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もう1人の自分〜第2話〜
Sが現れてから1週間が経った。
夜、寝ようと思っても寝れなかった。
なぜかはわからない。目を瞑っても眠りに入ることはできなかったのだった。
「寝れないんだったら本読んだら?」
いつの間にかSが部屋の椅子に座っていた。
「うーん。でもそういう気分でもないんだよね。」
「まあ、そういうこともあるよな」
Sはすみれに近寄った。
「未だに俺の正体がわかってないんだろ。」
「そうだよ、だっておかしいじゃん。私と全く同じ見た目なのに、声は男性だし、考えていることも違う。1週間前まではあなたが出てきたことは一度もなかった。でもなんで急に出てきたの?なんでこのタイミングなの?なんで現れたり消えたりするの?なんで私だけが見えているの?全ておかしいじゃない。」
すみれは質問を並べ、自分で混乱していた。
「わからなくていいよ。わかる必要なんてない。ただ、俺の存在を受け入れるだけでいいんだよ。」
すみれは呆然とSを見つめることしかできなかった。Sは何者なのか。それはSにしかわからないのだから。
「S・・私、Sのことを信用していいかわからない。」
「俺のことを信用しないってことは、すみれがすみれ自身のことを信用しないってことだよ。」
「そっか。」
すみれとSに沈黙が生まれた。何かを真剣に考えているすみれをSは優しい目線で見守っていた。
「考えすぎないで。その方が楽だよ。」
「え?」
「確かに信じることは難しい。だけど、信じれたら精神的に楽になるはず。俺が保証する。俺がお前を助けるから。」
すみれはSの目を見つめた。こんなことをSがいうなんて。
Sはきっと優しい。信頼できる存在のはず。
「ほら、そろそろ寝たほうがいいよ。」
そういってSはすみれの手を握って消えていった。
消えると同時にすみれは眠りについていた。
アラームのスヌーズが何回なったことか。
Sの声が聞こえる。
「そろそろ起きたほうがいいぞ。」
そんなことはわかっている。けど動きたくても起きれない。目が開かない。もう少し、布団の中にいたい。
すみれは、Sに対抗するかのように顔まで布団を持ち上げた。
「全く。あと5分以内に起きないと本当にまずいぞ。頑張って布団から出て、顔を洗って目を覚ましなよ。」
渋々すみれは布団から出て洗面台に向かった。
生温かい水が顔を覆う。
タオルで顔を拭くとベッドに戻ろうなんていう気持ちは無くなっていた。
「ふう。」
「目、覚めたか?」
「うん。ありがとう。楽になったよ。」
「よかった」
すみれが着替えようと思ったときにはSは消えていた。
まるで、Sは親友、いや親のような存在だ。
なんでSは突如として消えてしまうのか・・
すみれにもわからなかったが、今となってはすみれにとって心の拠り所になっていた。