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【短編小説】薔薇の女王たちと九人の『発散係』
【リクエストしてくださった方へ】
リクエストありがとうございます。
まず最初に謝らせてください。ごめんなさい。
「グロ表現は少なめに」と言われたのにも関わらず、
途中から結構入れてしまいました。しかもバッドエンド…
お気に召さなかったら申し訳ないです…
世界のどこかに、とても大きな王国がありました。
その王国の中心には、誰もが憧れる大富豪一家の城がありました。
そして、その城には美しい女王が暮らしていました。
彼女の身の回りには、いつも召使いがいました。
それは、執事、騎士、調理員、医師、家政婦…
--- そして『発散係』がありました…… ---
『発散係』は、城に住む人たちのストレスを発散させる役割です。
彼らは城に住んでいながら、人権はありませんでした。
---
妃「発散係D、こっちにきなさい。」
D「……はい。」
今日も体にアザが増えてしまった。やはりムチは痛いな。
私たちに名前はない。人権もない。
私たちは、生まれた時から発散係を務めることが義務付けられていた。
人間が当たり前のようにしていることが、私たちには許されていないのだ。
どうやらこの城には私を含め9人、発散係がいるらしい。
しかし、連絡手段など、私たちにあるはずがなかった。
私に救いなどない。
………そう思っていた。
それは、とある深夜のこと。
私が料理長様に呼び出されて罵詈雑言を浴びせられた帰りのことだった。
?「…なぁ。お前発散係Dだよな?」
D「……?あなたは…?」
?「俺は発散係Sだ。お前と同じだ。安心しろ。」
D「!?まさか他の発散係と会話できるなんて…」
S「……なぁ。ここから逃げ出したくないか?」
D「!!?で…でも…そんなこと、私たち二人じゃとてもできないわ…」
S「一人なんかじゃないさ!最近、連絡が取れたんだよ。来てくれ!」
私はSに手をひかれ、城の地下室にある物置に連れて行かれた。
?「お、来たか。」
?「女の子か…かわいそうになぁ…」
?「とにかく座れ。時間はそんなにないぞ。」
私は声をかけられながら荷物に腰掛ける。
S「彼らは発散係A、W、T、C、K、B、Rだ。」
D「こ、こんばんは…」
W「よろしくな!」
D「………あの…」
A「ん?どうした?」
D「…あなたたちはどうやって知り合ったんですか……?」
S「俺とCがかなり前に出会ったんだ。そこで二人で脱出計画を練った。」
C「そこにWが来たんだ。」
W「俺はよく城中を行き来してたから、情報を結構持っててな!」
「そこから他のみんなを少しずつ見つけ出したんだよ。」
S「そして最後がD、お前だったんだよ。」
T「でも、あまり時間がない。急で申し訳ないが、脱走についての話をする。」
D「!!」
思わず背筋が伸びる。緊張で変な汗が額を伝う。
C「君は、ここから逃げ出したいかい?」
K「君が嫌なら、僕らは無理強いはしないよ。」
S「…どうする?」
私の中で、既に答えは決まっていた。
こんな生活、懲り懲りだ。
D「……私も逃げたいです!!」
みんながニカッと笑う。
B「じゃあ、脱走計画を説明するな。」
D「は…はい…!!!」
S「まずは俺とRがーーーーーー。」
__A「ーーーー、ーーーーーーーーー。」__
__D「ーーー?ーーーーーーー?」__
__W「ーー!ーーーーーーーーーー、ーーーーーー。」__
__D「ーーーー…!」__
---
そうして迎えた脱走当日。
私の心は、生まれて初めて高鳴っていた。
---
妃「………ふぅ。もういいわ。部屋から出なさい。」
D「…はい。」
今日は顔を蹴られた。目が腫れて、視界がぼやける。
でも…こんな暮らしも、今日までだ。
私はズキズキと痛む足で事前に聞かされた集合場所へ走った。
W「…!D!」
B「間に合ったか…」
S「何があった?」
D「実は女王様につかまってて…」
K「!!目の怪我はそのせいか…!!かわいそうに…」
T「でも、そんなのも今日で終いにしようぜ!」
全員「うん!!!」
---
S「よし、予定通りに動けよ?俺とRはあっちで問題を起こす。」
R「その間にDとCは門の外へ。C、Dに肩を貸してやってくれ!」
C「任せとけ!」
D「よろしくお願いします。」
S「そして、俺らが捕まってるところにA、W、Tが助けに来てくれ。」
A「任せろ。」
B「女王は俺が惹きつけておく。」
S「今の時刻は~時~分。今から30分後に◯◯◯へ集合だ。皆で逃げ切るぞ!」
D「!!!!うん!!!」
「………ねぇ!!」
T「どうした?」
D「みんな…生き残ろうね……!!!!」
W「!!当たり前だろ!!」
S「…それじゃみんな!」
--- 「また生きて会おうな!!」 ---
---
__タッタッタ……__
D「もう少しで門だ…!!」
C「!うん…!!頑張って!!」
タッタッタ……
タッタッタッタッタ………
**ダンッッ!!!!!!**
騎「止まれ、発散係ども。」
D「!!!?」
C「!!!!」
騎「お前ら、発散係で集まって脱走計画を練っていたらしいな?」
D「……!!!なんで……バレてっ……!!!!」
