそうな黒髪。
少し眠たそうな目。
だけど笑うと、春の日差しみたいに優しかった。
「……うん。」
それが、君との最初の会話だった。
君は人懐っこい性格で、誰とでも話す。
なのに、不思議と毎朝一番最初に話しかけてくるのは私だった。
「今日、小テストだよ。」
「えっ!? 忘れてた……。」
「はい。」
そう言って、君は自分のノートを差し出す。
「昨日まとめたやつ。十分で覚えられる。」
「ありがとう……!」
そんな日々が続いた。
最初は"優しい人"だと思っていた。
それだけだった。
でも。
六月のある日。
体育祭の練習で転んだ私に、君は真っ先に駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
砂で汚れた手を、君は何も気にせず握る。
「痛くない?」
その手は温かくて。
心臓だけが、うるさいくらい鳴っていた。
その日から私は、君を目で追うようになった。
教室。
廊下。
放課後。
笑っている姿を見るだけで嬉しかった。
目が合うだけで、一日が特別になった。
だけど。
恋はいつも、気づいたときには遅い。
七月。
夏休み前。
「俺さ。」
帰り道。
夕日で赤く染まった歩道橋の上で、君は空を見上げながら笑った。
「入院することになった。」
冗談だと思った。
「え?」
「ちょっと前から病気でさ。」
笑っていた。
君はずっと笑っていた。
「夏休み終わる頃には戻るよ。」
その笑顔を、私は信じた。
「絶対だから。」
「うん。」
指切りをした。
小指が離れる瞬間。
君は少しだけ寂しそうな顔をした。
あの時、気づけばよかった。
あれが。
教室で見た、最後の笑顔だったなんて。
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第二章 届かない距離
夏休みに入って三日目。
私は勇気を出して、君にメッセージを送った。
『調子どう?』
数時間後、返信が届く。
『暇すぎる(笑)』
思わず笑ってしまう。
『早く学校来てよ。』
『そんなに俺がいないと寂しい?』
画面の向こうで笑っている君が目に浮かんで、胸が熱くなる。
『……少しだけ。』
送信ボタンを押したあと、顔が真っ赤になった。
しまった。
変に思われたかもしれない。
慌ててスマホを伏せる。
数分後。
『俺も。』
たった二文字。
それだけで、その日は眠れなかった。
――もしかしたら。
そんな期待ばかりが膨らんでいく。
夏祭りの日。
本当は一緒に行く約束をしていた。
『先生に外出許可もらえたら行く。』
そう送られてきたメッセージを、私は何度も読み返した。
浴衣も買った。
髪飾りも選んだ。
君が「青が似合う」って言ってくれたから、紺色の浴衣を選んだ。
待ち合わせは午後六時。
駅前の時計台。
五時五十分。
私はもう着いていた。
六時。
六時十分。
六時三十分。
人はどんどん増えていく。
花火が始まる時間になっても、君は来なかった。
スマホが震える。
急いで開く。
『ごめん。』
それだけだった。
すぐに電話をかける。
出ない。
もう一度。
出ない。
三回目でようやくつながった。
「もしもし!」
息を切らした私の声に、君は少しだけ笑った。
『……ごめん。』
「謝らなくていいから! 今どこ? 迎えに行く!」
しばらく沈黙が続く。
そして、小さな声が聞こえた。
『行けないんだ。』
「え?」
『今日は、外に出られなくなっちゃった。』
その声は、前みたいに元気じゃなかった。
「じゃあ、また今度行こう。」
必死に明るく言う。
「夏休み終わったら、文化祭もあるし、クリスマスもあるし!」
君は少しだけ笑って、
『……うん。』
そう答えた。
でも、その「うん」はどこか遠くて。
電話が切れたあとも、耳に残っていた。
花火が夜空いっぱいに咲く。
私は一人で見上げながら、小さくつぶやいた。
「来年は、一緒に見ようね。」
その約束は、風に溶けて消えていった。
八月の終わり。
始業式の朝。
私は教室に入ると、一番に君の席を見た。
空っぽだった。
「まだ退院してないのかな。」
そう思っていた。
ホームルームが始まる。
担任の先生は出席を取らず、静かに教壇に立っていた。
先生の目は赤く腫れていた。
胸がざわつく。
嫌な予感だけが、どんどん大きくなる。
先生は何度も息を吸って、それでも震える声で言った。
「……みんなに、伝えなければならないことがあります。」
教室から、音が消えた。
私は無意識に君の空っぽの席を見つめる。
お願い。
お願いだから。
その続きを、言わないで__。
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第三章 最後の約束
教室は、静まり返っていた。
