名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
公開中
鋼鉄少女達
ハイリスクレッド
闘強少女道璃夢 13 集合編
ジャスト+愛
☆
憂鬱な梅雨も終わり初夏といえる季節だった。
宮城県仙台市の青葉城公園の近くにある、一文字モータースで二代目経営者、一文字 速人は平穏に自動車修理をしていた。
妹の結は、リビングで母親のルリ子と休養日の昼下がりのお喋りに花を咲かせていた。
一文字モータースの前に重厚なエンジン音の黒塗りの車が四台停車した。
車のドアの開く音に重なるように数人の足音が聞こえてくる。
「ごめんください」
上等なスーツを身に付けた男性が戸口から声をかけてくる。
修理中のエンジンルームから速人は顔を上げ戸口に目を向けた。
いらっしゃいませ。
と言いながら見たことあるような男性だなっと思った。
戸口に立つ男性と速人の視線が合う。
「一文字 速人さんですね、宮城県知事の伊達 ミキ男です」
ち、知事さんですか。
「はい、私が一文字 速人ですが」
「突然ですが、あなたと重要なお話をしたいと言う方をお連れしました」
はぁ、なんだろ。
「どちら様でしょうか」
スッ、と無駄な動きも無く女性が現れる。
でっぷりとした県知事の伊達の隣に立っているせいなのか否か、スリムでスタイリッシュさが際立っている。
両脇に体格の良い男達が立っている。
胸にSPのバッジが光っている。
「突然お邪魔して申し訳ありません。内閣総理大臣の鯉池 由梨子です」
はぁ、はぁー。
「総理大臣、ですか」
「はい」
ぅわー、マジか。
「い、一文字 速人でございます」
速人は、ギクシャクと頭を下げる。
突然、現れた内閣総理大臣の鯉池 由梨子は数カ月前に起った騒ぎでアイアンヒーローが活躍し仙台市を守った件を語り、実物を見たいと言った。
あぁ、はぁ、
とオドオドしながら速人は赤いラインでメイクアップした白い軽自動車のもとへと案内した。
あたふたとしながら、妹との結を呼びトランスフォームを実行し、アイアンスーツの装着を完了して見せた。
「実は、妹が装着しているので、アイアンレディと名づけてます」
速人が説明を終えると、 なるほど。と鯉池 由梨子が感心する。
「一文字さん、何の目的でアイアンレディを作られましたか」
鯉池が、改めて問いかける。
え、あぁ、と速人は言い淀みながらも言いきった。
「悪と、悪と戦うためです」
「ならば、我々と一緒に戦って頂けませんか」
「はぁ、我々とは」
「日本国、国家です」
えぇ、あぁ、
「私に何が出来るのでしょか」
「トランスフォーム・アイアンスーツを追加製造してください、国家が全面バックアップします」
ぅわー、「マジですか」
「マジです」
鯉池は、トランスフォームを解除して軽自動車から降りてきた結にも一緒に戦ってほしいと申し入れをした。
速人と結は、鯉池の申し入れを受け入れた。
その日から十日後、鯉池が発起した新チームへの招集状が届いた。
★
Japan
Ultimate
Self-defense
Team
Iron ladies
略称 JUST-I
ジャパン
アルティメット
セルフ-ディフェンス
チーム
アイアンレディース
略称 ジャスト+愛 (アイ)
からの招集状である。
そして、同じ招集状を受け取った者達がいた。
大澤 逸美
〈女子総合格闘技Japanチャンピオン〉
水部 梨七
〈龍水流柔術拳法直血伝承者〉
冴刀 哀梨
〈アンダーグラウンドヴァーリトゥードパーティ戦士〉
風吹 麗七
〈キメラ人間・レイナ・フブキ〉
風吹 純一郎 ふぶきじゅんいちろう 〈遺伝子人工融合世界的権威者〉
紅 雪李
〈総合格闘技コーチ〉
☆
速人と結は水道橋駅に降り立っていた。
「ねぇ、兄ちゃん何で東京ドームなのよ」
さぁ、と肩をすくめると速人と結は東京ドームの正面入口へ向かって歩き出した。
警備員が立っている。
速人と結は警備員に声をかけられ氏名を確認されると関係者以外立入禁止と書かれたドアへと案内された。
