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猫好き 猫山田萌編
猫のマオを丁寧にお世話してから、あたし・猫山田萌は登校した。
あたしは、大の猫好きだ。だから、身の回りのもの全て猫にしている。
「おっはよ〜!」
そう元気よく、あたしは挨拶した。
でも、返ってくるのは、沈黙。
沈黙。
沈黙。
「…えっ」
さっきまで、楽しそうにおしゃべりしていた女子。
さっきまで、ドッジボールに行こうとしていた男子。
全員が、時が止められたかのように停止した。
そして、また賑やかな時が流れた。
「みんな、どうしたの?」
今度はあたしに注目されることもなく、ただただ無視された。
「…は?」
そうだ、|花音《かのん》。
あたしの親友。花音だったら、味方してくれる。
「かのーんっ」
「…萌?」
花音が冷たい。そういうのは、すぐにわかった。
「どうした___」
「しつっこいんだよっ!!いっつも猫のやつつけてさ!ずーっと、猫猫猫猫!もう飽きたんだよ、お前にも猫にも!!」
「はっ?」
花音はそう吐き捨てて、あたしを突き飛ばした。
頭にゴンッという衝撃が走る。
最後に視界がとらえたのは、「しつこい」と言われた、Tシャツの猫の柄だった。
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「っ!?」
気がつけば、家だった。
今日起こった異変。
「そうだ、グルラ___」
「え?」
あたしのクラスの、メールのグループ。
スクロールしてもスクロールしても、グループが見当たらない。
通知に、赤い印がついている。
タップしてみる。
《Moe は 6年2組 から 外され ました》
もう、あのグループに入れない。
それから、あれがトラウマで学校に行けてない。
チャットサイトにずっと入り浸って、勉強なんて忘れてしまった。ひとつでも間違ったら、花音たちに笑われる。そんなふうに感じて、恐ろしかった。
『わたしも、不登校になっちゃったんだよね。だからすごく共感できる!』
『わかる、わかる。わたしもそうだった』
チャットサイトでは、みんな肯定してくれる。
あたしは間違ってない。
そんなふうに言ってくれてる。そんな感じがする。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
ある日、そんなルーム名が飛び込んできた。
人狼ゲーム。
あんなふうになる前までは、みんなとやっていたっけ。ふと、そう思い出す。
やりたい。
そんな一心で、考える間もなくルーム名をタップした。