窓の外では、夏の終わりを告げる蝉が鳴いている。
なのに、その声だけが遠く感じた。
先生は震える手で出席簿を閉じる。
何度も口を開きかけては閉じ、ようやく言葉を絞り出した。
「……かなたは、先週亡くなりました。」
誰も動かなかった。
誰も声を出さなかった。
時計の針だけが、やけに大きな音を立てる。
カチ。
カチ。
カチ。
「……え?」
自分の声だった。
聞き返したつもりだった。
でも先生は、ただ苦しそうに目を伏せるだけだった。
「嘘……。」
違う。
だって約束した。
「夏休みが終わったら会おう」って。
「文化祭もクリスマスも一緒に」って。
昨日だってメッセージを見返した。
『また学校で。』
そう送ってくれていたじゃない。
私は立ち上がる。
「違います。」
震える声が教室に響く。
「違いますよね……?」
誰も答えない。
「嘘ですよね!」
先生も、友達も、ただ泣いていた。
その瞬間、世界が壊れた。
私は教室を飛び出した。
廊下を走る。
階段を駆け上がる。
屋上の扉を開けると、熱い風が頬を打った。
「なんで……。」
涙が止まらない。
「約束したじゃん……。」
しゃがみ込み、声を上げて泣いた。
何度も名前を呼んだ。
返事は、なかった。
その日の放課後。
先生に呼ばれ、職員室へ向かった。
先生は一つの白い封筒を机の上に置く。
「これを預かっていました。」
震える字で、私の名前が書かれていた。
「君が退院したら渡そうと思っていた。でも……。」
それ以上、先生は話せなかった。
私は封筒を胸に抱え、誰もいない教室へ戻る。
君の席に座る。
ゆっくりと封を開けた。
中には、青い便箋が一枚。
君らしい、少し丸い字。
---
『まきへ。』
ーこの手紙を読んでるってことは、たぶん俺は約束を守れなかった。ー
ごめん。
本当はね、全部知ってた。
…先生から、「もう長くない」って聞かされた日のこと。
怖かった。
まだ十六歳なのにって、何回も思った。
でも、一番怖かったのは死ぬことじゃない。
まき…君と会えなくなることだった。
君はきっと泣く。
だからお願い。
泣いたあとは笑って。
君が笑うと、俺まで嬉しくなるから。
それとね。
一つだけ秘密を言う。
俺、君のことが好きだった。
最初に隣の席になった日から、ずっと。
でも言えなかった。
幸せになりたいって思えば思うほど、未来がない自分が嫌になった。
だから言えなかった。
ごめんな。
もし、生まれ変われるなら。
次はちゃんと告白する。
今度こそ、一緒に花火を見よう。
---
便箋に、一つだけ涙の跡が残っていた。
きっと。
君が書きながら泣いた跡。
私はその手紙を抱きしめた。
「……ばか。」
笑って言おうとした。
でも、声にならなかった。
好きだったなら。
どうして言ってくれなかったの。
私だって。
私だって、君が好きだったのに。
夕日が教室を赤く染める。
誰も座ることのない君の席だけが、あの日のまま、静かに光を浴びていた。
私は初めて知った。
「また明日」は、当たり前じゃない。
伝えたい言葉は、いつかじゃなくて、今日伝えなければいけないのだと。
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第四章 君が残した季節
あれから、私は毎日学校へ通った。
泣かない日はなかった。
朝、教室のドアを開けるたびに、無意識に君の席を見てしまう。
もちろん、誰もいない。
それでも私は見てしまう。
"もしかしたら"
そんなありえない期待を、心のどこかで捨てられなかった。
文化祭の日。
クラスは大騒ぎだった。
「写真撮ろう!」
「早く早く!」
みんな笑っていた。
私も笑っていた。
でも、その笑顔はどこかぎこちなかった。
スマホを開く。
君とのトーク画面。
最後のメッセージ。
『また学校で。』
既読が付くことは、もうない。
私は画面を閉じて、小さく息を吐いた。
「見てる?」
誰にも聞こえないくらいの声でつぶやく。
「今日ね、私、頑張ってるよ。」
返事はない。
だけど、どこかで君が笑っている気がした。
文化祭が終わる頃、担任の先生が私を呼び止めた。
「これ……かなた君のお母さんから預かった。」
小さな紙袋だった。
中には、一冊のノート。
かなた君がいつも授業で使っていたものだった。
ページをめくる。
数学の公式。
英単語。
落書き。
友達の似顔絵。
そして、一番最後のページ。
そこだけ、丁寧な字で何かが書かれていた。
---
やりたいことリスト
・高校を卒業する
・文化祭ではしゃぐ
・みんなで卒業旅行に行く
・運転免許を取る
・一人暮らしをする
・社会人になる
・親孝行する
・結婚する
・おじいちゃん、おばあちゃんになる
・まきに「好き」って伝える
---
最後の一行だけ、丸で囲まれていた。