恐る恐るという感じで速人がドアを開けると濃紺のスーツを身に付けた男性が待っていた。
その男性の後を速人と結は着いてゆく。
男性はミーティングルームと書かれたドアをノックする。
ドアが開かれるとグレーのスーツを身に付けた女性が速人と結を室内へと招き入れた。
室内には円卓がある。
すでに数人の男女が席についている。
三つの空席があり速人と結が指示された席に腰を降ろすと再びドアが開き鯉池 由梨子が入って来た。
「皆さん、本日はご苦労様です。私がこのチームの最高責任者である、内閣総理大臣の鯉池 由梨子です」
そう挨拶すると最後の空席に腰を降ろした。
では、と声にした女性が立ち上がった。
先程、速人と結を招き入れた女性である。
グレーのスーツを身に付けているとは思えない艷やかな色気を漂わせている。
女性は挨拶がわりにとチームの説明を始めた。
Japan
Ultimate
Self-defense
Team
Iron ladies
略称 JUST-I
ジャパン
アルティメット
セルフ-ディフェンス
チーム
アイアンレディース
略称 ジャスト+アイ(愛)
私がこのアイアンレディース総長を仰せつかりました、木口 魔弓です。
現在、日本国は北は北方領土、南は尖閣諸島、さらに竹島と国土問題で睨み合っている諸国の脅威にさらされています。
それらは国際法にのっとり日本国公的機関の対応しています。
しかし、国内に新たな敵が出現しました。
悪の秘密結社・ビックサターン・クロスと称する組織です。
その悪の秘密結社の陰謀、野望を阻止する為に今、このジャスト+アイ(愛)が発足しました。
この説明にクエスチョンマークを頭の中に浮かべる何人かがいた。
木口 魔弓の右手が合図するとミーティングルームの壁の一面から大画面のスクリーンが表れ、VTRが映し出された。
『我々は、悪の秘密結社・ビックサターン・クロスである。
そして私が最高幹部のジェネラル・オーガである。
我々の目的は最凶改造人間による恐怖での全世界の支配である。
その足掛かりとしてまずは日本国を恐怖の支配下に治める』
はぁ、とさらにクエスチョンマークを頭の中に浮かべる。
鯉池が話し始める。
「詳細は後ほど、一見は百聞にですから、先ずは各人の紹介をしてください」
はい、と頷くと魔弓が紹介を始めた。
鯉池 由梨子 こいいけゆりこ
〈ジャスト+アイ(愛) 最高責任者、内閣総理大臣〉
木口 魔弓 きぐちまゆみ 〈ジャスト+アイ(愛) アイアンレディース総長〉
一文字 結
〈アイアンレディ初号機搭乗員〉
大澤 逸美
〈アイアンレディ搭乗員 女子総合格闘技Japanチャンピオン〉
水部 梨七
〈アイアンレディ搭乗員 龍水流柔術拳法直血伝承者〉
冴刀 哀梨
〈アイアンレディ搭乗員 アンダーグラウンドヴァーリトゥードパーティ戦士〉
風吹 麗七
〈アイアンレディ搭乗員 キメラ人間・レイナ・フブキ〉
一文字 速人
〈トランスフォーム・アイアンレディ開発者〉
風吹 純一郎 ふぶきじゅんいちろう 〈遺伝子人工融合世界的権威者 悪の秘密結社・ビックサターン・クロスを知る人物〉
紅 雪李
〈総合格闘技コーチ アイアンレディ搭乗員格闘技術コーチ〉
以上、他多数のサポートメンバーが現場におりますので皆さん、よろしくお願いいたします。
魔弓の言葉が終わると、
「では、皆さん移動しましょう」
言葉と同時に立ち上がった鯉池がドアへ向かって歩き出した。
☆
鯉池に続いて全員が東京ドームのグランドへ出た。
グランドの中央には赤いラインでメイクアップした白いK-CARが置かれている。
白いK-CARへ鯉池が近づく、続いてそれぞれがK-CARを囲む。
スリムなスーツ姿が凛とした鯉池 由梨子。
グレーのスーツで艷やかな色気を漂わせている木口 魔弓。
スリムフィットジーンズに有名スポーツブランドのTシャツの結。
ジーンズのショートパンツにハイカットスニーカーにゆったりしたTシャツの逸美。
黒いパンツスーツは梨七。
黒いワンピースに黒いハイヒールの哀梨。
