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6話「私がしたいこと」
影喰いが広場に迫る。
黒くうねる影の中で、低いうなり声が響く。
けれど、ミオの胸の中は、以前のような恐怖だけではなかった。
「……私が、やりたいこと……」
ミオは欠片を握りしめながら、心の中でつぶやいた。
それは、影喰いを倒すことでも、誰かに認められることでもなく――
「ただ……守りたい。私が、大切だと思うものを」
ポヨはぴょんと飛び、ミオの足元に体を寄せる。
ルナもミオの横に立ち、風の魔力をまとった。
「ミオ……その気持ち、すごくいいよ。心が強いってこういうことだ」
「ポヨッ!」
ポヨまで応援してくれる。
三人で、今ここに立っている意味を改めて感じる瞬間だった。
■影喰いとの対峙
影喰いが前に出るたびに、周囲の町の人たちが後ずさる。
恐怖に震える人々――けれど、ミオはもう逃げない。
「来なさい……!」
ミオの声に光が宿る。
欠片が温かく輝き、胸の光と共鳴している。
影喰いは、黒い腕を振り上げて襲いかかる。
「ルナ、ポヨ、行くよ!」
「はい!」
「ポヨッ!」
ルナが風の刃を影喰いに放ち、ポヨは素早く跳ねながらミオを守る。
ミオは光を欠片に集中させる。
光が影喰いを包み込み、影の姿が揺らぐ。
「これ……私の、力……?」
胸の奥で、小さな確信が芽生えた。
怖いけど、怖くても立ち向かう力――それは自分が決めた“したいこと”から生まれた。
■心の声と決意
戦いの最中、ミオの頭にさっきの記憶がよみがえる。
――小さな手。
――優しい声。
――“また会おうね”
あの人もきっと、今の自分を応援してくれている――そんな気がした。
「ありがとう……私、もう怖くない……!私がしたいことを、私が選ぶ!」
光がさらに強くなり、欠片が放つ輝きは町全体を包む。
影喰いはその光に耐えられず、うねるように姿を崩し、やがて闇の塊として消えていった。
町は静まり返った。
逃げ惑っていた人々も、安堵の表情を浮かべる。
■守るべきもの
「やった……」
ミオは胸の欠片を握りしめ、深呼吸をした。
ルナもポヨも笑顔でミオを見つめる。
「ミオ……すごい。ちゃんと自分の意思で戦ったんだね」
「ポヨッ!」
「私……やっぱり、ただ生きるだけじゃなくて、守りたいものを守りたい。怖くても、仲間と一緒なら前に進める」
ミオはゆっくり頷いた。
町の人たちの視線も、温かく優しい。
「私がしたいこと……それは、自分の大切なものを守ること。誰かを、そして自分をも、守ること」
胸の光はまだ微かに揺れている。
でも、恐怖ではなく、決意と希望に変わっていた。
■新たな旅のはじまり
「ミオ……次は欠片をもっと集めよう。君の記憶の真実も、世界の秘密も、きっと分かるから」
ルナが手を差し伸べる。
「ポヨッ!」
「うん……私、行くよ。みんなと一緒に」
ミオは深く息を吸い、町を見渡す。
アルデニア町の空は、まだ静かだけれど、確かに輝いている。
「よし……私の旅は、まだ始まったばかり!」
こうして、ミオは自分の意思で歩き出した。
怖くても、迷っても、守りたいものを胸に――。
次回第7話「ナゾの卵との出会い」
12月17日18時投稿!