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処刑人に婚約を申し込む
「ロランス」
アメジストを思わせる透き通る紫が、彼女を真っ直ぐに見据えていた。
「白銀の冠こそ、君の黒髪に相応しい。そうだろう?」
彼女はロランツの言葉をただ静かに聞いていた。独立の対価として受け入れた婚姻。愛など無くとも、祖国の独立のためならば、それで良い。そう思っていたのに。
「ずっと君を想っていた。そう、一人の女性として」
ロランツは彼女の左手を取り、その薬指に指輪をつける。
「君を政治の駒として扱う人間を許すつもりはない。未来の皇后である以前に、君を愛しているのだから」
指輪に視線を落とし、再び顔を上げる。胸の奥が熱くなって、目を逸らしたくなった。