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貪
私は天使。なぜなら、みんながそう言ったから。
背中に生えたこの翼。
いつの日か空を飛べる。
それまでは、この部屋の中。
“さいだん”と呼ばれる台の上で、この清潔を保ち続ける。
…らしい。
毎日、色んな人が来る。
みんな、私に物をくれる。
金、宝石、果物、清水。
それよりも、おもちゃが欲しい。
あと、誰も私に触ってくれない。
いつか、“さいだん”から降りられる日が来ますように。
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今日は、いつもと違う人が来た。
その人は、みんなと違う服を着ていた。
礼もせずに“さいだん”のすぐ側まで来て、ある言葉を教えてくれた。
その人は、そのままどこかへ連れてかれていった。
みんなが私を心配した。
でも、私はあの人が教えてくれた言葉の意味をずっと考えていた。
〈色即是空〉
どれだけ|色《事実》が集まっても|空《理想》にはいけない。
本質的には同じでも、その差は埋められない。
今の私は、いろんな色の果物を食べ、いろんな色の宝石を身に着けている。
その度に身体は重くなる。
みんなの想いが重なるほど、空へはどんどん遠くなる。
そもそも、なんで私はこの“さいだん”から降りられないと思っていた?
ちょっと足を動かせば、すぐにでも降りられそうじゃないか。
次の日、私は“|さいだん《舞台》”を降りた。