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みずいろマフラー
ラピくんの過去編です、
文字多すぎてセリフ見にくいっすね、ごめんなさい(※誤字脱字あるかも※)
登場人物
ラピ:捨てられた龍の子。死にかけのところをクロアに拾ってもらった。気弱だが芯の強い性格。
クロア:王女。思い詰めた挙げ句身投げの際にラピに出会った。頑固でずる賢いポーカーフェイス。
ほぼ書き殴りだから下手かも
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寒い寒い、骨も凍えるふゆの夜。ぼくは橋の下で、ぶるぶる震えながら丸まってた。
明かりのついた暖かそうな家々を見ながら、ぼくはどうしてああなれなかったんだろう。と逆恨みだってした。家々に住む誰かの幸福は、ぼくにとってお前は不幸だと誇示しているような。そんな心地だった。
--- だってぼくじゃぁ、普通のようには生きられないだろう。 ---
--- 妙な黒いつのがあるから、無理なんだろう。 ---
--- 真っ青な、妙な目だから、無理なんだろう。 ---
--- 白い髪だから、尻尾があるから。 ---
もちろん手を差し伸べてくれる人もいた。その人はぼくの角を見て、しっぽ、目、髪。吟味するように見つめられて、そっと手を伸ばされた。必死に逃げたよ。その人の目はギラギラと輝いているようで、人が見せる、欲というなの光だよね。
この世に神様なんていないね、酷いものだよ
あの日もぼくは橋の下で、丸まって、必死にまぶたを閉じた。頬にうっすらなにか乗って溶けていくのは、きっと雪かなぁ。
必死にいやなことが浮かぶ思想を振り払って、意識が薄っすらと溶けようとしたとき、不思議な音が聞こえた。
ぴちゃん、ぴちゃ、コツ、コツ。
ぴちゃん、ぴちゃ、コツ、コツ。
滴る水と、靴音。
どうやら靴音はこちらに迫ってきているようで、急に恐ろしくなって、必死に逃げたい気持ちを抑えた。相手は何をしてくるかわからない。
銃だって持ってるかもしれないとか考えちゃったから。
しばらく狸寝入りをしていると、お腹のあたりがなぜだかあったかい。誰かそばに寄り添っているか、犬猫か。ここまで一鳴きもしない猫はいないから、きっと前者だ。
ぐす、ぐす、と鳴き声が聞こえた。可哀想に思えて、そっと起き上がって、じっと温かいなにかの正体を見た。
目を見張るほどきれいな子で、くるくるの黒髪に、きれいな空色の目。この国ではなかなか珍しい真っ白な肌だった。人形のようにきれいだった。上等なケープを着て、もこもこの猫のように、暖かそうに着込んでいる。
「よかった…ッよかった……」
その子はそんなことを言いながら、ぎゅっと抱きしめられた。
摩訶不思議な行動に首を傾げていると、その子は首を傾げたこっちを見て苦笑しながら、そっと話してくれた。
家から抜け出して外を散歩していたとき、偶然ぼくを見つけたらしい。ゴミ捨て場でうずくまっているのを見て、近づいて行こうとしたら執事さんに捕まって連れ戻された挙げ句、外に出してもらえなくなり。
ゴミ捨て場にいたのは数ヶ月前だから、随分探されていたみたいだ。今はとにかく誰かに必要とされたのがひどく嬉しくて、初めてあったかい気持ちになったよ。
数カ月いろんな人が寄らないところを探して、諦めようかとした頃、偶然見つけたらしい。その日。ぼくはちいさな神様に出会えたのだ。生まれて初めてのこれ以上にない幸福が訪れて、思わず嬉しさで泣きそうになったのは言うまでもない。
だが空気を読まない腹の虫は泣き止まない。
ぐうぐう腹を鳴らすぼくを見て、その子はそっと香ばしい何かを差し出してきた。『クッキー』というらしい。
あっという間にぺろりと平らげると、その子はふと妙な笑顔で、かつ泣き笑いしそうな、柔らかい、きれいな笑顔で。
「うちにくる?」
人の言葉は苦手だ。でもなんとなく意味を汲み取ったぼくは、じっと空色の目を見つめて、深く頷くと、その子は満足そうに笑った。
「わたしねぇ、クロア、クロア、ミード……覚えてないや…むずかしいんだよね、名前。そういえば君の名前は?」
