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出席番号十三番 小々高好葉
|香取《かとり》くんについて色々調べていると、とある女子の存在が浮かび上がってきた。
実際はそんな大層なものではなく、〈そういう噂がある〉というだけだが。
「ねー香取、今日暇?」
噂をすればとは言うが、それは口に出さなくても適用されるのだろうか__
時は放課後。そのとある女子こと、|小々高《ここだか》|好葉《このは》が、香取くんに話しかけていた。
__小々高好葉。一軍に属している、陽キャ女子。意外と優しくて気が利く。まさに令和のギャル。
「いや、俺今日は部活あるんだわ。ゴメンな」
「マジでー? うわ、みんなでスポッチャ行こうと思ったのに」
「ゴメンて。でもそれは俺も行きたいな」
「はあ、今日せっかく|潮野《しおの》も来れるのになー……。でもそだね、あんたいたほうが盛り上がるし。また今度にするか。そんじゃ、あとでLINEで空いてるとこ教え__いや、無理なんだっけ。じゃあま、また近いうち声かけるから」
「オッケ。わりーな」
見た感じ、普通に異性の友達同士っぽいけれど……。
__『香取って、彼、小々高さんと付き合ってるって噂あるよね』
学年にひとりはいるやたらと恋愛事情に詳しい女子生徒からの情報だ。
もし本当なら、相生さんへの告白の真偽、及び真剣さが疑われるため、それを確かめたい。
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数時間後、私は小々高さんとキャラメルマキアートをすすっていた。
何してんだろ私……。
私は遠い目で数時間前を振り返る。あのあと、
『あれっ、あんた、どうしたの? 物欲しそうな顔してこっちじぃっと見て』
『へ? いえ、じっと見ていたのはすみませんが、物欲しそうな顔は断じてしていません』
『……うわマジか、今日みんな部活あんだけど! 潮野もみんながいないと無理って! 嘘でしょ!』
『あの小々高さん、学校でスマホを弄るのは校則違反ですよ……?』
『最悪ー、うちだけ暇じゃん。……あ、そだ。あんた、放課後空いてる?』
『えっと、はい、空いてますが』
『スタバ行かね?』
『は?』
__ということがあったのだ。
ズズズズ…と、品の欠片もない吸入音が響く。
「ぷはっ、うまー」
ビールか。
「……で、あんた、うちになんか訊きたいことでも?」
「え、いや、別に」
急な質問に、私はたじろぐ。
「遠慮しなくていいって。むしろそっちのが嫌だから」
「はあ……、えっと、小々高さん」
「好葉でいいよ。噛みそうじゃん、ココダカって」
「……好葉さん、失礼を承知で聞きますが、香取くんと付き合ってるんですか?」
私が思い切ってそう訊くと、「ぶはっ」と小々高さん__好葉さんは吹き出した。
「うっ、はははは! あはっ、ぶははははっ、はははっ__」
……いや、そんな面白かったですか。今の。
「っは、はあ、ごめんごめん、ちょっと意外すぎて。いや、誰が付き合うかよ、あいつと」
彼女はひいひいと肩を震わせながら続ける。
「もしかしてあんた、香取のこと好きなの?」
「いや、そういうワケではないんですが」
「え、そうなん? ……はー、ほんとおもしろ、今の録音して送ってあげたかったわ。__じゃあ言っちゃうけど、」
__あいつ、好きな人いるらしいよ。誰かはわかんないけど、ショートカットの子だって言ってた。
相当ぞっこんみたい。あいつ最近、部活って言ってうちらと遊ぶのやめてんの。
もしかしたらだけど__ワンチャン、もう付き合ってるんじゃないかな。