紺色のブレザーに紺色のスカートにサーモンピンクのブラウス、都内有名私立高校の制服の麗七。
洗いざらしのブルージーンズに白いポロシャツの一文字 速人。
サマージャケットにチノパンツの風吹 純一郎。
ダメージジーンズに上半身にフィットしたTシャツの紅 雪李。
鯉池が速人に頷きかけ合図をする。
結と、速人は声をかける。
結が歩み出てK-CARの運転席へ乗り込みエンジンをかける。
いつもの手順で通話用にハンズフリーを装着しようとする結に速人が新たなインカムを手渡す。
「今日からこれだ、専用インカムと専用スマートフォンでオープン会話できる」
新たなインカムを装着した結が右手の親指を立てオッケーサインを出す。
速人が高らかに声を出す。
「トランスフォーム・アイアンレディ、ゴーチェンジ!」
結が、トランスフォームを開始する。
シュィーン、シュィーン、カチッ、カチッ。
トランスフォーム・アイアンスーツを装着した結が、アイアンレディの勇姿で立っている。
ぅわー、と誰ともなく声を出す。
「結、ダッシュ」
アイアンレディが走りだす。
あっという間にセンターバックスクリーンまで行くとバク転で元の位置まで戻って来る。
「ジャンプ」速人の声が響く。
グッと膝を曲げ真上に跳び上がる。
東京ドームの天井のスピーカーにタッチし宙返りしながら降りてくる。
着地時に両腕をY字にして決めポーズを作る。
また誰ともなく声を出す。
早っ、ってか凄っ。
満足気に鯉池が向き直り声をかけた。
「この初号機を改善進化させ、あと四機製造します。それを各位に搭乗員していただきます」
はぁ。マジか。
みたび誰ともなく発した声に、マジです。
と鯉池が答えた。
結が、トランスフォームを解除して戻って来る。
続いて風吹博士、お願いします。
と鯉池が促す。
はい。と風吹 純一郎が前に出る。
麗七、と娘を呼ぶ。
お見せして。と麗七に声をかける。
はい。と麗七は、一歩前に出ると両腕を胸の前で交差し、えぃ、と掛け声を出した。
両腕が左右に広げられ、腕の内側から体側へ翼が現れる。
バサッ、とひと振りし宙に舞い上がる。
バサッ、バサッ、と翼を振り自在に宙をを舞い、飛び回る。
信じられなーい、と声がもれる。
麗七は一旦、空中に停止すると、
フンッ、フンッ、と身体をうねらせる。
ハッァ、と気合と供にキメラ人間・レイナ・フブキへ変身する。
純一郎以外は全員が絶句している。
麗七が舞い降りてくる。
変身を解除する。
「これが動物の遺伝子を人工融合して誕生したキメラ人間です」
純一郎は悲しさと悔しさを滲ませた顔で続けた。
「ビックサターン・クロスは遺伝子人工融合のノウハウを利用して猛獣と凶悪犯の改造人間を作り出しているのです、そしてその改造人間を使って恐怖支配する計画です」
全員がシィんと静まり返っている。
「この悪の計画を阻止する対抗手段がアイアンレディなのです」
風吹博士の言葉が終り、さらなる静けさがそれぞれの頭の中のクエスチョンマークを消してゆく。
静けさを破り、鯉池が声を出す。
「皆さん、よろしくお願いいたします。なお、私は、これで失礼します」
魔弓が向き直り返事をする。
「はい、ご苦労様でした」
鯉池は、元来た通路へ消えて行く。
それを見届けると魔弓が残った者達に声をかける。
「これより、ジャスト+アイ(愛)本部施設へ案内します」
魔弓が通路へ向かい歩き出す。
後についてそれぞれが歩き出す。
ミーティングルームの前を通り過ぎ。
監督室の前を通り過ぎる。
通路の突き当りで魔弓が止まる。
行き止まりの壁に魔弓が左手の平を触れさせる。
指紋および手のひら認証が行われ壁の真ん中辺りに長方形の穴が現れる。 魔弓が覗き込む。
瞳認証と顔認証されると、シュルル、と壁が左へスライドし4メートル四方のスペースが現れる。
「エレベーターです、皆さん乗ってください」
魔弓の言葉にしたがい全員が乗り込むと、たった一つのボタンに魔弓の指がタッチする。
しばらくすると再びスライドし目の前に五角形のスペースが現れる。
「え、どうなったの」
