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第五章 私の知らない世界
伊吹奏楽
「愛を知らない私には」
第五章です!
「わあ……!これも……これも……これも……初めて見ました!」
私の服を調達した私たちは「せっかくだから回ってみようよ。」と優斗さんが言うのでショッピングセンターを見て回っていた。
(なんだろう、黒い板だ……鏡かな……?)
「あの、皆さん。これはなんですか?」
気になったので三人に聞いてみると三人はまたまたこの世ならざるものを見たような目で私を見た。
「嘘、杏ちゃん、スマホ見たことないの……?」
「スマホ持ってない現役JKなんているのかよ……」
「……施設暮らしじゃなくてよかった……」
「すまほ?鏡の名前ですか?」
キョトンとして三人を見つめる私に三人ははぁ、とため息をついた。
「杏ちゃん、これはねスマートフォンって言って、携帯電話って分かる?」
「持ち運べる電話ってことですか……?」
(施設には大人がいないときに何かあったとき用に備え付けの電話はあったけどそれかな……?)
「そうそう。スマートフォンは携帯電話とも呼ばれててどこでもメールのやり取りや電話ができるんだ。」
スマホ?の箱を指差して説明してくれる優斗さん。
「杏、お前何色が好き?」
突然そう聞いてきたのは悠斗さん。
(え……?なんで突然……?
好きな色って私には……)
「好きな色……って言うか好きなものないんです私。小さい頃にこれが好きっていったらそんなわがまま要らないって殴られてたからなのか、いつしか「好き」って感情がなくなっていって……」
私がさらっとそう言うと、三人の目が曇った。怒りの混ざったような瞳。
「ああ、そうか。じゃあ白な。」
ぶっきらぼうにスマホをかごに入れる悠斗さん。
(え……?ちょっ、ちょっと待って……)
「これ、私のじゃないですよね……」
確認のためにそう聞くと、
「え?なに言ってるの。下僕のに決まってるでしょ?」
なぜか蓮斗さんにそう答えられた。
すると優斗さんと悠斗さんもうなずいて
「杏ちゃん、これは今の普通の高校生は持ってて当たり前なものなんだ。」
優斗さんがそう言うと「ほら、」と自身のスマホを見せてくれる三人。
(当たり前……普通……私にはないものだと……)
「下僕も持っててくれないと好きなときに呼べないから僕が困るの、持ってて?」
「杏ちゃんに何かあったら大変だしね。」
「お、俺は杏に普通を教えてやる!」
そう言ってくれるみんなの押しにまけてまた皆さんに買ってもらうことになってしまった。
会計が終わるとまたコーナーを回っていく。
「あの、これも、それもなんですか?本なのに絵がいっぱい……」
また分からないものがあったので聞いてみた。
「杏ちゃん、それも知らないの……?」
「雑誌と漫画を、知らずにここまで生きてきたのかよ……」
「下僕、ここまでほんとにつまんなかったでしょ?」
次々にいっていく皆さん。
(そんなに面白い物なのかなのかな……?)
(よし、決めた。)
「あの!これ買ってもらってもいいですか?」
勇気を振り絞ってそう言う。
「「「もちろん。」」」
笑顔でそう言ってくれるみなさん。
(ちょっと前まで小さいときにこんなこと言ったら殴られる、とか思って絶対言えなかったのに……)
「ありがとうございます!」
初めて心からそう思えて、笑顔でそう言った。
「「「っ……!」」」
「だから可愛すぎるって……」
「ほんと、かっ……かわっ……」
「だから!下僕!下僕なんだ勘違いするな僕……」
またあわあわしだす三人に
「大丈夫ですか?」
そうきくとやっぱり
「「「大丈夫だから!!!」」」
そう返ってくる。
(本当に面白い人たちだな……)
不思議に思いながら時間が過ぎていく。
優斗さんが口を開く。
「この際、杏ちゃんが知らないもの全部買っちゃおうか。」
(ええっ!そ、そんな……)
「いやそんな、悪いですよ……本当にバチが当たってしまいます……」
「そんな、バチなんか当たんないって。普通だよ、当たり前のことだから。」
優斗さん。
「杏。お前はちょっと我慢しすぎ。もっと強欲に生きてかないと。」
悠斗さん。
「下僕、主人の言うこと聞けるよな……?」
蓮斗さん。
(みんな……私、「普通の女子高校生」になってもいいのかな……)
「私なんかが、いいんですか……?」
「「「いいんだよ。」」」
また口を揃えていってくれる三人。
(こんなに伝えてくれてる。……私、求められてるんだ……)
「……はい!お願いします!」
私は今日……というか人生で一番、心から笑えた気がした。
第五章書き終わりました……!
書きたいことがありすぎて長めになってしまったのにここまで読んでくれてありがとうございます!
感想などおくってくださると嬉しいです!
次回第六章は三兄弟の視点でおくる、番外編にしようと思っています!
次回もよければ読んでいただけると最高に嬉しいです!