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心の忠誠
「shaちゃッ…」
zmと喧嘩してどこかへ行ってしまったsha。
要因を知る2人はただ俯いて黙るだけ。
一方何も知らない、いや知らされた俺はただ呆然と彼が飛んで行った方角を見つめるだけ。
いつも欲望には目がない彼。
「死にたい」という欲望が芽生えてしまったが故に狂ったのだろう。
何千年といるが体感はたった2日しか経っていないような気がする。
悪魔や妖怪は寿命が長い。
モンスターであるzmの寿命は知らないが、妖精であるshpは…案外すぐ死んでしまう。
200年程度…だろうか。
shp自身が語っていた。
今俺等が拠点としている家の倉庫…だろう場所で見つけた書物には生涯を終えた妖精、「レイラ・プリズムリバー」の名が刻まれていた。
「ただの噂とかで聞いただけっすけど、プリズムリバー家の4人姉妹の1番下らしいっす。彼女だけここに迷い込んで生涯を終えたそうです」
「ほーん、結構呆気ないんやな。shp桾ももしかしたら死ぬのはすぐかもな」
「まさか。兄さんの方が先なんやないっすか?笑」
そんな他愛ない会話をした記憶がある。
今、彼が死んでないのはshaのおかげと言える。
あいつの能力がshpを救った。
きっと、それを思い出せば死にたいと言う欲望も無くなる。俺はそう考えるしかなかった。
スペルカード…まぁ弾幕遊びを教えてくれたのは全部あいつ。
それはzmもわかってるはず。
だからこそ全員shaが死ぬのを阻止するんだ。
「…なぁ、地底に行かへんか?」
「何で?地底に用なんかないやん…」
「そうですよ」
「いや、用はあるで。地底はshaが1番最初に落ちた場所、外の世界で言う故郷みたいなもんや。さっき飛んで行った方角を考えるとあっちにあるのは地底ぐらい。俺は放って置けへんから向かうで。君等がどうするかは知らんけどさ」
黙り込む2人を背に、歩きだす。
あいつを引き止める。そう心に誓ったからには後戻りは出来ない。
1人で勝手に死なれちゃ困る。
死ぬ時はここの全員一緒って、神が言うとる。
それは2人も分かってる。
1番最初に神を信じて裏切ったshaにどんな天罰が降るのかはわからん。
それでも俺らはそばに居る。そう全員で誓った。
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「…ん、ぁ…?」
「あら、目覚めるの早いわね」
「…さとり?」
地底に落ちて気がつけば地霊殿の主の部屋に着いていた。
気を失っている間に芳香達が運んでくれたのだろう。あ、芳香は死体か…。
気怠そうにこちらをみるさとりの三つの目はshpに似ていた。
何だろう、俺はあいつらと重ね見る癖があるのだろうか。
似ている眼差しで見られるとどうしてもあいつらが脳裏によぎる。
自分から離れた、だから覚えておく必要はない。
忘れたくて、止められたくないからここに来たのにどこに行ってもあいつらばっかり。
自分に与えられた能力をますます恨む。
結局人の為にしか使えない。
自分の為には使えない。
これ程苦痛に思った事はない。
「仲間から離れたの。珍しいわね、仲間思いのあんたが離れるなんて」
「…まぁな。こいし居るか、ちょっと相談させて欲しい事があるんや」
「あの子なら今ルーミア?って人と遊んでるわ。私でもいいなら相談乗るわよ。あんたは家族みたいなものだし」
「うーん…それは嬉しいねんけどぉ…言ったら怒られる気がするんよ。それに能力関連もあるし」
悩ませながらもやんわり断る。
外の世界で覚えた事だ。
能力をどうしたら変えられるのか、自分の為に使えるのか聞きたかったし死にたい欲望を叶えるのにはどうしたらいいのかも知りたかった。
さとりはきっと俺の中を読んでいる筈。けど敢えて口に出さないのは彼女なりの優しさ何だろう。
久しぶりにここに帰ってきた。
大先生は昨日来たかの様な感覚なんやろうけどね。
妖怪より悪魔の寿命は少ない。
俺はもうそろそろ死期が近づいてる筈なのに体はだるくならない。
いつになったら死ねるのだろうか。