結が思わず声を出す。
「現在、東京ドーム地下250メートルです」
魔弓が答える。
「マジで」 逸美がつぶやく。
魔弓が逸美を睨む。
逸美が、ペロリと舌を出しながら肩をすくめる。
五角形のスペースの中央に魔弓は立つと説明を始めた。
前方に四つの通路が有る。
向かって右から、
一番通路、アイアンレディ開発室、
二番通路、遺伝子人工融合研究室、
三番通路、各人の宿泊ルーム、
四番通路、搭乗員トレーニングジム。
「以上です、各人の宿泊ルームに、ジャスト+愛の制服が用意されています。
制服着用後、一文字 速人さんは開発室へ、風吹博士は研究室へ、搭乗員五名と紅 雪李コーチはトレーニングジムへ移動してください。
集合は60分後です、解散」
はい。了解。
とそれぞれに返事をし宿泊ルームへ向かい歩き始めた。
☆
ジャスト+愛でのトレーニングも三日目になっていた。
格闘技未経験者の一文字 結には過酷なメニューであったが持ち前の運動神経で何とか他の四人についていっていた。
三日目のトレーニングのラストに五人は、五角形になりストレッチしている。
紅 雪李が、水部 梨七に声をかける。
「幻とか伝説って言われていたけど、見事だね、龍水流」
梨七は、サッと正座になると雪李に向かい頭を下げる。
「ありがとうございます」
礼をすると梨七はストレッチに戻った。
「コーチ、知ってるんですか、梨七の格闘技」
逸美がストレッチしながら気易く問いかける。
「武道ってか、武術だな、本物は初めて見せてもらったけどね」
雪李が答えた。
へぇー。と息を合わせる。
すると続けて、哀梨が口をひらいた。
「気を悪くしないでもらいたいんだけど、麗七の身体ってさ、変身してない時はどうなの」
他の三人も興味を示す顔になる。
「はい」っと麗七は返事をすると立ち上がった。
「哀梨さん、私の身体をどこでもいいので殴ってみてください」
えっ、哀梨が驚く。
「いや、いや、言葉でいいよ」
「いえ、一見は百聞にですから」
そうなの、と哀梨は他の三人を見る。
やはりみな興味を示す顔になっている。
ならば、と哀梨は立ち上がり麗七の前に立ち、右拳を右脇に引き付け構える。
麗七は棒立ちのまま「どうぞ」と言う。
ハッ、気合を入れ右の正拳突きをはなち右拳が麗七の腹部に当たる。
バッチン、痛っ。
哀梨が右拳を抱えて痛がっている。
麗七は、ニコッと微笑む。
「私の身体は、隼とバッファローの遺伝子キメラ融合で出来ています。ですから身体はバッファローの硬さなんです」
「マジで、無敵じゃないの」
結が声を上げる。
「いえ、所詮は生身と同じです、鋭い牙や爪を持つ猛獣に敵いませんし、刃物や銃弾にも敵いません、ですからアイアンスーツを装着させていただく事にしまった」
「なるほどね」
哀梨が右拳をぶらぶらと振りながら納得する。
ピロリロリン、ピロリロリン。
とスマートフォンの着信音がなりひびいた。
ジャスト+愛、専用特殊スマートフォンがそれぞれに貸与されている。
有事発生のアラート回線でスクランブルが各人に如何なる場合、場所でも知らされるようにだ。
もちろん通常の通話、メール、インターネットにも使用できる。
アイアンスーツを装着しアイアンレディ搭乗時にはお互いのオープン会話、総長からの指令をオープン受信もできる。
雪李がスマートフォンを取り耳に当てる。
あぁ、終わってる。
うん、わかった。
じゃ。
通話の受け答えの気易さに五人の視線が雪李に集中する。
「コーチ、誰から」 逸美が問いかける。
「ん、魔弓だ。30分後にグランドに集合だってよ」
「魔弓って」 五人の声が揃う。
「馴れ馴れしくないですか、呼び捨ては」 哀梨が尋ねる。
「なんでだ」
「いえ、総長は上司ですし」
「そう言われるとそうだな」
「まさか、特別な関係があったりして」
「バァーロ、魔弓は学生時代からの仲間だ」
「えぇー」 再び五人の声が揃う。
「怪しいー、サツキさんに報告しなきゃ」 逸美が言う。
誰、誰。と四人がざわめく。
「雪李コーチの彼女」
逸美が四人に向かって言う。
