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【pixivに上げる用】
「……っ、んん…」
ぼーっとする頭を必死に動かす。
目の前にあるカーテンの後ろは、まだ暗い。
ということは、随分早く目が覚めてしまったようだ。
まず、いまなんじや…?
そう思いスマホを手に取ると、ぴこん、と言う音と共に表示された通知。
そこには、
『なーくんが風邪引いたらしい!!』
と、忙しない文面が貼られていた。
震えている指で通知をタップすると、瞬く間に追加されていくメッセージ。
俺はその速すぎる流れについていけないまま、はっとした時には、皆でお見舞いに行く話が決定されていた。
俺も、行かな…
そう思って体を起こすと、さっきまで感じなかった…体調不良のオンパレードが、俺を襲う。
「っ、い゛…っ、!は、ぁ゛っ…〜〜っ…!」
声にならない叫びをしばらく続けるも、途中で意味が無いことに気がつく。
頭痛いし気分悪いし、なんなら結構ふらふらするし。
完全にやらかしてるけど、でも…助け求めてる人が最優先や。
っていうかそもそも、俺は助け求めん(求められん)タイプやし。
俺は髪を整えながら、胸元に手を当てる。
なんか…やっぱ、気分悪いなぁ。
でも…でも、今はとにかくなーくんのことや。
今は、なーくん。
そう言い聞かせて、俺は重い体を奮い立たせた。
ー
「おいジェルおせーぞぉ!」
莉犬が俺の背中を軽く叩く。
ごめんごめん、と付け足しながら、途中で買ったものの袋をさとちゃんに預けた。
「………ん、」
気持ちわるい。
体ごと振り回されたみたいに、頭もお腹もぐわんぐわんする。
あーこれ、わんちゃん吐くかもしれん。
そんなことをふわふわ考えていると、視界の先のころんがドアノブに手を掛けたのが見えた。
あかんあかん…今はしっかりせんと。
なーくんやってしんどいんやし。
また言い聞かせて、俺は目の前に向き直る。
するとさっきまで開けていた目の前に、赤色が広がった。
「…っえ、りいぬ…?どしたん」
「ジェルくん、顔色悪いよ…?体調悪いんじゃないの…?」
綺麗なオッドアイを心配1色に染めて、こっちを伺ってくる莉犬。
そんなわかりやすいかな。
でも、これはバレたら流石にまずい。
だって、体調不良者がもう一人増えたら…皆が大変になってまう。
それで次誰かが風邪引いて…そんで俺のせいって言われて…それで…
この癖はあかんと思ってるけど、でもこれが役に立つこともあるから直すとかは
してない。
でも、ちゃんとあかんってわかってんねん。
そうやって後のことばっか考えて、それで健康管理も疎かになって。
一人で悶々と闘っていると、ころんの隣にいたるぅちゃんが莉犬の後ろから。
るうちゃんの後ろからも、さとちゃんところんが心配そうに俺を見ていた。
「ジェルどうした」
「な、なんか体調悪そうで…」
「じぇ、ジェルくん大丈夫なの、?」
…そうや、もうここで言ってまお。
それで帰らせてもらえばいいんや。
我ながらいい案を思いついて、さぁいざ言おうと口を開く。
でも、しんどいなんて
体調悪いなんて、
おれには言えっこなくて。
「だ、大丈夫やで?何言っとん、もぉっ…」
あぁ、やってしまった。
そっか、と離れていく皆を見て、やっと自分の言ったことを理解する。
これもほんまにあかん癖や。
