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キスで私を狂わせて
翔琉が去ったあとこの大柄の男のターゲットは私に変わった
「お嬢ちゃんさ、大人しく着いてきたら痛い事しないで俺が責任持ってお世話してあげるからさこっち来なよ」
こんな事言われて大人しく着いて行くバカがいるなら教えて欲しい
気づいた時には自分が今ヒールだと言う事も忘れて無我夢中に走っていた
「あ、おい待て」
どれぐらい走っただろう
だんだん息が苦しくなって足の回転が遅くなってきた
それでも走り続けなければいけない
捕まってしまえば一環の終わりだ
お世話…と言うのも遊郭とかキャバクラなどそーいう所に飛ばされ、借金が返せるまで休みなしで働かせられるという事で…
その時、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「痛…」
ぶつかった拍子に腰を強打する
ここが少女漫画の世界だったら今ので恋が始まるのだろう
だがここは少女漫画の世界じゃない
彼氏に捨てられ、借金取りに追いかけ回された挙句人にぶつかり腰を強打すると言う
ヒロインと呼ぶには哀れすぎる女だった
そう思ってぶつかった人の顔を見上げると
「…!」
凄いイケメンだった
街灯に照らされたその顔は1つ1つのパーツが完璧な形で完璧な位置に配置されている
髪はオールバックにされ常人より長い手足には似合いすぎるくらい似合ってるスーツが身に纏われていて…
思わず見惚れてしまった
「おーい綾ちゃん…待ってくれよ」
その声と同時に迫ってくる足音によって私は現実に引き戻される
ハッとした私は何を言っているのか
「助けてください…!」
と今ぶつかった男に助けを求めた
「今彼氏の借金取りに追われてて…」
私は目に涙を溜めながらぶつかった男に訴えるとその男は事を一瞬で理解したみたいで
「俺から離れんなよ」
と自分が来ていたスーツのジャケットを私に着せ、背中の後ろに私を隠した
今思う事ではないのだろうけどその声はとてもかっこよくて聞き惚れてしまった
「おいそこの男。その後ろにいる女、綾をこちらに渡してもらおうか?」
さっきまで追いかけてきた借金取りが追いついてそう言い放った
怖過ぎて私は目の前にある大きな背中に抱きついた
でもその男は慌てる様子もなく
「綾はうちの姫だから渡す事が出来ねぇ」
とドスの聞いた声で言った
するとさっきまで威勢の良かった借金取りが急に怖気付いて
「その声…まさか」
と言った
「あぁ、そのまさかの|式神龍之助《しきがみりゅうのすけ》だよ」
そう男が言うと借金取りが逃げ出そうとした
その腕を彼は素早く掴んで
「誰の女に手出してんだよ、次やったらただじゃおかねぇからな」
とさっきよりドスを聞かせて言った
そして借金取りの腕を掴んだまま私に
「ちょっと待ってろ、話つけてくる」
と言って曲がり角の向こうに消えて行った
2分くらいして彼が戻ってきたが借金取りはいなかった
「あの…借金取りは、?」
「あぁ、ちょっと痛めつけさしてもらった。そんでお前に2度と近づく事がないように釘刺しといたったよ」
「でも、私借金返して…」
「元はお前の借金じゃないんだろ?お前3000万とか言う金額を今すぐ用意しろって言われて用意できるか?」
3000万…翔琉が借りた金額だろうか?
「無理、です」
「だろーな、だからお前の代わりに俺が3000万肩代わりしてやったんだよ」
「え?」
「聞こえなかったか?もっかい言うぞ、お前の代わりに俺が3000万肩代わりしたんだよ」