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#1 彼女と彼の恋の行方 ‐ 彼女編 ‐
リクエストいただきました!
テーマは『失恋』。
書いていこうと思います!
これは、魔法書の中身という物語? の一つ。
あの、角川つばさ文庫の「世にも奇妙な商品カタログ」のような感じで進んでいくことを認知していてください。
あ、知ってますか? 知らなかったらごめんなさい。
あたしは魔女の|憂劣《うれつ》。
このあたしがいる世界、〈|法魔術界《ほうまじゅつかい》〉(略して|術界《じゅつかい》)では、魔女がたくさんいるの。魔法が使えることが当たり前の世界だから、魔法が使えない人間はあなたたちで言う奴隷? のように扱われているわ。
でも、あたしは知っているの。
人間が、あたしたち魔女よりもどんなに面白いかをね。
じゃあ、早速この魔法書で人間界を覗いてみましょうか。
「さて、今日はどんな面白い話があるのでしょうか……」
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私はあまり可愛くないと思っている。
目は少し離れているし、女優の|橋本華奈《はしもとかな》のように顔が小さくも目が大きくもない。
そんな私なんだけど、実はこのクラスの人の中に好きな人がいる。それは、偶然隣の席になってしまった|鷹那朋久《たかなともひさ》くん。顔は、山崎健太みたいにはカッコよくはないけど、きれいに整っている。朋久くんは、私が失敗したときはフォローしてくれた、優しいひとだと思っている。
朋久くんはクラスの人気者。優しいから。私にも、みんなにも。朋久君はみんなに平等にやさしさを分け与える人。だから、私が告白しても、たぶん付き合ってくれないだろう。
私は、授業ではよく寝る。だって、つまらないもん。特に社会の先生は眠たい声にスローテンポで進むおじいちゃん先生だから、余計に眠くなる。時々おこしに来るけど、かまわずに寝る。だからか、通知表は1だ。ほかの教科も良くて3が2つくらいあるかないかくらい。成績は悪い。
それに比べて、朋久君は授業中は寝ることは一切ないし、挙手もして、成績はほぼオール5だ。天才といってもいい。こんな底辺の私と天才の朋久くんとじゃ、釣り合わない。だから、私に振り向いてくれることはないんだと思う。
私が唯一得意な教科の体育の授業の時間。私たちのクラスはリレーの練習をしていた。私は、次の人にバトンを渡そうとした瞬間に転んでしまった。とっても痛くて、泣いてしまいそうだったけど、私はもう高校生。これくらい耐えなくちゃ。
でも、私が泣きそうになったのは、それだけじゃない。私がバトンを渡す予定だった人が、あの朋久くんだったのだ。好きな人の前でこんなにずっこけて、本当に恥ずかしくって、泣きそうになった。一瞬感じた痛みさえ消し飛ばしてしまったくらいに。
クラスの男子は、可愛くもない私が転んだのを見てからかっていた。私は、それでもっと泣きそうになった。そんな中、朋久君は「大丈夫?」と言ってくれた。それが嬉しくて、少しだけ涙が出たのは、内緒にしておく。
でも、私にこんなにも優しくする理由を知ってしまった。優しいと思っていた朋久君の本性。
私が教室に忘れ物をして、取りに行った時、たまたま朋久くんが教室にいたの。私は、今までやさしくしてくれたことの感謝を口にしようとした。
「あ、あのっ――」
「なに? 俺になんか用?」
「えっと……、あの、わっ、私――」
「え、聞こえない。俺に話すならもっとでかい声で話しなよ。聞こえねぇ。ていうか、あんたさぁ、めっちゃキョドってんのマジキモイ。顔も大して可愛くもないのに、なにぶりぶりぶりっこしてんのってw」
笑われた。あのやさしい朋久くんにキモイって言われた。本当は、私のことを、そう思っていたわけ?
ひどい。
「普段からやさしく接してるのも、俺の印象アップのためだから」
そ、そんな。私は、朋久くんに利用されていたってこと!?
信じられない。
「それで、用事って何?」
「……あのさ、私が失敗したときにフォローしてくれたじゃん。あんたが。だからさ、優しいあんたのことが好きだなって思ったんだけど、こんなに性格が悪いなんて思わなかった。どうせ、私と付き合うわけないから、告白もしない。あんたにはもう用ないから」
きっぱりと言ってやった。
これで、私の初恋は終わった。
やっぱり、初恋は実らないっていうことも、本当だったんだね。
もっといい男子を捕まえてやるんだから。
それでも、本当に好きだったから。好きなのに私が振っちゃったから。
私の目には自然と涙が流れていた。
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「あらら。優しいと思ってた人が、実はこんなにも性格が悪かったなんて」
術界では、性格が悪い人はそれを隠そうとはしないわ。やっぱり、人間って不思議ね。
でも、あの男の子にも何か事情があるみたい。
さて、次のページをめくりましょうか。
……何かが、わかるかもしれないわ。
どうでしたでしょうか?
ちゃんと失恋でしたか?
なんか、思っていたのと違う気がするな……。
それは、気にしないことにしよう。
これの ‐ 彼編 ‐ もあるので、読んでくださいね!