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妹と姉
2026/03/14 妹と姉
「ミオちゃん。」
ユイカちゃんがわたしの名前を呼ぶ。でもわたしは答えない。彼女を無視して、通学路をずんずん歩く。
「ミオちゃんっ!」
泣きそうなユイカちゃんの声が狭い道に響いた。ああ、こう言うところが嫌なんだ。すぐ泣いて、わめいて、自己中なところ。もうユイカちゃんなんて置いて早く帰りたいけど、通学リュックが重くて走れない。
わたしはくるりと振り返り、少し離れたところを無駄な動きばかりの歩き方で歩いてるユイカちゃんに言う。「早く来て!」
彼女を待つこの時間が、わたしの人生で1番、ばかみたいだと思う。だけどわたしは、合わせなきゃいけない。だって、妹だから。
「ミオちゃんって、3年のユイカちゃんの妹なんでしょ?」
掃除の時間、音楽室で、クラスメイトに訊かれた。一瞬驚いた。次に嫌悪した。クラスメイトのその口調と表情には明らかにからかいが含まれていたことに、そして、学校でもわたしはユイカちゃんの妹でいないといけないことに。
顔を歪めながら言う。「なんで? 知らない。」
学校で、ユイカちゃんは有名人だ。もちろん良い意味じゃない。わたしはユイカちゃんに関して色々言われていることに薄々気づいていた。けれど、それが私たちの学年にまで広がっていることは知らなかった。
俯いて掃除に徹する。クラスメイトは続けた。
「ねー、ユイカちゃんってちょっと変なんでしょ。みんな、噂してるよ。」
自身の髪の毛の隙間から、クラスメイトの様子をうかがった。綺麗に三日月にように上がっている口角を見て、この悪意は世界一純粋なものだと思った。
「ミオちゃんもぼっちだから、似てるよね。」
心の底から嫌だと感じた。顔を俯かせてやめてよとつぶやくように言った。でもたぶん、伝わらなかった。
「ユイカちゃんって、学校の中でも迷子になるって聞いたけど、ほんと? ミオちゃんも迷子になったりするの? ねえねえ。」
やめて、と言った。「わたし、ユイカちゃんのこと、嫌いだから、やめてっ。」
音楽室にわたしの声が響いた。それで、言葉を失う。わたしの声がこんなに弱いことに。わたしは息を吸い込んで、だけど吐かないまま、音楽室の隅にまで移動した。隅に落ちてる埃やチリをホウキで掃いた。
掃除が終わって、教室に戻っている途中で、ユイカちゃんを見かけた。ゴミ箱を胸にしっかりと抱えて頼りなさげに立つユイカちゃん。思わず足を止める。きょろきょろと動いているその瞳にわたしの姿がうつったとき、彼女の口が安堵のためにゆがんだ。
「み、みおちゃん。」
こっちに駆け寄ってくる。ゴミが溢れないか眺めていると、ユイカちゃんは舌足らずに言った。
「あのね、あのね、ごみって、どこに捨てたらいいのお。」
息を吸い込んで、今度はちゃんと吐いて、わたしは肩から力を抜いた。「……1階。」ついてきて、と、一体何回言っただろう。
ゆっくり歩いた。ユイカちゃんがついてこられるくらいゆっくり。本当はさっさと行きたかった。本当は口頭で説明して、いちいち案内するなんてしたくなかった。本当はユイカちゃんにも、2年以上通っている学校のゴミ捨て場がどこかなんて、いい加減覚えて欲しかった。本当はユイカちゃんの妹なんて、したくなかった。階段を降りながらわたしは思う。ユイカちゃんがちゃんとついてこれてるか、転げそうではないか、時々確認しながら、絶望したくなる。
だけどわたしは、合わせなきゃいけない。だって、妹だから。わたしたちは姉妹だから。
ミオちゃんは可愛らしい顔、と言う設定だけどユイカちゃんはそんなこと一度も言われてない。
ミオとユイカは顔が似ていないと推測できる。
「友だち」よりユイカちゃんは母親に「父親と似ているからきらわれている」とのこと。
→「父親と似ているユイカちゃん」と似ていないミオちゃんは母親に疎まれていない可能性が高い。
完全に後付けの設定です。
まあ矛盾しててもパラレルワールド設定で突き通すけどねーーー🙂↕️💡