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Episode【00】 入団式
地球への侵攻が始まってから、5年。
地球最後の国では、人類を守るため、また新たな者達が立ち上がろうとしていた。
「総員、起立せよ!」
指揮官の合図と共に、新入団員約370名が一斉に立ち上がる。張り詰めた空気の中、代表の団員が任命証書を丁寧な作法で受け取り、宣誓の言葉を述べ、拍手を浴びながら壇上を降りる。式が進められ、「各隊長からの言葉」と響いた途端、空気が揺らいだ。全員の視線がステージに集中する。厚い戦闘用靴を響かせながら現れたのは、戦闘部隊、司令部隊、偵察部隊のそれぞれの隊長だった。3人は横一列に並びステージの中心で足を止める。白髪の女が一歩前に出た。
「司令部隊隊長、レイチェル・フェイシアだ。君たちの入団を歓迎する。最近は敵の侵攻が活発になっているが、今年は優秀な者が多い。今以上に人類を守る壁になってくれることを期待している。以上」
凛とした声が式場に響く。拍手と共に後ろに下がると、右に立つ眼帯の男が声を張り上げた。
「俺は偵察部隊隊長、スカイヴ・エリュワルガだ。偵察部隊に告ぐ。ここに配属された以上、前線に突っ走るような真似はするんじゃないぞ。―まぁ、表情を見る限り大丈夫そうだが。お前達の活躍を期待している。以上」
『はっ!』
偵察部隊の者達の揃えられた返事と眼差しがスカイヴを見据える。スカイヴは薄く微笑み、彼の右に立つ髪を結った男を見た。
「ほら、ノア。お前の番だぞ」
「うん」
男は軽く頷き、二人よりも小さく前に出た。予め彼にだけ用意されていたマイクに向かって話し出す。
「戦闘部隊隊長のノアです。まずは入団おめでとう。…と言いたいところだけど、生憎ここは戦場。おめでとうなんて言葉は使えない。だから皆に言いたいのは―」
ノアの目つきが変わる。小さく息をつき、言葉を続けた。
「—ここに来たからには、全力で国を守り、死んでも戦うことを止めるな。危害を加える敵は殺し、共に戦う仲間は救え。そして、分かっていると思うがここは地獄だ。‟死”が日常になり、苦しみが常に付き纏ってくる‟戦場”。それでも尚、この場所を選んでくれた君たちを、俺達は大いに歓迎しよう。人類の希望となってくれることを信じてるよ。以上」
『はっ‼』
マイクの電源を切ると、戦闘部隊員の威勢のいい返事が空気を震わせる。「じゃ、これで」とノアが軽く手を振って舞台袖へと消えていく。それを二人が追いかけていき、式が続行された。
「あー、疲れた。こんな人数多いなんて聞いてなかったんだけど…」
ステージを降りたノアが歩きながら伸びをする。その顔を横からスカイヴが顔を覗き込んだ。
「お前、今日どーした?熱でもあんのか」
「え?いつも通りだけど」
ノアが不思議そうに首を傾げる。そんなノアの頬をレイチェルがつついた。
「挨拶だよ。いつものお前があんなこと言うわけないだろ」
「え~、酷いなぁ。俺だって言うときは言うよ」
むっとしたノアが頬を膨らませて言う。レイチェルはつつくのをやめ、顎に手を当てた。
「…まぁ、今年の新人は豊作だからな。司令部に120人も新人が入るなんて異例だ」
「だな。皆顔つきが違う」
賛同するようにスカイヴが頷く。ノアがふっと笑った。
「—今年は、何かが変わりそうだね」
吉と出るか、凶と出るか。それは、誰にもわからない。