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貴方に祈りを、愛を。
「フェルディナンドさまっ!次はお魚料理ですよ!」
次は待ちに待ったタラのような魚の味噌汁だ。
うふふん。和食が食べられる...。
和食が楽しみで仕方ない顔が出ていたようで、フィリーネに「ローゼマイン様、頬が緩んでいます。」
と言われてしまった。
危ない危ない。これをフェルディナンドに見られたらどうしたものかと呆れられる。
無事に味噌汁を完食した後は、デザートだ。
今日のデザートはパルゥケーキのデラックスバージョンだ。
見た目は完璧なウエディングケーキだ。
「ふむ。見事だな。」
「エラが沢山努力してくれたのですよ」
うふふん、とわたしは胸を張ってエラを自慢する。
「...悪くないな、」
そういうフェルディナンドの頬が緩んでいるのをわたしは見た。
お気に召していただけて嬉しい。
「おいしいですね」
「フィリーネ、ダームエル、二人もどうですか?」
どうやら二人は星を結んだらしい。
お似合いだ。
夕食が終わると、そこからは自由時間だ。
「あの、フェルディナンド様、今日...一緒に寝てもいいですか?」
一瞬でフェルディナンドの耳が赤く染まった。
・・・照れてる。照れてるね、これ
「構わん。そういえば私も伝えたいことがあった。」
え、なんですか伝えたいことって。
ど、どうしよう、え、ええ?今更だが、私とフェルディナンドは今まで一緒に寝たことがなかった。
そ、それはつまり...。
冬の到来.....。
あぁぁぁ!!
わたし、また言ってしまった...。
...はぁ、もう考えるのは辞めよう。
明日お母様に根掘り葉掘り聞かれそうで怖いなぁ...。
「ローゼマイン、もう居たのか」
「そりゃぁ...遅れてはなりませんし、ね?」
ほぅとため息をついたフェルディナンドが前髪をかき上げる。
風呂あがりらしく、髪に水滴がついてより神々しくなっている。
おう。イケメンが美化されたね...。
なんてことを思っていると、フェルディナンドの顔が急接近してきた。
おわっ!?
心臓がバクバクと音を立てて、
頭の中で氷にひびが入った時のようなキーンと澄んだ音が響いた。
なんだと思う間もなく、頬をペロリと舐められた
「うひゃぁ!?」
「な、なな何をするのですか!?」
「なにも...頬にクリームがついていたのだ、あんなうまいものを逃すわけにはいかぬ。」
何だそんな理由・・・
食いしん坊さんめ。
「ローゼマイン。まず話がある。」
「はい...?」
「目を瞑ってくれないか。」
言われたとおりに目を閉じる。
「手を出しなさい。」
手を出すと、そこにズシ、と魔石の感覚があった。
恐怖で全身がぞっと粟立つ。
「フェルディナンドさま、これ...ッ」
**「君の名捧げ石だ。」**
え、と乾いた声が零れ落ちる。
「フェルディナンドさま、?」
どうすればいいのだろうか。
これを受け取るということは、彼とのつながりが一つちぎれるということだ。
「フェルディナンドさま...どうして、わたくしに返すのですか?」
「...とりあえず受け取りなさい。」
どうしたらいいんだろう?
▶受け取る
▷受け取らない
▶受け取る
「わかりました。フェルディナンドさまがそうしなければならないのでしょう、?」
本当は、怖くてたまらない。
私のことが嫌いになったのかと思って。
「あぁ。私は明日から少し旅に出る。」
「えぇっ..?」
「その最中にもしも私に何かあったら君が危なくなる」
淡々とした声を聞きながらふぅと息を吐く。
「よかった、フェルディナンド様がわたくしを嫌いになったのかと...」
「そんなわけあるまい。わたしは君のことを愛している。」
「よかったぁ、!」
そんな会話をした次の日から彼は旅に出た。
_______________
彼が旅に出て4日がたったときだった。
今から帰還する、というオルドナンツが来てわたしは舞い上がっていた。
ちなみに私はこの4日間で計94回もフェルディナンドの名捧げ石を見ていたそうだ。(提供:ハルトムート)
「おかえりなさいませ、フェルディナンドさまっ!」
そう言って、彼が帰ってきたのを喜べられればよかった。
帰ってきたのは魔石とひとつの手紙だけだった。
「まいん、
すまない。
わたしがいなくなっても、きみははやくしんでくれるな。
わたしのねがいだ
きみにしあわせになってほしいんだ
なをかえしていてせいかいだった
わたしのひかりのめがみにしゅくふくを。」
一人、私は声を押し殺して泣いた。
ふと見ると、彼の名捧げ石はさらりと溶け、粉になっていた。
それを見ると、また涙がぼろぼろと零れてきた。
---
▷受け取らない
「嫌です。わたくし、フェルディナンド様と共に一生を終えるのです。そうやって、決意したのです、星結びの時に。」
溢れそうになる涙と嗚咽を飲み込んで、にっと笑う。
「すまぬ。たしかに、無理なことを言ったな、」
ふわっと微笑んでくれるフェルディナンドに私も微笑み返す。
「フェルディナンドさまっ」
**「ぎゅーしてくださいませっ!」**
手を目一杯広げる
「...それはつまり私の理性を壊せということなのか?」
「はへ?」
フェルディナンドの耳と頬が今までにないくらい朱に染まっている。
「抱きしめるで止まる気がせぬ。」
「...それはつまり...やっぱり、そういうことなのですか?」
嫌でもわかる。
じぶんの頬が、耳が、足先が火照っている。
「よろしいですよ、フェルディナンド様でしたら...」
その言葉を聞いたフェルディナンドが顔をくっと歪める。
「もういい。私は別の部屋で寝る。」
なぁあ!うぅ...。
少し、彼の横顔が寂し気に見えた。
なにか、わたしにできること....
「フェルディナンドさま!」
歩き出した貴方を急いで引き留める。
「高く亭亭たる大空を司る 最高神は闇と光の夫婦神 広く浩浩たる大地を司る、五柱の大神 水の女神 フリュートレーネ 火の神 ライデンシャフト 風の女神 シュツェーリア 土の女神 ゲドゥルリーヒ 命の神 エーヴィリーベよ 我の祈りを聞き届け 御身の祝福を与え給え」
ぶわっと光があふれ出る。
「これで寂しくないでしょう?わたくしの魔力がいるのですから!」
「...馬鹿者め。」
ちょっと過激だ、ハピエンのほう。