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スヌーズ
2006年
「#菜々#ー、早く来てえ」
「はいはい待って」
「泥だんご作ろうよー」
「えー汚いよ」
2009年
「#菜々#ー、社会科見学のグループ学習一緒にやろ」
「いいよ、今日ちょっと書いてくる」
「えー菜々がこれ書いたの、すごっ」
「まあこれくらいはねー」
「よくこんなの一日で書けるねえ」
一週間後
「次の発表は#菜々#と#沙奈#か、みんな拍手」
先生に呼ばれて私たちは前に出た。
私は書いてきた原稿をそのまま読んだ。
#沙奈#は私より全然少なかった。
「#菜々#すごーい」
「ありがとう」
発表はうまくいったのに#沙奈#は全然嬉しそうじゃなかった。
2012年
「#菜々#、卒業文集の書けた?」
「書けたよ」
「ちょっと見せてくれない?」
「いいよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
3ヶ月後
「やっと卒業だねえ」
「そうだね、でも私たち中学一緒だし」
「#菜々#は頭良いのに受験しなくて良かったの」
「いいの、行きたいとこなかったし」
卒業式と|謝恩会《しゃおんかい》が終わって家に帰った。
みんなの卒業文集を読んだ。#沙奈#のだ。
「たくさんの友達ができたのに別れてしまうのは悲しい
けれど、新しい場所で頑張りたいと思います」
こんなことを書けるのは羨ましい。私に友達は#沙奈#しか
いないから。
2015年
「もう卒業だなんて早いねえ」
「そうだね」
「#菜々#は良いね、国立の高校なんて私の頭じゃむり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるってえ」
「またね#菜々#」
「ばいばい、またね」
幼稚園から一緒だった私たちも高校で離れることになった。
2018年
部活から帰りしばらくたってスマホが鳴った。
#沙奈#からだ。
「15日、久しぶりに遊ばない?スタバ行こ」
私はこれから大学受験だというのに。といっても音大だけど。
「ごめん、大学受験だから」
「大学受験ってったって音大でしょー」
「練習しなきゃいけないから」
「ふーん分かった」
予定だった15日に他の友達と遊んでいる写真がたくさん
送られてきた。
2020年
私は第1志望だった国立の音大に落ちて私立の音大に入った。
国立の音大に落ちて私立の音大もギリギリの合格。
完全に自信を失くしていたから毎日ずっとピアノを弾いていた。
6月
「#菜々#ー、今度#菜々#の家遊びに行っていい?」
ずっと断っていたし、たまにはいいか。
「いいよ」
「やった~、26日はどう?」
「いいよ」
「じゃあ26日の10時で」
6月26日
「おじゃましまーす」
「入って、お茶出すね」
「だいぶ昔と変わったね、#沙奈#」
「そーお」
「それにしても#菜々#は変わんなすぎでしょ」
「根暗もちょっと直した方が良いよ、モテないって」
「うーん」
「大学はどこにしたの?」
「私立〇△芸術大学」
「私立かあ?国立落ちたんだ、ダサッ」
「音大なんてやめとけばいいのに、大して上手くもないんだから」
今までにない|苛立《いらだ》ちで言葉が出なかった。
「せっかくの頭がもったいない、友達もいないで一人で
引きこもりなんて可哀想」
「私たち、友達だよね」
「えっ何急に、今はもう違うんじゃない」
「私の友達みんな明るいし」
私はいつのまにか立ち上がってキッチンに向かっていた。
「えっ・・・#沙奈#?」
#沙奈#の腹部から血が流れている。死んでる。
「何で?どうしよう」
「うわああああ、何で?私がやったの」
キッチンに行ってから何も覚えてない。どうすればいいの?
ピピピピッ、ピピピピッ。
その音で私はベッドからはね起きた。
スマホの画面を見た。6月26日(土)10:25。