年に似つかぬ口達者で、難しい言葉をスラスラと話した。
「……」
ふと自分の名前を考えたけど、一つも浮かばない。ふるふると首を横に振ると、吃驚したようで、軽く目を見開く。
「あなた……目がきれいよね、その、宝石みたいな」
フクロウみたいに頭をひねりながら、唸っている。きっと考えてくれてるのかな。
「あっ、あの、青いやつ、えっと……」
「ラピってのはどう?かわいいでしょ」
妙に馴染むその名を反芻して、こくっと頷くと、嬉しそうに笑った。それからその子は首に巻いてた水色のマフラーと、着込んでいたきれいなケープをくれた。きっと寒いと思って断ろうとしたけど、拙い手つきで首に巻かれたよ。
薄汚いぼくにも臆さず近づいてくるし、案外キモが座ってるのかもしれない。
「…うちのこになろ、一緒に暮らそ」
きゅっとひしと抱きしめられて、ぱたぱたしっぽを揺らしてたら、面白げに笑われた。
そういえば、この子はなんでクッキーを一個を持って外に出たのだろう?外出を禁止されているはずなのに、誰も入れないはずの橋の下なのに、なんで来たんだろうって思ったけど、その子の笑顔を見てると、浮かんだ疑問は底に沈んでいった。
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それからぼくはまだ見ぬお家にすこしワクワクしながら、クロアの話をずっと聞いた。お父さんやお母さんが死んで寂しかったこと、勉強が辛かったこと、外に出れないのがつまらなかったこと。
幼い子どもってもっと遊んでいると思った。
でもクロアはぼくと同じくらい、ぼく以上に必死に生きているらしい。年離れした豊富な知識や、どこか知的な印象も納得だ。
しばらく歩くと、クロアがあるところの前で止まる。一瞬思考がフリーズして、ここってお城じゃない?って思うまで何秒かかかった。
「うらぐちがあるの、ついてきて」
クロア?クロア??ここお城だよ???って言いたくなったけど。あいにくぼくの口と頭は言葉を知らない。
代わりに信じられないというような顔で、しきりに首を傾げたりびっくりした顔をしていると、あははと乾いた笑いを返された。
「王女…ってやつ、?かなぁ、お城がお家」
笑いながらぴしっと立つクロアを目をひんむいて見つめた。魂消たよ。
それから裏口から入ると、目の前に少し白い毛を生やして、スーツをびしっと決めたおじいさんが見つめてきた。どうやら例の執事さんらしい。
「クロア様!!!あれほど外には出ないよう言いましたよね!!そしてなんですかその薄汚い生き物は!」
「もう、オリヴァーさんったら、わたし、死にに行ったのよ」
開口一番とんでもない地雷をぶっとばすクロアにあたふたしていると、クロアが大丈夫と言わんばかりに笑みを浮かべてきた。死にかけの君に拾われただなんてぼく知らないよ。
どうやらおじいさんもびっくりしたようにくちをつむんでしまった。
「もう嫌なのよ、辛いんだよ、だから死にに行ったのよ」
「クロア様……」
呆気にとられたおじいさんは調子を取り戻すように、一度おほんと咳払いをした。「それでも外出はいけません、いつも妙なものを持ち帰ってくるでしょう、可哀想ですがその子も城には置いておけません」
気にもとめぬように、クロアは続ける。その顔を覗くと、まるで無感情をたたえたような、怖い目をしていた。「あなたは知ってる?お母様とお父様が死んで、私がなんて言われたか知ってる?」
「……」
「知らないでしょう、”悪魔の子”だよ、悪魔として後ろ指を刺されたんだよ、私は」
さっきとはちがう人懐こい声が、泣きそうだけれど、誰かを憎む為みたいな、酷い声音をしている。
「ごめんなさいねオリヴァーさん、こんな事知ったこっちゃないわよね」
「いえ……」
人が変わったように喋るクロアを見て、悲しそうな光を宿しているおじいさんは、ふっとため息をついた。それに追い打ちをかけるようにクロアがぐすっと泣き始める。ここでぼくがわかったのは、嘘泣きだということ。どうにもクロアは、この歳で人を操る狡猾な術を得ているらしい。
ぐすぐす泣くクロアを見て、おじいさんは何事かを耳打ちすると、僕をみてその人は言った。