「ちげぇーよ、元カノだ」
「へぇ、元カノと一緒に暮らしますかねー、咲桜から聞いてるよ」
逸美が横目で雪李を睨みながら言う。
紫 咲桜(むらさき さくら)
紅 雪李がMMAをコーチングしている女子格闘技選手で、逸美とは LINE 仲間なのである。
おかげで雪李に関するの情報提供元となっている。
キャー。と四人が歓声を上げる。
「うっせぇ、さっさとシャワーしてグランド集合だ」
雪李は無理やり話しを終わらせシャワー室へ向かった。
☆
木口 魔弓(きぐちまゆみ)
JUSTーI(愛)
アイアンレディース総長。
そして、内閣総理大臣 鯉池 由梨子の特殊任務秘書官である。
木口 魔弓と紅 雪李は同じ大学の同期生であり格闘技サークルの仲間であった。
魔弓は、関西エリアにある、KG大学の政治学部に入学した。
同じ年、紅 雪李も、KG大学の文学部に入学した。
学部の違いから入学時から互いを知っていたわけではなく、せいぜい授業のための教室移動の際にすれ違うていどであった。
しかし、背丈、172センチ、80センチ、58センチ、83センチに股下、85センチという魔弓の際立つスタイリッシュな容姿は目立っていたので雪李を始めとする男子達の視線を惹き付けていた。
そんなすれ違いが2、3回あり、4回目のすれ違いの時、魔弓が足を止めウルフボブの髪をふわりと揺らし唐突に雪李に声をかけてきた。
「ねぇ、あなたって、わたしと同じ血の匂いね」
その言葉と同じ感覚を雪李も持っていた。
雪李は立ち止まり静かに魔弓を見つめた。
しばらく雪李と見つめあった魔弓は「じゃまた」の言葉を残して立ち去った。
数日後、雪李は格闘技サークルの新入生見学会に足を運んだ。
その見学会に魔弓も参加していた。
魔弓と雪李はそのまま格闘技サークルに入会した。
魔弓の格闘技のバックボーンは、キックボクシングであった。
スタイリッシュなボディそのままにクールでセクシーなファイテングポーズから繰り出されるパンチ、キックは魅とれるばかりであった。
特に、ハイキックの瞬発力は抜群で、スパーリング相手をした者達はその一撃でKOされていた。
雪李の格闘技のバックボーンは、武術である。
空手、拳法、柔術、合気道等の間合いを征する術を体得し、見切る、交わす、往なす、捌く、触れさせず当てる、打つ、が真骨頂である。
そのテクニックは、後のファントムの異名となってゆく。
雪李も魔弓との初めてのスパーリングの時には魔弓のハイキックを完全には見切れず間一髪ブロックで凌いだのである。
当然、ハイキックをブロックされ凌がれた魔弓は負けず嫌いな性格MAX状態になる。
二人のスパーリングは日々、幾度となく行われた。
互いに切磋琢磨し、リスペクトしあい、次第に二人で過ごす時間が増えていった。
言葉を交わし合う時間。
技術を交わし合う時間。
互いの身体を労り、癒し合う時間。
互いの心を労り、癒し合う時間。
唇を交わし、指先から全ての肌を交え、互いを求め合い、互いの求めを交わし合う時間。
そんな時間を過ごし合っていても互いに、彼氏だとか、彼女だとか、恋人同士だとかと言う感情にはならなかった。
『同じ血の匂い…』がそうさせていたのかもしれない。
魔弓は、大学を卒業すると、東京へと暮らしを移した。
そして、政治の世界へと進み、当時、防衛大臣であった鯉池 由梨子に師事し秘書官として今に至っている。
10年振りに開催された、格闘技ビッグイベント・夏の陣での、紅 雪李、ベニ!ユキーデ!の活躍を目にした魔弓から、ジャスト+愛の格闘技術コーチにとたっての願いだと口説かれた。
そんな仲の魔弓からの口説きを無下に断る事も出来ず雪李は、コーチを引き受けたのである。
☆
30分後、結、逸美、梨七、哀梨、麗七がグランドに集合した。
グランドの中央に五台のK-CARが並べられている。
五台のK-CARと並びガンメタのワンボックスカーが一台止められている。
魔弓、一文字、風吹博士、雪李がワンボックスカーの前に並んでいる。
「皆さん、お待たせしました」
