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ポンコツ天使
休日の朝――
「……起きない」
悪魔が言った。
「珍しいな」
いつもなら、規約という名の暴力で俺を叩き起こす天使が――
「……まだ寝てる」
「は?」
嫌な予感しかしない。
◆ 明らかな異常事態
「おい」
俺はベッドの上の天使を見る。
「天使?」
「…………」
反応なし。
「死んでないよな?」
「縁起でもないこと言うな。俺たち天界の住民は死なない」
悪魔が呆れる。
さらっと言っちゃってるけどスゲー。
「ただ寝てるだけだ」
「いやいやいやいや」
ありえない。
あの天使が?
秩序の塊みたいなあいつが??
「寝坊?」
「信じたくない現実だな」
◆ 起こしてみる
「おい天使」
軽く揺する。
「朝だぞ」
「…………」
起きない。
「……ガチ寝だな」
悪魔が妙に冷静だった。
「なにそのレア現象」
「疲労の蓄積だろ」
「天使が疲れるの!?」
「お前の監視って結構面倒だから」
「俺のせい!?」
なんか、うん、ごめん。
◆ ついに覚醒
「……ん……」
小さな声。
「お?」
「…………朝……ですか……」
「いや昼」
「え」
ゆっくり目を開ける天使。
そして――
「え」
固まった。
「え?」
「二度言うな」
◆ 秩序担当、崩壊
「なぜ起こしてくれなかったんですか!?」
「起こしたわ!!何度も起こしたわ!!」
「規約違反です!!」
「いや知らんがな!」
悪魔が吹き出す。
「ブハッ」
「笑わないでください!!」
「いや無理…ハハッ」
「ちょっ…!」
天使が完全に取り乱していた。
◆ 致命的弱点発覚
「……原因は」
天使が真顔に戻る。
が、どこかおかしい。
言いにくそうに口をパクパクして目線を泳がしている。
「昨夜の人間界の娯楽です」
「……は?」
なんだそれ。
「動画視聴が止まりませんでした」
ん…?
俺悪くないじゃん!
「お前何してんの!?」
「興味深い文化でした」
「何時間見たんだよ」
「……気づけば夜が明けていました」
「それ典型的なダメ人間じゃねぇか!!」
◆ 天使、ただのポンコツ化
「信じられません……」
天使が頭を抱える。
「自己管理に重大な欠陥が……」
「欠陥ってレベルじゃねぇよ」
「人間すぎるだろ」
悪魔が笑う。
「なんだか親近感わくな。お前も人間にならないか?」
「揶揄わないでください!」
◆ 生活能力問題
「朝食は!?」
「もう昼食の時間だよ!」
「規則正しい生活が……」
「昨日お前が自分で崩したんだろ!」
「ぐっ……」
天使が言葉に詰まる。
その姿、見覚えがある。
完全にテスト前の俺じゃねぇか。
◆ さらに崩れる威厳
「……コーヒー……」
「は?」
「眠気覚ましに……」
「飲むの!?」
「合理的判断です……」
「天使のイメージが死ぬ!!」
悪魔が爆笑する。
「最高だな今日」
◆ 世界のバグ発生中
休日。
静かなはずの朝。
なのに――
「なぜ人間はこんなにも誘惑が多いのですか……」
「知らんよ」
「破滅の香りがする世界だな」
「悪魔が言うな」
◆ 今回の結論
数時間後――
「……復活しました」
天使がソファで言った。
完全復活モード。
「もう大丈夫か?」
「はい」
いつもの凛とした表情。
……だが。
「本日の件は」
嫌な予感しかしない。
「記録から削除します」
「おい」
「監視業務に不都合なため」
「おい」
悪魔がニヤつく。
「黒歴史処理きたな」
「聞こえていますよ」
◆ 致命的オチ
「ですが」
天使が淡々と言う。
「対象者の怠惰傾向は引き続き問題です」
「なんで俺が説教されてんの!?なぁ悪魔もなんか言ってくれよ!」
「俺は知らん」
「コイツは本件とは無関係です」
「理不尽すぎる!!」
――こうして。
秩序担当の威厳は一日限定で完全崩壊した。
……が。
翌日には何事もなかった顔で復活していた。
非常に納得がいかない。
本当に。
記録から削除するのはずるいと思う。
フェアじゃない。