私はページを閉じる。
涙が止まらない。
「なんで……。」
どうして、その一番簡単そうな夢だけ叶えなかったの。
どうして、私たちは「また明日」があると思ってしまったんだろう。
冬が来た。
初雪が降る。
帰り道、一人で歩いていると、ふと去年のことを思い出した。
『雪積もったら勝負な。』
「勝負?」
『先に転んだ方がジュースおごり。』
「絶対負けない!」
そう言って笑い合った。
結局、その約束も叶わなかった。
私は立ち止まり、白い空を見上げる。
「今年も雪だよ。」
静かに目を閉じる。
すると、一瞬だけ。
『寒っ!』
そう笑う君の声が聞こえた気がした。
気づけば私は、少しだけ笑っていた。
涙を流しながら。
笑っていた。
君の手紙に書いてあったから。
"泣いたあとは笑って。"
私はまだ君を忘れられない。
きっと、この先も忘れない。
でも。
君を思い出して笑える日が、少しずつ増えてきた。
それはきっと、君が私に残してくれた最後の優しさだった。
春まで、あと少し。
君がいない初めての春が、もうすぐ来る。
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最終章 あと一歩、君へ
十年が経った。
高校生だった私は、もう二十六歳になっていた。
毎年、夏になると決まってあの場所へ行く。
駅前の時計台。
君と待ち合わせをした場所。
六時。
あの日と同じ時間。
私は紺色の浴衣を着て立っていた。
「今年も来たよ。」
誰もいない空へ話しかける。
返事はない。
それでも、毎年来てしまう。
君との約束を、私だけは忘れたくなかったから。
花火会場へ向かう途中、小さな男の子が転んだ。
「いたぁ……。」
泣きそうなその子に、私は手を差し伸べる。
「大丈夫?」
男の子は涙をこらえながら笑った。
「ありがとう!」
その笑顔が、一瞬だけ君と重なった。
「お姉ちゃん!」
男の子のお母さんが駆け寄ってきて、何度も頭を下げる。
「本当にありがとうございます。」
「いえ。」
男の子は私の手をぎゅっと握る。
「お姉ちゃん、笑った顔かわいい!」
その言葉に、胸が締めつけられた。
昔。
君も同じことを言ってくれた。
『やっぱり笑ってる方がいいよ。』
涙が出そうになったけれど、私は笑った。
「ありがとう。」
花火が始まる。
夜空いっぱいに大きな花が咲く。
私は手提げバッグから、少し色あせた封筒を取り出した。
あの日から、ずっと持ち歩いている手紙。
もう何度読んだかわからない。
紙は柔らかくなり、折り目も擦り切れていた。
最後のページをめくると、今まで気づかなかったものが目に入る。
便箋の一番下。
小さく、小さく書かれた文字。
涙で滲んでいて、ずっと読めなかった文字だった。
私はスマホのライトを当てる。
そこには、こう書かれていた。
---
『もし十年後も、この手紙を持っていたら。
もう、前を向いていい。
俺を忘れるんじゃない。
俺と生きた時間を抱えたまま、君の未来を歩いて。
誰かを好きになっても、笑っても、幸せになっても、罪悪感なんて持たなくていい。
それが、俺の一番の願いだから。』__小文字__
---
視界が涙でぼやける。
「……ずるいよ。」
こんなの。
十年経ってから読むなんて。
私は手紙を胸に抱いた。
「私ね。」
夜空を見上げる。
「ちゃんと生きてるよ。」
「泣いてばかりだったけど。」
「友達もできた。」
「仕事も頑張ってる。」
「たまに笑えるようにもなった。」
花火が次々と打ち上がる。
その音に負けないように、私は叫んだ。
「ありがとう!!」
周りの人は驚いて振り返る。
でも構わなかった。
「大好きだった!!」
ずっと言えなかった。
十年前、言えなかった言葉。
今なら言える。
「今でも大好き!」
涙が止まらない。
でも、その涙はもう悲しいだけじゃなかった。
花火が最後の一発を打ち上げる。
夜空いっぱいに広がる光。
その中に、一瞬だけ君が笑った気がした。
制服姿のまま、少し照れくさそうに手を振っている。
『やっと言えたね。』
風が吹く。
花火の煙が流れていく。
気づけば、その姿はもうなかった。
私は空に向かって、小さく手を振る。
「またね。」
今度は、「さようなら」じゃない。
悲しい別れでもない。
君との思い出を抱えたまま、未来へ進むための言葉。
私は歩き出す。
一歩。
また一歩。
君にはもう届かない。
それでも。
君がくれた勇気は、これからもずっと、私の隣で生き続ける。
夏の夜風が頬をなでる。
遠くで最後の花火が消えた。
私は空を見上げて、笑った。
あの日よりも、少しだけ大人になった笑顔で。
――END――
読んでいただいてありがとうございました!いかがでしたか?改行が多くて読みずらかったらごめんなさい!では、また会いましょう!!