「ようこそ、ラピ様」
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見事おじいさんを抜けて、クロアは満足そうに笑みを浮かべた。すこし恐ろしくなりながらクロアを見つめ、廊下を歩いていると急に右に曲がり、すごい広いお風呂につれてかれた。お湯がむちゃくちゃ傷に染みて、しきりに泣きそうになってしまう。
お湯なのか涙なのかわかんない。透明なお湯はどんどん黒ずんでいって、クロアに笑われながらわしゃわしゃと頭を洗われた。
無事お風呂を終えてフラフラになりながらついていくと、少しでかすぎるベットに座らせられた。
くらくらする。さっきまで橋の下にいたのに今はお城だなんて。
それからおもむろに救急箱をダシてぺたぺたと絆創膏やら包帯を巻かれたり、消毒をされたり(これは傷にしみた。痛かった。)
かなり慣れていた手つきだったから思わずクロアを見ていると、チラチラと傷が見えた。親指の付け根あたりに引っかき傷に、寝間着に着替えて見えた膝にはかすり傷で、足の甲にびゃっと斜めに傷が走っている。どっちもぼろぼろじゃないか。
あったかい服を着させられ(パーカーって言うらしい。)ホットマシュマロココアとありったけのクッキーを食べさせてもらった。
ふうふうとマグカップの中のココアを冷ましていると、同じものを手にしたクロアが、ぽつりぽつりと話し始める。
「さっきの話、聞いていたでしょう、お父様とお母様の話。」
頷くと、どこか切ない微笑みを浮かべた。
「私ねぇ、つい先月にお母様が死んじゃったの、その3ヶ月前にはお父様が死んじゃって、あっというまに一人になって」
「寂しかったの、だからあなたがいてくれてよかった」
びっくりして思わず見つめると、じっとクロアも見つめてくる。
「川に飛び込んじゃおうって思って橋の下に行ったの、そこであなたを見つけたから、あなたは私の命の恩人」
君だってそうだと言ってあげたくて、自分の胸を指さしてから、クロアを指差すと、どうやら意味を汲み取ってくれたらしく、ありがとうと小さく笑ってくれた。やっぱり笑顔が似合う子だ。
「……ココア飲んじゃったら寝ちゃお、助けてくれてありがとうね、ラピ」
そんなことを聞いて一緒に寝るのかとなにか心を決めたような顔をしていると、「なあに、そのかお、w」と笑われた。これは僕が心を決めた顔です。伝われ、クロアよ。
そんな流れがあってから、クロアが先にココアを飲み終わって、ぱたぱたとトレーに乗せて持っていく間。
なんとなく落ちてるクッションやうまくかかってない服をかけ直したり、崩れた本をきれいに戻したり、ペンをペン立てに戻したり。
できることをして待っていると、クロアが分厚い赤い本をもって戻ってきた。
「お父様とお母様を見せてあげるっ」
僕が座ってるベットの乗っかってきて、ぱたっとアルバムが開くと、クロアによく似た顔の女性と、くるくる髪のハツラツとした男性が写っていた。
真ん中には髪の短いぱやぱやとした、小さな子。きっとこのこがクロアだ。
「これがお母様で、タルトが大好きで、お父様は馬に乗るのが上手」
それからずっとクロアの写真ばっかで、あまりにも僕が熱心に見つめるせいか、「ここに本物がいるでしょっ」と笑われる。
どうやらこのご両親にとんでもないほどクロアは愛されてるみたいだった。写真の中のクロアは全部笑顔で、たま〜に可愛らしい寝顔や、犬に怯えてお父さんの足にしがみついていたり、普通の子どもらしい。
どうにもその笑顔が失われていた期間を考えると胸が苦しくなった。
「お母様はねぇ、よくお菓子作ってくれた、でもすっごい怖いんだよ、わたしにいっつも怒鳴るの。」
「でもお父様は『お母さんは少し不器用なだけで、クロアが大好きなんだよ』って言ってねぇ、それで嬉しくってお花をあげたら、初めて笑ってくれたの」
クロアは一つ一つの写真を説明してくれて、まるで時間を巻き戻すように、丁寧にページをめくっていた。
クロアの家族自慢が終わると、アルバムを机に代わりにおいてあげて、そっとベットへ戻ると、櫛を手にしたクロア。寝ないのか?
