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箱入り姫と6人の騎士 13
赤都 乃愛羽
灰に舞う愛の証〜
病院の安置室。冷たい静寂の中で、ちぐの亡骸を囲む6人の騎士たちは、もはや涙すら枯れ果てていた。
「……火葬(かそう)にするよ」
ななもり。が、掠れた声で告げた。その言葉に、莉犬ところんが肩を震わせる。
「嫌だ……! 燃やしちゃったら、本当にちぐちゃんがいなくなっちゃう! 骨だけになっちゃうなんて嫌だよ!!」
「……分かってる。でも」
ななもり。は、ちぐの白磁のような頬を、壊れ物を扱うようにそっと撫でた。「ちぐは、自由になりたかったんだ。……俺たちの『執着』という名の檻から。ずっと閉じ込めて、心臓の音まで管理して……。その結果が、あの事故だろ?」
「……俺たちのせいで、死なせた」
さとみが拳を血が滲むまで握りしめる。ジェルも、虚空を見つめたまま動かない。
「……るぅと。お前はどうしたい?」
心臓を返してもらったはずのるぅとは、ちぐの冷たい胸に耳を当てていた。
トクン……とも言わない、静止した世界。
「……ちぐちゃんは、恋愛音痴のまま、僕たちの『重すぎる愛』から逃げたんですよ。……だったら、最期くらい、彼女の望む通りにしてあげたい。……自由な空へ、返してあげましょう」
数日後。火葬場の煙突から、一筋の白い煙が冬の空へ昇っていく。
「……綺麗だな、ちぐ」
ころんが空を見上げて呟く。
骨上げの儀式。かつて「国宝級」と讃えられた美貌も、今は真っ白な灰と骨だけになっていた。
「これ、みんなで分けよう」
ななもり。が取り出したのは、6つの小さなペンダント。
中には、ちぐの遺骨の一部が納められている。
「そばに置くことはもうできない。……でも、これでお前は、俺たちの体の一部として、一生一緒にいるんだ」
「……ちぐちゃん。聞こえますか?」
るぅとは、自分の左胸――ちぐが守ってくれた心臓の上に、そのペンダントを強く押し当てた。
「君は自由になった。……でも、僕たちの心臓が動く限り、君の記憶という名の檻からは、僕たちも一生逃げられません。……大好きですよ、ちぐちゃん」
恋愛音痴だった少女は、空へと消えた。
残された6人の騎士たちは、胸に刻まれた「消えない痛み」を鼓動に変えて、彼女を想い続ける。
それは、所有することさえ許されなかった、あまりにも切なく、残酷な純愛の終着点だった。
【完】
自分で書いて自分で泣いてました(T ^ T)