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#4 平和
『あ、無視したんだ、成功作?良かったね、成功して。私なんか失敗作だよ』
昨日も来たメッセージが、また脳内を駆け巡ります。なんでしょうか。何かのバグでしょうか。
そういえば最近、大型アップデートをしてもらったばかりです。だからバグは少ないはずです。体温を調節したり、涙を流したり、表情の変化がたくさん増えたりとしました。
それなのに、インターの義足は戻りません。いい加減、私へのアップデートの費やしをやめて、自分の義足を治せばいいのに。
まぁ、アップデートは嬉しいからいいのですが。
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「さてインター、体重計測をしましょう」
「え?体重?」
「はい。物置にしまい込んであった高性能体重計が見つかったので、2日前に言ってありました。〝インター、体重計が物置から見つかりました。2日後に計測しましょう〟と」
「え…?」
なんかそんなこと言っていたような気もする…あまりにも正確に言われると、ちょっとなぁ…
「計測しましょう」
「嫌」
「します」
「嫌っ」
「義足は3kgのはずなので、3kgは除きます」
そう言って、渋々立つ。
「あのさぁ、あんまりそんな数値を覗き込まれたら、プライバシーもへったくれもないんだけど?」
「知りません。義務です」
ネットの数値の覗き込みはすごく、わりと顔が近い。
どんどん増えていき、やがて数値のブレが収まる。デジタルな数字が、やがて57におさまる。
「貴方の身長は154cm。平均身長の157cmより3cm低いですが、157cmの平均体重は52kg前後です。57が許されるのは、162cmほどです」
「やめてよ!体重も身長も気にしてるんだから!」
「まぁ、貴方の場合は3cmほどの厚底を履いていますから」
コンプレックスをぐさぐさと刺していく。
「BMIは約24、肥満度は普通ですので、大丈夫だとは思われます」
「…はぁ。なら、チョコレートは」
「いえ、この生活になれるべきです。そんなにガツガツ食べていたら、お菓子は早くなくなり、出費がかさみます。まずはナッツ類です」
「…そんな」
「でも、肉類と魚類は解禁しましょう。でも、揚げは例外ですから」
「…はいはい。どうせ主導権はネットにありますよー。んじゃ、仕事しよ」
「そうですか」
ネットは買っておいたらしいナッツの小袋を少し持ち、パソコンへ身体を滑り込ませた。
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今日の仕事は特になく、いつも通りの水色の世界。ふわふわ浮いたナッツの小袋は、あんまり食べようとは思わない。
「平和だぁ。本当、いいなぁ」
「…そうですね」
歯切れが悪いが、アップデート後の後遺症みたいなものだろう。すぐ慣れるはず。
今日は文字化けのバグ修正をした。例の弁護士の件よりも、ずっと楽だ。
「さて、11時半なのでそろそろ切り上げましょう。お昼はクリームパスタにマッシュルームとベーコンを入れたものと、ナッツ入りのサラダはどうでしょうか」
「ナッツ推すなぁ」
「そうでしょうか。でも実に…」
「もういいから」
白い四角い光めがけ、わたしはふわりと突っ込んでいった。