「ちょっと……ラピがいいならでいいんだけど…しっぽ…触りたくて」
どうぞどうぞと尻尾を向けて座ると、櫛がくすぐったくて思わず身動ぎした。「なんかパサッとしてるねぇ、猫の尻尾みたい」
体のあちこちを触られていると、ぴたっと手が止まって、何事かと後ろを向くと、うつらうつらしているクロア。
電気を消してあげようとスイッチを探して立つと、ぎゅっと袖を握られる。
「いかないで」
代わりと言っても難だけれど、手の甲にそっと口付けると、びっくりしたように、耳まで真っ赤にしてクロアががばっと起き上がる。
じっとキスをした手の甲を見ていて、それから僕を見て、手の甲、僕、手の甲、僕……大丈夫かな、僕打首にならない?
そしたら急に布団に丸まってしまった。でも同時に勝ち誇ったような気持ちになった。
パチっと電気を暗いものにして、ベットの縁に腰掛けると、布団からひょこっと手が出てきて、暗闇の中、うっすらとクロアが見えた。
こういうときどう言えばいいのかわかんないや。
彼女の白い肌は暗闇の中ではより一層白く見えた。空色の目も、夜空を吸い込んだみたいに、きらきら光っている。
そっと隣に寝転ぶと、ぎゅっと抱きしめられる。抱きしめ返すと、見た目よりもずっと小さくて、服で大きく見えていたこともわかった。
なんだか痩せているのが苦悩自体を表しているようで気の毒で、せめてもと言わんばかりにそっと頭を撫でると、うふふと可愛らしい、小さな声が聞こえたのは言うまでもない。
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翌日、まどろむ暇もなく、叩き起こされた挙げ句に数十分も髪をいじられた。きまぐれだなぁ。
器用に三つ編みを結ばれながら、寝癖がすごいクロアを鏡越しに見やる。子猫みたいに、ぱやぱやとした髪。
やっと終わったらしくて鏡で見せられると、なんだかものすごかった。なんだろう。難解なパズルみたい。
髪が終われば角、角が終われば尻尾。磨かれたり梳かれたり、自分でやろうとすると手を叩かれる。だめなのか。
「みてみて、お揃い」
赤いリボンで一箇所髪をまとめたクロアが、同じリボンがついた僕の髪を見せつけてきた。きれいだなぁ。髪もクロアも。
セットが終わって疲れてフラフラしながら立ち上がると、ぎゅっと抱きついてきた。ハグが好きなのかな。
急に顔を見つめてきたかと思うと、おもむろにキスをされた。もちろん紛れもない唇に、である。
ぶわっと頬が熱くなって、ぐつぐつ頭が煮えた。
なんとなく昨日のクロアの気持ちがわかる。僕はとんでもないことをしてたのかもしれない。
「改めて、よろしくね、ラピ」
僕はこの、気まぐれな小さな神様に、一生ついていく。そのつもりだ。
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どうでしたか、過去編
なんと文字数驚きの6110文字!!((
ここでちょっとこばなし。
クロアのお母さんは合理的、お父さんは人情深い性格をしています。
クロアはどちらも受け継いで、合理的だが人情深い性格、お母さんは人を操ってのしあがってきたので、そこの狡猾な面も捉えています。(お父さんは努力家)
両方のいいところばかり受け継いだ結果、フィジカルつよつよスパダリ王女様が生まれたわけです。
今後ともうちのこをよろしくです。(^ν^)