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私のことを救ったあの人を⑪
星
【1】いじめっ子たちが怯えて近づかなくなり、桜の学校生活には、驚くほどの平穏が戻ってきた。一ヶ月ぶりに受ける授業は少し難しかったけれど、隣のクラスの廊下を通るたび、朝日先輩が優しく手を振ってくれる。それだけで、桜の心はいつでも満開の桜のようにあたたかかった。「……よし、今日の学校は終わり!」放課後のチャイムが鳴ると同時に、桜は素早くカバンを肩にかけた。これからはただの「いじめられっ子」じゃない。朝日先輩と約束した、人を助ける『名探偵』としての活動が始まるのだ。校門の前で待っていると、少し足の痛みが引いた朝日先輩が、嬉しそうに駆け寄ってきた。「桜、お疲れ。体調はもう完全に大丈夫か?」「はい! 先輩、今日からいよいよ名探偵と助手の活動開始ですね!」「おう、任せろ。どんな依頼でもドンと来いだ!」二人は並んで、夕暮れに染まる通学路を歩き出した。【2】歩き始めてすぐ、桜の自慢の「耳」が、細い路地の奥から聞こえる奇妙な音を捉えた。コツ、コツ、コツ……。それは、誰かが焦って地面を叩いているような音。そして、「どうしよう、どこに落としちゃったんだろう……」という、泣き出しそうな小さな女の子の声だった。「……先輩、あっち!」桜は朝日先輩の服の裾をぐっと引っ張ると、迷わず細い路地裏へと走り出した。「おい、桜、急にどうしたんだ!?」朝日先輩も慌ててその後を追いかける。【3】薄暗い路地裏の隅で、小さな女の子が一人、地面にしゃがみ込んで半べそをかいていた。「どうしたの?」桜が優しくしゃがみ込んで目線を合わせると、女の子は涙目で訴えた。「お母さんからもらった、大事なクマのキーホルダーがなくなっちゃったの……。この近くで落としたと思うんだけど、暗くて見つからなくて……」あたりはすでに夕闇が広がり始めていて、地面の細かいものは見えにくくなっている。でも、今の桜には、心強い相棒がいる。「大丈夫、お姉ちゃんたちが絶対に見つけてあげる。……先輩、スマホのライトで足元を照らしてください!」「よし、任せろ!」朝日先輩がすぐにスマホを取り出し、暗い地面をパッと明るく照らし出した。【4】桜は静かに目を閉じ、耳に意識を集中させた。さっき女の子の泣き声が聞こえた位置と、風の音、そして自分が路地に入る直前に聞こえた「かすかな金属の音」の記憶を、頭の中で巻き戻していく。(さっき、自動販売機の裏のあたりで、カチャッと小さく何かが跳ねる音がした……!)「あそこです!」桜がパッと目を開けて指さした場所を、朝日先輩がライトで照らす。すると、自動販売機と壁の狭い隙間に、暗闇に紛れた小さなクマのキーホルダーが、きらりと光って落ちていた。「あった……! ありがとう、お姉ちゃん、お兄ちゃん!」女の子は満面の笑みでキーホルダーを抱きしめ、何度も頭を下げて元気に走っていった。それを見送った後、朝日先輩は心の底から感心したような顔で、桜の頭をぽんぽんと撫でた。「すごいじゃん、桜。本当に一瞬で見つけるなんて……本物の名探偵だな」「えへへ……。先輩がライトで照らしてくれたおかげです!」小さな、だけど確かな人助けの第一歩。みんなに笑われた夢が、今、目の前で確かに誰かを笑顔にしたのだ。嬉しさに胸を膨らませる二人。しかし、この微笑ましい事件は、これから二人が挑むことになる「大きな謎」の、ほんの始まりに過ぎなかった――。