一文字 速人が一歩踏み出し五人に向かい声をかけた。
おー、と声が上がる。
「各人、担当のK-CARへ搭乗してください」
はい。返事と供に五人が駆けだす。
K-CARの白いボディにはそれぞれのイメージカラーがメイクアップさせている。
紫色のラインでメイクアップされたK-CARへ逸美が。
オレンジ色のラインでメイクアップされたK-CARへ哀梨が。
臙脂色のラインでメイクアップされたK-CARへ梨七が。
黒色のラインでメイクアップされたK-CARへ麗七が。
赤色のラインでメイクアップされたK-CARへ結が。
それぞれに搭乗する。
スマートフォンをオープン会話設定にし制服の左胸の少し上のポケットにセットする。
「皆さんのボディサイズと運動能力を有効に発揮出来るようになっています」
一文字が解説する。
「もちろん初号機もグレードアップさせてある」
と妹の結に速人は言った。
「エンジン始動」
「はい」
と揃った返事が返ってくる。
五台のK-CARのエキゾノートが響く。
「トランスフォーム開始」
「はい」
手順はすでにレクチャー済である。
ステアリングの左斜め下のレバーを引く。
シューウン、シューウン、シューウン、シューウン、シューウン。
五機のアイアンレディが立ち並ぶ。
「まずは、歩行から」
「はい」
ズザッ、ズザッ、と五機がグランドのバックスクリーンへ向かって歩き出す。
はじめの一歩、二歩、三歩はぎこちながったが歩数が増すと自然にスムーズになってゆく。
バックスクリーン前まで歩くと揃って振り返る。
「次は、ダッシュ」
「はい」
バックスクリーンからバックネット方向に向けて五機が駆けだす。
一歩、二歩で高速ダッシュになる。
バックネット前まで揃って止まり、振り返る。
「順番にジャンプしてください」
「はい」
先ずは、結が軽く屈伸するように膝を曲げ伸ばし手本を見せるようにジャンプする。
逸美がジャンプする。
梨七がジャンプする。
哀梨がジャンプする。
麗七に向けて風吹博士が声をかけた。
「麗七、翼を広げているイメージを持ちなさい、宙を舞うイメージを持ちなさい」
「はい、わかりました」
返事をすると麗七がジャンプし両腕を左右に広げるとアイアンレディが宙を舞った。
右へ左へ、自在に宙を舞う。
凄え。と声が上がる。
麗七は急降下する。
地面に激突するのかと思える程スレスレで、フワッと止まり優雅に着地した。
「素晴らしい」
一文字が感嘆の声を出す。
「よぉーし、シャドーで動きを確かめろ」
雪李が指示する。
「はい」
と返事を揃えると、それぞれがファイティングポーズを取り構えた。
ほぼ同時に、 ビビッ、ビビッ、ビビッとスマートフォンが有事発生のアラートでスクランブルを知らせた。
『至急、至急、都内、渋谷駅前にて未確認生体物が暴れ、死傷者が出ている。急行願う』
『了解。ジャスト+愛、出動します』
魔弓が応える。
「K-CARへ戻し渋谷駅前へ行くわよ。ジャスト+愛の初陣よ」
高らかに魔弓が声を上げた。
「了解」返事と供に五機のアイアンレディが、五台のK-CARへ戻る。
「総長、麗七は車の運転できません」
結が声を出す。
「わかってるわ」
と魔弓は言い放つと麗七のK-CARへ駆け寄る。
「私が運転するわ、麗七は助手席へ」
「はい、ありがとうございます」
魔弓が運転席へ、麗七は助手席へ納まった。
ガンメタのワンボックスカーに、一文字、風吹博士と雪李が乗り込む。
ワンボックスカーが走り出す。
続いて、魔弓の運転するK-CARが、結の、逸美の、哀梨の、梨七のK-CARが走り出す。
東京ドームのグランド、外野左中間のフエンスがスライドして開きトンネルが現れる。
吸い込まれたワンボックスカーとK-CARはLEDで照らされているトンネル内をフルスピードで駆け抜ける。
パッと明るく視界が開放され屋外へと出た。
外部からはまるで東京ドーム・シティ・ホテルの地下駐車場から出車してきた様に見えていた。
☆
猛スピードでガンメタのワンボックスカーが前をゆく車を追い越してゆく。
