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【短編小説】死神と狼
ある森の奥深くに、臆病な死神が住んでいました。
顔を覆い隠すほど大きく、暗闇よりもさらに黒く、先はボロボロなマントを羽織り、
足はなくふわふわと浮いていて、体に肉や皮はなく、マントの下は骨だらけ。
その死神は優しく、森の生き物たちと仲良くしたいと思っていました。
しかし、生き物たちには死神の姿は見えないのです。
さらに、彼の意思とは関係なく彼に触れた者は、なぜかその場で死んでしまいます。
そのことを深く悲しんだ死神は、森の洞窟に閉じ篭もるようになってしまいました。
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ある日、死神は洞窟の外の大きな物音で身を覚ましました。
死神がそっと洞窟の外を覗くと、そこに一匹の大きな狼が倒れていました。
灰色の毛並みは艶やかで美しく、顔は整っていて、尻尾は大きくふわふわ。
その端麗な姿に、死神は目を奪われました。
しかし、狼には大きな傷があり、血がこぼれ落ちていました。
死神はなんとかしようとしましたが、触った瞬間にその狼は死んでしまいます。
慌てふためく死神の目の前に、長く太い棒が落ちてきました。
そこで死神は、その棒を手に取り、その先に布を取り付け、傷を拭いました。
狼は最初こそ怯えて威嚇しましたが、次第に落ち着き、体を死神に任せました。
死神は、不器用ながらも一生懸命に治療をしました。
そして、治療の甲斐あって、狼は助かったのです。
目の前で安心して眠っている狼を見て、死神は心が温かくなるのを感じました。
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狼には死神が見えていました。
死神が食糧を洞窟に持って帰った時、狼が起き上がって死神をしっかり見たのです。
それに気づいた時、死神は足もないのに飛び上がりました。
死神は、初めて自分を見つけてくれた生き物に出会い、とてもよろこびました。
狼もまた、自分を助けてくれた死神を深く愛しました。
死神と狼は、永く幸せな時を過ごしました。
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ある日の夜。死神が洞窟に帰ると、狼の様子が変でした。
低く呻いて、呼吸がうまくできていなかったのです。
死神はなんとかしようとしましたが、今回は何もできません。
死神は、ただ苦しむ狼を見守るほかありませんでした。
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とても長い時間が過ぎたように感じました。
狼は落ち着きましたが、とても弱っていて、今にも死んでしまいそうでした。
死神は考えました。
どうすれば狼を救えるか考えました。
しかし、自分は死神。寿命を与えることも、取引で寿命を延ばすこともできません。
死神はそれでも考えました。
その時、狼が小さく鳴きました。
狼の目線の先には、洞窟の入り口がありました。
死神は悟りました。この狼の命はもう長くないと。
死神は、狼をそっと板に寝かせ、それを引き、勇気を振り絞って洞窟から出ました。
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死神の下にある草花が少しずつ枯れていきます。
死神はこれが怖くて、これまで洞窟から出てくることができませんでした。
しかし、今はそんなことを言っていられませんでした。
狼の鼓動が、少しずつ弱まってきているのが、死神にはわかりました。
だからこそ必死に、死神は進み続けました。
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二人がたどり着いたのは、よく生き物たちが集まる泉でした。
今が夜だったからか、泉には静かな風が吹き流れるだけでした。
木と木の隙間から、いくつも月の光が漏れて、まるで道のようになっていました。
死神はそっと狼を寝かせ、ずっと見守りました。
すると、狼は死神の手に顔を寄せました。
死神は驚いて手を狼から離しました。
この手に触れれば、生き物は死んでしまう。それがわかっていたからです。
しかし、狼は死神の手を待つかのように、じっと死神を見つめました。
死神は迷いました。
ずっと悩みました。
鼓動が早まりました。
…そして、ついに覚悟を決めました。
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死神は、狼の顔に手を近づけました。
狼はその様子を、じっと見つめていました。
死神の手が震えて、骨でできた手からカタカタと音がしました。
それでも、やらなくちゃいけない。
死神は、今までの感謝と愛を込めて、そっと狼の頬を撫でました。
狼は優しく笑い、静かに目を閉じました。
そして、狼は光の道を昇って行きました。
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死神の洞窟には、今はもう誰もいません。
死神は、自分自身を受け入れることにしました。
狼の最期の笑顔を見て、そう思ったのです。
自分も、誰かを笑顔にすることができる。幸せにすることができる。
そう気づいたのです。
死神は、もう閉じ篭もることはないでしょう。
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--- 死神の下の花は枯れることなく、美しく咲き誇っていました。 ---
こんにちは、「読書が好き🍵」です。
久しぶりの短編小説だったので、かなり下手でしたね。
今回は珍しくセリフなしにしてみました。
アドバイス等があれば、いつでも教えてくださいね。
では、またどこかでお会いしましょう。