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    第2話 アパート集合ね。
    
    
    
    …なんですかそれ?
「ま、いきなり言われてもわからないよな。今日の放課後は空いてるか?」
「あ、暇人。習い事してないから、門限も7時までだし、いつでも」
「じゃ、僕の家に来て。向かいのアパートの、306室」
向かいのアパート。いろは学園の近くに、ちょっと小洒落たアパートがある。そこに住んでいるのだろうか。
第一、なんで家に…いや、もうやめとこう。何も考えずに、家に行こう。
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帰宅した後、カバンをバッと投げ捨てて、自分のポシェットにスマホを入れて、「行ってきますっ」と家を出る。お母さんの小言は聞こえない(ふりをする)。
エレベーターを待つ時間も鬱陶しく、己の足腰で3階まで上がり、『文読』の表札と『306』を確認してから、インターホンを押す。明日足を筋肉痛で痛めようが、昨日の筋肉痛が今になってぶり返してこようがどうでもいい。
ただ、私は、
**「自分がやりたいことを突き進むんだーーっ!!」**
と叫ぶと、(うわあ)という心の声が聞こえてきそうな表情の文読さんがいた。
うわ…あ…うん。
「ま、取り敢えず入って」
…なんかすみません。
ドアを開けて上がらせてもらうと、殺風景な部屋がある。真っ白の床と壁と天井に、予めあったであろうライト、何もなさそうなキッチン。ただ買ってきたと思うのは、低めの四角いテーブルと座布団のみ。
テレビはない。でも、充電タップでスマホを充電している。
「どうした」
「いや…殺風景だなあって」
「そりゃそうだ。《《ここには住んでいないから》》」
「は?」
ここには住んでいない?じゃ、どこに住んでいるんだ。
実家が遠いとかならわかる。でも、全然使われていなさそうだ。玄関に砂は積もっていたが。
「ここから帰るんだ」
「…ちょっと待って、理解が追いつかない」
「話せば長くなるから、取り敢えず来て」
文読さんは充電コードをスマホから抜き取り、起動させた。
…スマホじゃないのかもしれない。
確かに、カタチはスマホだ。灰色の手帳型のスマホカバーをつけていて、形状は薄い長方形。画面らしきものだってある。
ただ、中身が違いすぎるのだ。アイコンは確かに並んでいるが、全て知らないもの。充電していたのに、充電マークすら見当たらない。メール、電話、インターネット、地図はある。だが、その他に違いすぎるアイコンがある。
水色がバックの、青い矢印マークのアイコン。
オレンジとピンクのグラデーションに、意味不明な文字?と、あ が矢印で繋がっているアイコン。
黒と紫を混ぜたような色のバックに、立体的な立方体のイラストのアイコン。
知らないアイコンがありすぎる。こんなアイコン、アプリストアでも見たことがない。改造?そんなわけがない。