五台のK-CARがピタリと離れず着いてゆく。
渋谷駅前よりもワンブロック手前のビル影にワンボックスカーとK-CARが停車する。
黒色のラインでメイクアップされたK-CARから、魔弓が飛び出し、ワンボックスカーへと乗り移る。
「アイアンレディースは待機。指令CARは現場の状況確認に向かう」
「ラジャー」五人のが揃い返事をする。
麗七が助手席から運転席へ移動する。
指令CARであるワンボックスカーがゆっくりと走り出し渋谷駅前へと向かう。
泣き叫ぶ声と悲鳴が重なって辺りは恐怖でパニックになっていた。
渋谷駅前からハチ公像の前迄の一帯の地面が赤黒く染まっているように見える。
騒ぎを聞きつけた近くの交番から制服警官が二人で駆けて行く。
ワンボックスカーが停車し状況確認は始める。
ハチ公像の前で二人の制服警官が足をとめた。
ズリッズリと止めた足が後退りする。
ハチ公像の影からアイヴォリー色の巨体の者が現れる。
アイヴォリー色の巨体の者が二人の制服警官に向かって歩き出す。
二人の制服警官は何かを叫びながら、拳銃を抜き構えた。
言葉を理解しないのか無視しているのか構わずアイヴォリー色の巨体の者は足を進めてゆく。
一人の警官が叫びながら拳銃を発砲する。
パン、パン。
カチン、カチン。
拳銃の弾は弾き返される。
続けて、もぅ一人の警官が発砲する。
パン、パン。
カチン、カチン。
弾は弾かれ方向を変えて飛んでいく。
うわー、と叫び声がした。
弾かれ方向を変えた流れ弾が周囲にいた市民に被弾した。
「ダメだ。拳銃では無理だ、やはりヤツはビッグサターン・クロスの改造人間だ」
風吹博士が苦々しく言う。
風吹博士に視線を向け頷いた魔弓が指令を出す。
「トランスフォーム開始。アイアンレディース出動」
「ラジャー」
返事と供に五台のK-CARがトランスフォームしアイアンレディに変わる。
「行きまーす」一声を掛け、結がダッシュ、ホップ、ステップ、ジャンプしビル群を飛び越えてゆく。
続けて、逸美、哀梨、梨七がビル群を飛び越える。
麗七はフワッと舞い上がりビル群を飛び越える。
ザンッ、ザンッ、ザンッ、ザンッ、ザンッ、と突然現れた五機のアイアンレディがアイヴォリー色の巨体の者を取り囲んだ。
アイヴォリー色の巨体の者は呆気に取られ動きを止めた。
拳銃を構えていた二人の警官も呆気に取られ動きを止めた。
アイヴォリー色の巨体の者が我に返り巨体を揺さぶり五機のアイアンレディを順番に凝視する。
ガッガッ、と足音をさせ紫色でメイクアップされたアイアンレディ、逸美が歩み出る。
ブゥン、と右脚を唸らせハイキックをアイヴォリー色の巨体の者の左側頭部へ放つ。
アイヴォリー色の巨体の者は僅かに頭部を左へ方向ける。
ガゴン、とハイキックがヒットする。
しかし、アイヴォリー色の巨体の者はスッと頭部を元へ戻し平然としている。
続けて左のミドル、右のローと矢継ぎ早に逸美は蹴りを入れる。
それでもアイヴォリー色の巨体の者はビクともしない。
どぅなってるの。と逸美が後退る。
「犀(サイ)だ、ヤツは、白犀(シロサイ)の遺伝子人工融合された最凶改造人間だ」
風吹博士の声がアイアンレディ達の耳に聞こえてくる。
「シロサイの皮膚は鎧の様に硬い、ライフル弾でも弾き返される」
「じゃどうしたらいいの」
風吹博士の声に麗七が答える。
んー、と風吹博士が考え込んだ。
すると雪李が風吹博士に問いかける。
「関節部は、どうでしょうか、鎧と鎧の間に隙間があります」
「シロサイの力に負けなければ有効かもしれません、特に喉は弱点かもしれません」
よし。と雪李は頷くとアイアンレディ達にアドバイスを発した。
「みんな、関節だ、関節を狙っての打撃と関節技だ」
「ラジャー」
五人の返事が揃って返ってくる。
オレンジ色にメイクアップされたアイアンレディが、哀梨が、シロサイ改造人間に向かって駆けだす。
シロサイ改造人間の目前で滑り込みスライディングで足元を抜け背後に回り込み、スクッと立ち上がる。
シロサイ改造人間の右膝裏の関節にローキックを放ち始める。
