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夙夜夢寐
登場人物は、2人です。どちらも高校生くらいです。
場所は、2人が通う高校です。
では、どぞ
「なんで……泣いてるの?」
今まで君の泣き顔なんて見たことなかったから、戸惑った。
「……全部、全部、全部、|春輝《はるき》くんのせいです」
「は?俺なんかした?」
暫くの沈黙があった後、君は首を振った。
「じゃなんで………」
「私が!…私が勝手に、春輝くんを好きになっちゃっただけなんです」
「はあ……そりゃどうも」
「迷惑ですよね、すみません。…………想いは伝えられたので、さようなら」
そう言い残して、君は背を向け歩きだした。
どこに行くのだろうか。
さっき君が言った さようなら がどうもひっかかる。
胸騒ぎがした俺は、君の後をつけた。
────また、人を傷つけてしまった。
俺は昔からそうだった。
鈍いだとか、鈍感だとか、そんなことを|始終《しょっちゅう》言われてきた。
俺も本当にその通りだと思う。
人を傷つけるまで、自分に非があることに気づけない。
人が傷ついているのを見てはじめて、自分のせいかも、と思い始める。
そういうところが自分にはあると、分かっているけどやっぱり気付けない。
つくづく自分が嫌になる。
けど今回は、本当に俺のせいなのかな……
君をつけていくと、屋上についた。
俺は屋上に来たことがなかったので、その景色に感動した。
天気は決してよいとは言えないが、晴れ間が雲の隙間からちょっこり覗いている。
その透き通った群青に吸い込まれそうなほど綺麗だった。
その晴れ間から、太陽の光がカーテンのように注がれている。
その暖かい気配に、ついうとうとしてしまいそうだ。
「なんで春輝くんがいるんですか?」
ボーッと空を見上げていた俺に君が言った。
「あ、ごめん。なんだか君が心配で…」
「心配?どうしてですか?」
「んーなんとなく?」
「ふふっ春輝くんらしいですね」
君の微笑んだ顔と揺れた髪の毛が、日光に照らされて美しかった。
「空、そんなに綺麗ですか?」
君がそう呟いた。
「うん」
暫く、俺も君も言葉を発っさなかった。
とにかく今は儚げな群青に浸っていたかった。
「春輝くんは、なんで私がここに来たか、わかりますか?」
優しげな、でもどこか弱々しい、そんな声で君は俺に問うた。
「うーん、、、景色をみるため?」
「ハズレです」
君はすぐに否定した。
「じゃあ、なんでなの?」
「私は………………天国か地獄に行きたいんです」
「え?」
「あの雲の間の青空、あそこから天国に行けそうな気がしませんか?」
「た、確かに‥」
────しかし俺は次に発した君の言葉でなぜ屋上に来たのかを、初めて知った。
「死にたいんです」
今度は、弱々しくなんかなかった。
芯のある決然たる声だった。
そこには俺には想像もできないような苦しみ、葛藤が詰まっていた。
俺は、抱えていた疑問を投げかけた。
「さっき……なんで俺のせいって言ったの?」
俺は君がいつものように微笑みながら答えてくれると思ったが、そうではなかった。
「……春輝くんの存在が、私の生きる活力でした。原動力でした。でも私はどうしよもなく死にたかった。この世界に生きるのがつらかった。生きるか死ぬか、私は悩みました。死ねば、楽になれるけれど、春輝くんに会えなくなる。結果、私は死ぬ方を選びました。」
真剣な顔で君はそう言った。
並大抵の覚悟ではないと、俺にもわかった。
「死なないでよ。君がいなくなったら困るんだけど」
君は少し目を見開いた。
「……どうしてですか?私はどうせ必要のない人間です。私がいることで幸せになる人なんかいません。そんなのが、生きてていいわけありません」
「君は、俺の友達だから…大事な人だから…」
言葉に詰まってしまう。
「君がいなくなったら……俺が傘忘れたとき、誰が貸してくれるの…?俺が苦しくてやめたくなったとき、誰が背中を押してくれるの…?俺が寂しいとき、誰が隣にいてくれるの…?」
半ば、涙声になってしまったが、君は破顔した。
「春輝くんは、優しいですね」
俺も君も必要以上に言葉を発しなかった。
この景色を、君と見ることが何より心地よかった。
次に沈黙を破ったのは、君だった。
「私が死んだら嫌ですか?」
「うん。絶対にいやだよ。」
即答した。これ以外にいう言葉がないから。
「…私が君のことを好きって知って、なんて思いましたか?」
「……嬉しいって思った」
素直な気持ちを吐く。
「私のこと、好きですか?もちろん、恋愛的に。です」
「それは…………わからない……けど、好き。恋愛って考えるとよくわからないけど、普通に好きだよ」
「そうですか。ありがとう。」
「えっと…どういたしまして?」
「ふふっやっぱりいい人ですね。春輝くんは、この世にいるべきですね」
「なんで?そんなこと言ったら君もこの世にいるべきじゃないの?」
「…………春輝くんの言葉っていっつも嘘がないですよね。なんだか、反論できませんから不思議な気分になります」
君の顔がほころんだ。
「そうなの?でも君は死ぬべき人じゃないよ」
君は少し目を丸くしてから、うつむいた。
「…………もう……そんなこと言われたら…………死にたくなくなっちゃうじゃないですか…………っ」
君の足元には涙がこぼれ落ちていた。その姿は、今にも崩れてしまいそうだった。
支えていなければこの世からいとも簡単に消えてしまいそうだった。
「……ちょっ…………いきなりなんですか!」
気付くと俺は君の華奢な身体を包んでいた。
「………………でも……あったかいです……」
「そう?」
「…はい…………あ、春輝くんの心臓の音がきこえます…」
「ほんと?」
「ふふっ…本当です……なんだかドキドキしてるんじゃないんですか?鼓動がとても早いです…………あれ?違うかも……鼓動が早いのは私の心臓……かも」
「どっちなの?」
「……わからないです……もう少しこのままでもいいですか……?……なんだか、あまりにも気持ちがよくて…」
「うん。俺もずっとこのままがいいな。」
「えぇ?ずっとですか?流石に私の心臓が破裂しますから、ずっとは嫌です」
「そっか残念」
「もぉ~これ以上ドキドキさせないでくださいよぉ~」
「あははっそんなつもりないけどな」
「……春輝くんのそういうところ、私は大好きですけどね」
「そういうところってどういうところ?」
「無意識に、人を幸せにさせちゃうところです」
「ふぅん…」
「────君は……|幸愛《きあ》さんはまだ、死にたいって思ってる?」
突然、爽やかな風が吹き抜けた。
「もう少し、この世で頑張ってみたいです」
その涼風は、少しだけ春の匂いがした。
純愛を書きたかったけどやっぱり俺には無理やw
「……」←これが多すぎたけどまあ、いいや
あ、一応
タイトルの「夙夜夢寐(しゅくやむび)」は
一日中、頭を離れず思い続けることです
読んだらファンレターください((殴