騎「お前たちに話す必要などないだろう。」
C「……!!**D!!走れ!!!!**」
D「!!」
**ダッ!**
私は走った。
後ろでCの倒れる音が聞こえたが、振り返らなかった。
私は、ただ生きたかった。
**ガンッッ!!!!**
鈍い音が私の後頭部を襲う。
途切れる意識の中、視界には重そうな辞書を持った秘書が映った。
---
起きると、私は広い牢屋のような場所にいた。
D「……うぅ…ここ……は…………?」
S「起きたか。」
D「!!作戦は!?」
S「失敗だ。なぜかは知らんが、計画がバレた。」
D「!!!…………そんな…」
周りを見ると、さっき手を組み合った仲間たちがいた。
諦めずに脱走しようとする者もいれば、絶望して思考放棄している者もいた。
妃「発散係、聞こえているかしら?」
T「!!!ここから出せっ!!」
妃「図が高いわよ。とりあえず、今から『ゲーム』の説明をするわね。」
K「ゲーム…?」
__カランッ__
全「!!?」
妃「今、部屋の中央に『アイテム』が落ちてきたと思うわ。」
部屋の中央には、鋭く光る剣が落ちていた。
妃「今からアイテムを数個渡すから、あなたたちでバトルをしなさい。」
B「……!!!?」
妃「`《《勝ち残った一人だけは》》、《《そこから出してあげる》》。`」
W「………」
妃「じゃあ、最期まで私たちを楽しませてね。『発散係』。」
城の人たちの笑い声と共に、音声は止まった。
部屋に残ったのは、静寂と、剣だけ。
__C「………ごめん…」__
R「…謝るなよ。お前だけのせいじゃな
**グサ**
R「………ぐえ?」
Rが血を流しながら倒れた。
腹には剣が突き刺さっていた。
C「…俺は生き残る…!!」
CがKに走ってゆく。
Kは咄嗟にそれを交わした。
__ガチャンッ__
部屋の中央に、ハンマーが落ちてくる。
Kはそれを拾い上げ、Cの頭を殴った。
Cはその場で声を出す暇もなく倒れた。
--- そこからは地獄絵図だった。 ---
ついさっきまで協力してた仲間たちが、殺し合っている。
落ち着いてた人も、取り乱して誰かに突進する。
あんなに優しかった人も、自分のためだけに剣を振るう。
怖かった。
でも、私には何もすることができなかったのだ。
そして、最後に私とSが残った。
彼の腕は、誰かの血で塗れている。
S「はぁっ…はぁっ…D…ごめんな…俺も…生き残りたいんだ…!!!」
彼が叫びながらこちらに突進してくる。
私は足元の死体に目をやる。
原型を留めていない死体には、小さな小刀が持たされていた。
私はそれを握る。
D「ごめんなさいっ…!!!!」
そう叫んで、私はSの首元に固く握った拳を押し込んだ。
私の腕は、彼の首と口から吹き出した血によって紅く染まった。
---
部屋の扉が開いた。
私はよろよろと扉に向かって歩く。
ただ、この地獄から逃げ出したかった。
光に向かって、私は足を進めた。
開いた扉の向こうは、白い部屋だった。
壁、床、天井、全てが白。目が痛くなった。
妃「あら、Dなのね。まずはおめでとう。」
私はもう、話す気力がなかった。
早く、こんな生き地獄から解放されたかった。
妃「良い知らせと悪い知らせがあるのだけど…どちらがいいかしら?」
D「…………いい知らせ…」
妃「あらそう。あなたは勝ち残った。だからあの部屋から出てこれた。」
「……これがいい知らせよ。」
D「……悪い知らせは…?」
そう言った途端、天井から音がした。
何かの機械が動く音。
それと同時に、天井が低くなっている。
D「!?」
…迫ってくる。
『死』が迫ってくる。
D「……あ゛あ゛あ゛ぁ あ あ ぁぁぁ!!!!!?」
私は必死に天井を支える。
腕から何かが砕ける音がする。
私は仰向けになる。
足で必死に天井を蹴る。
足がなくなる。
いやだ。
なんでなの。
わたしは勝った。
なのになんで死なないといけないの。
わたしは
わたしはただ
生きたかっただけなのに。
---
天井が元の位置へ戻ってゆく。
床と天井に赤いシミがついている。
妃「…悪い知らせというのはね…?」
「わたしは『部屋から出してあげる』と言っただけであって…」
--- 「『生き残らせてあげる』とは言ってないのよ…?」 ---
王妃の静かな笑いが、静寂な部屋を包み込む。
妃「最期までありがとうね、『発散係』…♪」
---
世界のどこかに、とても大きな王国がありました。
その王国の中心には、誰もが憧れる大富豪一家の城がありました。
そして、その城には美しい女王が暮らしていました。
彼女の身の回りには、いつも召使いがいました。
それは、執事、騎士、調理員、医師、家政婦…
そして『発散係』がありました。
彼らに人権はありません。
彼らは城の住民たちの玩具に過ぎません。
今日もまた、彼らの声が城を、薔薇の棘のように包み込んでいきます。
こんにちは、「読書が好き🍵」です。
今回はリクエストでいただいたものを作りました。
どうでしたか?あなたの想像に合ったものを作れているでしょうか…?
下手っクソでごめんなさい…
リクエスト、誠にありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。