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“迷ゐ猫”達の人形劇団
ある日の夕方、武装探偵社にて。
治「外の郵便受けにこんなのが入って居たよ」
晶子「『人形劇団|迷猫座《めいびょうざ》、ヨコハマにて公演決定』・・・。そういえば、ここ最近そんな人形劇団が話題になってたね。確か“迷ゐ猫”、なんて呼ばれてたかな」
潤一郎「聞いたことありますよ。メンバーの名前は芸名で、本名を明かしてない・・・そのミステリアスさが妙に受けたんだとか」
独歩「劇団の統帥は男性で、他のメンバーは女性ばかりらしいな」
ナオミ「統帥さんはあまり表舞台に出ることはなかったけれど、つい先日亡くなったそうですわ」
乱歩「そんな劇団がこんな治安の悪い街でも公演かぁ。世も末だね」
諭吉「今はそんな話をする時ではない。仕事終わらんぞ」
社長の一声で全員が我に帰り、再びパソコンと向き合った。
賢治「猫ちゃん、すぐに見つかってよかったですね!」
鏡花「・・・よくあんなところにいたの見えたよね」
敦「昔から目はいいから・・・」
3人は猫探しの依頼を終え、帰るところだった。
その時、河川敷に人の姿が見えた。
敦「・・・あれって、人形劇?」
敦はそれが異様に気になった。引き寄せられるように河川敷に降り、その人達に声をかけていた。
敦「あの・・・っ!ここで、何やってるんですか?」
団長?「明日人形劇の公演があるので、練習をしてたんだよ」
敦「公演・・・この町でやるんですか?」
団員?「そうよ。そうじゃなかったらこの街に来てないでしょ」
団員らしき少女が少し強い口調で言い返した。
賢治「敦さん!」
鏡花「どうしたの、急に走り出して」
追いついてきた2人に訳を話し、謝った。
団長?「貴方達、仲いいんだね。よかったらリハーサルがてら、劇を見ていく?」
賢治「いいんですか⁉︎」
鏡花「でも、お金かかっちゃうんじゃ・・・」
団長?「お金はいらないよ。ただ、劇を改善したいからアドバイスをして欲しいんだ。思ったこと言ってくれていいから」
敦「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」
人形劇は素晴らしいものだった。動きやセリフ、一つ一つに魂がこもっているようだった。
それを伝えると団長は喜び、自分たちのことを教えてくれた。
この劇団は全員女性で、始祖である『統帥』は|川端康成《かわばたやすなり》という男性だったらしい。彼は1ヶ月前に病死し、団員であった現団長・|雷鳥《らいちょう》という女性が劇団を引き継いだ。そして紫・和泉の姉妹、清、栄が入団し、メンバーは5人になった。
現在もこの5人で各地をまわり、人形劇の公演を行なっているらしい。
雷鳥「・・・長々と話してしまったね。ありがとう、最後まで聞いてくれて」
敦「いえ!・・・あの、明日の公演・・・見に行ってもいいですか?」
敦は思わず尋ねた。それを聞いた雷鳥は、にっこり微笑んでくれた。