大丈夫?って聞かれたら、大丈夫って答えちゃう癖。
直さなあかんって分かってるけど…でもやっぱり、育ち方とかも影響しているもの
だから、直そうにも直せなくて。
代わりにどんどん、悪化していく一方なんだ。
「ささっ、皆行くよー!」
ころんが先陣を切り、ドアを開けた。
もはや鍵が開いていることにも突っ込まなくなっている。流石にそれはあかんと思うわ。
俺はふらふらの体を動かして、なんとな平然を装うのに必死。
皆の背中についていくことしか出来ない自分が、いつにも増して情けなかった。
「なーくん!」
莉犬ところんの声ではっとする。
さとちゃんとるうちゃんの間から見えたのは。ぐったりしているなーくん。
しんどそうやなぁ……俺もあんくらいやったら、弱音吐けたんかな。
自分と人を比べてしまうような思考が浮かぶ。
そんな自分に嫌気が差す。
「ちょ、ジェルどいて!俺色々取ってくるわ!」
ずっとそれの、繰り返し。
「ジェルくん突っ立ってないで、手伝ってください!!」
それで人に、迷惑をかけるなら。
「っ…!っけほ、ぅ゛…ご、め…っちょ、といれかり、るっ…」
ー
「っげほ!っ、おぇ゛…!」
ツン、と独特の臭いが鼻をつく。
気持ち悪い。早く全部吐きたい。
吐きたいのに、吐けへん。
「は、っぁ゛…っ、ぇ」
もうむり。
俺は右手の人差し指と中指を、口に突っ込む。
ぐっ、と喉を押したと同時に、お腹らへんから上がってくる…嫌な感覚が走った。
「ぉえぇ゛っっ、!!げほっ、げほげほっ…」
ごぽっ、とまた不穏な音がして、かと思えばすぐに喉を通って吐き出される。
今頃みんなは、なーくんのとこかなぁ。
なーくん家のトイレやのに、申し訳ないなぁ。
そんなことを思ってから、また嘔吐こうとした時だった。
背中に、手が当てられたのは。
「っ、ぐ…だ、れ…」
「じぇるくん、?大丈夫…?」
今日初めて聞いた、落ち着く低音。
この家の主で現在ダウン中だったはずの、なーくんだった。
「…っ、な、んで…なぁく、おきて、っんの…」
「みんなが、どっかいって…静かになったからか、わかんないけど…こえ、きこえた」
よく聞くと、少し声が掠れている。
じゃあ、やっぱり…ダウン中っていうのは事実で。
わざわざ俺のために、
しんどいのに、
起き上がらせてしまった。
「っ…ごめん、」
「…ぇ、?それは、どういう…」
「…しんど、かったやろ…?ここ、まで、こさせちゃ、っ…は、」
長々と話しすぎた。
一瞬落ち着いた吐き気が、また何も変わらない様子で戻ってくる。
あかんあかん。せめて、なーくんに外、出てもらって…
「いいよ、ぜんぶだしちゃいな、?」
いつもより弱々しい手が、またなぜか…体の奥にぐっと効いてしまって。
「っ…ぅ゛、えっ…おぇ゛っ、!」
ばしゃばしゃと激しい水音と、なーくんの掠れた低音と、俺の情けない声。
なんだか全てがマッチせずに、それぞれバラバラに取り残されているような気がした。
「どう?おちついた…?」
「…っん、きたないとこみせてもうて、ごめん」
「だいじょうぶ…ジェルくんがちょっとでもよくなって、よかった…」
なーくんはそこまで言ってから、俺の方にふらっと倒れてくる。
受け止めたけど、身動きが取れない。
誰か…
「なーく、っあ!え、なーくん吐いたの!?」
……え?
「あ、え」
「さとちゃーん!なーくんが吐いちゃったみたい!!袋とかもお願い!!
