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期待なんてしないで①
「|詩奈《しいな》はやっぱりすごい子ね!」
「さすが詩奈!世界一の娘だ!」
期待なんてされなければ、こんなことは思わなかったのに____
南桜川高校。ここは私が通っている学校で、頭がいい高校だ。
「しーなっ!やっほ!」
「わっ!びっくりした…|優陽《ゆうひ》か。」
私は|白鈴優陽《しらすずゆうひ》という1年生と家が近いから長い間友達でよく話していた。
「せっかくだし一緒に行こうよ!」
「まあ、いいけど。」
「しーな、最近ぼーっとしてない?何かあったの?」
「あー、なんか昔のことをよく思い出すんだよね。」
誰も私が「消えたい」と思っているなんて思いもしないだろう。
暴力を振られているなんてもっと誰も思いもしないだろう。
「ふーん、昔のことか…」
「そこのおふたりさーん?」
「うわあっ!だだだっ!誰ですかー!?」
「わいは|北臺鶴満《きただいつるみ》。」
緑色の髪を黒いリボンでまとめた少し不気味な子が話しかけてきた。
「しーなに何するっていうんですかー!」
「もしかして、わいのことが怖いの?」
「怖くなんかないです!」
「わい、詩奈ちゃんと仲良くしたいなー?」
「え?なんで私の名前を?」
「ちょいちょい!同じクラスでしょー?忘れちゃったの!?」
「忘れたというか…興味がないというか…。」
「とりあえず!わいと仲良くしない?詩奈ちゃん!」
何故か自分のことを期待されているみたいで怖くなった。期待なんかじゃなくて、きっと北臺さんの優しさなのに……。
「う、うん!よろしくね!」
それから北臺さんはよく話しかけてくれてよく一緒にいるようになった。
でも、家に帰れば毎日地獄が待っていた。
「じゃあバイバーイ、しーなと鶴さん!」
「うん、バイバイ。」
「詩奈ちゃん、また明日ね。」
「うん、また明日…。」
◆◆◆
「ただいま…」
「まあ!今回もテスト1位なのね!」
「さすが、《《世界一》》の俺の娘だ!どっかの誰かとは違ってな!がははは。」
うるさい、うるさいうるさいうるさい!
「あら、帰ってきてたのねー。」
「相変わらず、馬鹿みてーな顔してるな。」
頭のいい高校に行ったって、どんなに成績がよかったって、私への態度は変わらなかった。
お父さんが大きな足音を立てて私のもとへやってくる。
パァン!
私の頬を叩いた音が大きく響く。それを見た妹とお母さんはくすくすと笑う。
「お前なんか、この家にいる価値ないんだよ!クズが!」
「期待しないでよ!どうせ裏切るならさぁ!!!」
「あなたに、期待したことなんて《《一度も》》ないわ。」
「っ!」
もう我慢の限界だった。私は走って家を出た。
「雨…か。」
外は大粒の雨が降っていた。さっきまではすごく晴れていたのに。
1人で泣いていると、自分に当たっていたはずの雨が急に当たらなくなった。
??「そんなところで1人でいたら、風邪ひいちゃうよ?」