赤色にメイクアップされたアイアンレディが、結が、ジャンプし錐揉み回転しシロサイ改造人間を飛び越えて背後に着地する。
シロサイ改造人間の左膝裏の関節に覚えたてのローキックを放ち始める。
同時に両膝関節にローキックを雨霰と受けだしたシロサイ改造人間が揺らぎ出す。
黒色にメイクアップされたアイアンレディが、麗七が、駆けだしシロサイ改造人間の正面に立つと、フワッと身体を浮かし両腕を羽ばたかせた。
猛スピードで麗七が飛行する。
シロサイ改造人間の手前で勢いよく反転し両足を揃え胸元へドロップキックをみまう。
ローキックでの揺らぎとドロップキックの衝撃でシロサイ改造人間は二、三歩後退ると、ドスンと尻餅をつく。
臙脂色でメイクアップされたアイアンレディが、梨七が、素早くシロサイ改造人間の背後につく。
梨七は自分の左腕をシロサイ改造人間の左腕に絡めチキンウィングに固める。
続けて右腕をシロサイ改造人間の顔面に回しフェスロックに固める。
梨七がチキンウィングとフェスロックに固めた自分の両腕を絞る。
ウグゥ、とシロサイ改造人間の顎が若干浮く。
さらに梨七が絞る。
ウグゥ、とシロサイ改造人間の顎がさらに浮く。
「逸美、蹴上げだ、顎を蹴上げるんだ」
雪李がアドバイスを飛ばす。
しゃあー。
と気合を入れ、逸美が駆け寄り右脚を振り上げた。
トーキックでシロサイ改造人間の顎をあげさせる。
☆
逸美の蹴上げで完全に仰け反ったタイミングで梨七の左手と右手が絡み合いロックされチキンウィング・ウィズ・フェスロックが極まる。
シロサイ改造人間の喉部が無防備にあらわになる。
すかさず、哀梨が身体を捻りスピンキックで左足の裏をシロサイ改造人間の喉に蹴り込む。
結が左足をローキックの要領で回し蹴りをシロサイ改造人間の喉へ蹴り込む。
ゴボッ、と喉を鳴らし頚椎が損傷させるとシロサイ改造人間の身体からパワーが無くなり項垂れた。
梨七が残心の体勢から極めを解く。
シロサイ改造人間の身体がその場に崩落ちる。
「シロサイ改造人間が動かなくなりました」
麗七が魔弓へ報告した。
「研究素材として捕獲しましょう」
風吹博士が魔弓に提案した。
はい。と魔弓は返事をすると支持を出した。
「シロサイ改造人間、捕獲」
するとどこに待機していたのか、ガンメタのコンテナ車が現れた。
コンテナ車の後部扉が自動的に開かれる。
麗七と逸美がシロサイ改造人間を持ち上げコンテナ車へ積み込むと瞬く間に走り去っていた。
「アイアンレディース、撤収」
魔弓が指令を出す。
「ラジャー」
声を揃えて五機のアイアンレディが駆けだす。
ダッシュ、ホップ、ステップ、ジャンプするとビル群を飛び越えて姿を消した。
ビル影でトランスフォームを解除したK-CARに雪李が駆け寄り麗七のK-CARの運転席へ乗り込む。
麗七は助手席に納まり頭を下げた。
「雪李コーチ、ありがとうございます」
雪李は右手の親指を立てて、お疲れと言いながらステアリングを握った。
「ジャスト+愛、帰還せよ」
魔弓の指令が出る。
ラジャー。
の声と供に五台のK-CARがガンメタのワンボックスカーに続いて走り出した。
その日の夜、内閣総理大臣、鯉池 由梨子による会見が開かれた。
その場で、悪の秘密結社・ビッグサターン・クロスなるテロ組織が世界支配を目論み、日本国が最初の標的になっている事を明らかにした。
そして、それに対抗するため、ジャスト+愛、なるチームを発足させたと発表した。
ジャスト+愛、についての詳細は秘密保護法の下でも最高秘密となると説明したのみで終えた。
ジャパン
アルティメット
セルフデフェンス
チーム
アイアンレディース
略称 ジャスト+アイ(愛)と、悪の秘密結社・ビッグサターン・クロスの戦いは始まったばかりである。
終り。
過去作ストリーからの登場者
『鋼鉄少女』
一文字 速人
一文字 結
『打撃少女』
大澤 逸美
『警備少女』
水部 梨七
『戦士少女』
冴刀 哀梨
『変身少女』
風吹 麗七
風吹 純一郎
『 Phantom・!! 』
紅 雪李
以上。