ジェルくんが看病してくれてたの?ありがとう」
…違う、俺が欲しかったのは、ありがとうじゃなくて…
「なーくん俺が連れて行くね」
俺の力の抜けた腕から、なーくんが離れていく。
俺はそれをただ、呆然と見つめるしかなかった。
いや、ううん。皆も焦っとるんやろ。
というか、焦ってなくても…そりゃまずは、なーくんやろ。
そうやん、なんで俺が心配されると思ってるん。
そうそう。俺はだいじょうぶ。
吐いただけやん。
こんなん慣れてるやん。
俺はへーき。な、ほら…大丈夫。
口元に手を当てて深呼吸してから、俺はバレないように猛スピードでうがいをしにいった。
ー
はぁ……。
無意識にため息が漏れる。
体調もちょっとだけましになったし、はよ戻って…そんで、手伝わな。
俺は少し急ぎ足で、なーくんの部屋へ向かった。
ドアの隙間に手をかけようとした時。
「ぇ…さっき、はいてたの…ジェルくんだよ、?」
なーくんの不思議そうな声が聞こえた。
「…っ、!」
俺は一歩後ろに後ずさる。
あかん。これで、体調悪いのバレる。
迷惑かけたあかんって、おれ…っ
「は、っジェルは!?」
さとちゃんの声とほぼ同時に、俺は行く当てもないまま足を速める。
はやく、皆から離れて…そんでもう、ひとりで帰って…
そこまで考えたけど、途中で頭に鈍痛が響く。
情けなくしゃがみ込んだ俺の後ろから、皆の足音が近づいてきた。
あぁ…っ、かっこわるいなぁ。
「おいジェル…っ、!」
さとちゃんが珍しく焦ってる。
俺の目の前にかがんできたのは莉犬。
背中さすってんのは、多分るうちゃん。
頭撫でてくれてんのはころん。
そんで…
「だ、っだいじょうぶ…?おれが倒れたせいで、ご、ごめんね…っ、」
ずっと謝ってんのは、なーくん。
「ジェルくん…ごめんね、さっきしんどかったの、ジェルくんだったんだよね。
ごめんね、」
……ちがう。
俺が欲しかったんは、ごめんでもなくて。
「っ、は…ひゅ、っ…」
「ジェルくん?」
「おいジェル!一回深呼吸しよ、な」
さとちゃんに抱きしめられて、背中をぽんぽんされる。
息出来ひん。
あーもう、このまま死ぬんかなぁ…おれ。
でも…こんだけ迷惑かけるやつは、もういっそ…
「ジェルくん、!」
なーくんの声で意識を取り戻す。
さっきまで固くて大きかった体が、いつの間にか細くて熱い体に変わっている。
さとちゃんとなーくんが変わったらしい。
頬に伝うのは自分の涙。
ほら、かっこわるい…
「ジェルくん、っ…いっかい、おちつこ…?ね、」
「は、っ…ふ、ぅ」
「上手だよ、おれに合わせて、深呼吸してみよっか」
「っ…ひゅ、かはっ、」
深呼吸…っ、?ど、やってやんの…
わか、らん…どうやってしんこきゅうすんの、?
「ぅ、っ…ど、やっ…て、」
「え、ぁ…ど、どうしようさとみくんっ…」
「ジェル、歌歌ってみ?」
「鬼畜だな」
さとちゃんところちゃんの声が増える。
歌…うた、うた…
「っ、ひゅ、」
「そう、!今息吸えたよっ…!そのままはぁってやってみよう…?」
「は、ぁっ…」
やっと思い出した、息の仕方。
深呼吸をしたあと、しばらく沈黙が続いた。
「…あの、」
「よし!とりあえずベッド行きましょう!」
るうちゃんがにこやかにそう言う。
「なーくんのベッドでいいでしょ!」
ころちゃんが楽しそうに言う。
「そだなー、なんかカップルみてぇ」
さとちゃんが笑いながら言う。
「「えっ…!」」
そして俺となーくんが、揃って声を裏返した。
ー
数時間後。
「っ、うぅー…」
「あかん、これあかん…俺しぬかも…」
2人揃って悪化した。
そして、
「なぁくーん、泣かないで〜?」
「ジェル、俺の方見て。正気取り戻せ。」
「僕2人のゼリー持ってくる!なーくんはそれで泣き止んでくれるかも!」
「じゃあ僕は配信の枠どうにかしてきますね!」
「「「「「……あ。」」」」」
看病組の過保護と、
リスナーの不安も悪化した。
なーくんが起きる
さとちゃんがジェルくんを探す
なーくんがジェルくんのことを言う
莉犬くんがびっくりする
皆で一斉にジェルくんのほうをみる
ジェルくんが泣く(ずっと謝ってる、過呼吸?)
気づけなくてごめんねって皆が謝る
二人まとめて付きっきりで看病される