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森の奥、霧の館へ(前編)
こんな噂知っているかしら?
雨が降ってて霧が濃い夜にあの森に行くとね、大きな洋館があるの。
霧の立つ森の奥を進んで行くと、その洋館の周りだけ霧が晴れているのよ。
霧の館なんて呼ばれているらしいけどそこら辺はあまり知らないわ。
あの洋館の中では美味しいお菓子が沢山あって館の主人がおもてなししてくれるのよ。
行ってみたいと思った?行ってみてもいいけど、でも、これだけは気を付けて、絶対に
『大きな鏡のあるお部屋には入ってはいけない』わ。
絶対に。
入ってしまったら最後、もうこちら側の世界には戻れないわよ?永遠に。
なんでこんなことを知っているかって?
それは、そうね、私はあの洋館の住人ってことでいいかしら?
このことは他の誰にも教えてはいけないわ。
私との約束ね。
そんな夢を見た。あの人綺麗な人だったな、まるで人形みたいな、いや、妖精みたいな感じの。
「夢にしては妙にリアルだったなこれ…本当だったら、行ってみようかな。気になるし。」
ということで雨の日を待って実際に行ってみることにした。
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数日後
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今日はザァザァと雨が降り続いている。
時刻は午後6時夕方の時間帯。そういえばこのくらいの時間は逢魔が時とも云われているらしい。
両親は昨日から仕事で県外に出張中、3泊4日で帰って来ない。
実行に移すにはうってつけだ。
傘と携帯を持って噂の森へ向かう。雨が降っているし薄暗くなる時間帯なのでほとんど人は出歩いていないようだった。
森の方へ近づいて行くにつれ、霧がだんだんと濃くなっている気がする。
森の奥へ歩いて行く。
ザァザァと雨の降るなか1人で。
雨の音と自分の歩く音しかしない。
不気味すぎて帰りたくなってきた。
ふと、周りを見渡すとそこは木々の覆い繁る森の中であった。
「帰りたいけどどうしよう、帰り道が分からなくなっちゃった。」
携帯は…
電波飛んで無い=助け呼べない=詰んだ。
こうなったら歩くしかない。
さらに森の奥深くへと歩いて行くのだった。
周りはますます不気味さを増してくる。
体感では2時間くらい歩いている気がする。
「なんだか急に霧が晴れて来たような?」
辺りの霧が薄くなっている気がする。
遠くに光る何かが見える。あれが洋館なのか?
光る何かに向かって走り出した。
「ちょっと走るには邪魔になってきた。」途中で傘が邪魔になり、傘を手放してしまった。小雨にはなりつつあるが、全身がずぶ濡れになってきた。か、気にせずただひたすら走る。走る。走る。
だんだんと光が大きくなって雨も次第に止んできた。
そう、ついについたのだ。あの洋館に。
「ついたのか?ここ。洋館だよね?」
ノンストップで動き続けてもう疲れが限界に近づいており、洋館についてほっとしたのか全身の力が抜けていった。そのまま気を失ってしまった。
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「おや?お客人かいらっしゃったようだ。はて?様子が少しおかしいようだね。グレース、客人を連れておいで。おもてなしをしよう。」
「分かったわ。行ってくるわね。」
「あぁよろしく。さぁて、僕は客人用の部屋を整えておくとしよう。」
暖炉に薪をくべ、部屋を暖めておく。客人用の部屋はシーツを取り替えて、もしかしたら着替えが必要になるかもしれない。紅茶は後で準備しようか。どのようにおもてなしするか、考えただけで楽しくなってくる。あわよくば自分等の仲間に…なんてね…
しばらくして
「主さん、連れてきたわ。」
お客様をふわふわと魔法で浮かべたグレースが帰ってきた。
「魔法である程度乾かしたりしたけど、この子、気を失っているみたいよ?ベッドに寝かせてもいいかしら?」
「あぁよろしく。グレース、久し振りに魔法使ったみたいだけど、大丈夫?」
「あら?大丈夫だけど、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。さぁ、お菓子を用意してお茶会の準備をしておこう。」
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甘い匂いがする、お菓子かな。目が覚める。
知らない天井、フカフカのベッド。なにこれ、ずっと寝てたいんだけど。
違う、そうじゃない
「ここはどこだ?」
「お目覚めかな?お客様。」
「ふぇ?!」
「開口一番それとは、面白いね。目が覚めたなら紅茶は如何かね?甘いケーキもあるよ?スコーンとかの方がよかったかな?」
突然何なんだ?気付いたら知らない部屋にいて、漫画とか小説とかで出てくるような
貴族の人達が来てそうな服を着た男の人。どういう状況なんだこれ。
じゃなくて。
「ここはどこなんですか!?」
ちょっと強めに聞いてみる。
「ここはね、君達が霧の館と呼んでいるところだよ。僕はこの館の主、まぁ~適当に呼んでもらえばいいよ。」
「はぁ、ソウデスカ……」
何なんだ?この人。訳が分からない。
とりあえず目的地には着いたらしいけど、どうすりゃいいんだ?
「よーし、今から君を食堂に連れてってあげる。紅茶には何を入れるかな?シュガーにミルク、レモンもあるよ。」
少しヒールの高いブーツを軽やかに鳴らしながら、手を引かれるままどこかに連れられて行く。拒否権は無しかぁ。
トッ トッ トッ トッ トッ トッ
誰か走ってくるような気がする。
「ぐぉ」
腰の辺りに何かがぶつかってきた。地味~に痛かったんだけど。
「わァ~ひっさしぶりノおっきゃくさま~」
「 ねェいっしょニあそぼ!あそぼ!」
『なにしてあそぶ?』
誰ですかこの子達。瞳の色以外瓜二つではありませんか。双子かな?凄く可愛いんだけど。
「こーら、ダメよ2人とも。お客様びっくりしちゃったじゃない。あら、ごめんなさいね。この子達遊び盛りだから、多めに見てあげて。」
今度は女の人だ。綺麗なドレスだなぁ~。何だかどこかで会った事がある気がする。どこだったかな。
「ここで全員が揃うのは面白いね。みんなで食堂に行こうか。この子達の紹介もしたいし。」
と主さん
向かった先は広い食堂だった。
食堂に着くと、お菓子の甘い匂いが広がっていた。ここから甘い匂いってしてたんだ。
大きなテーブルにはレースのテーブルクロスが敷かれ、その上にはティーセットとさまざまな種類のケーキやパイが置いてある。凄く豪華だな。
「さあさあ、座って、|お茶会《ティーパーティー》を始めよう。」
紅茶とアップルパイが一切れ。
出来立てのようで湯気がたっている。
「さぁ、召し上がれ♪」
アップルパイにフォークを刺すとサクッと美味しそうな音がして、甘く煮詰めたリンゴとほのかにシナモンの香りが漂ってきた。一口サイズに切って、頬張る。
「!美味しい。」
サクサクのパイ生地は香ばしくてそこに甘く煮詰めたリンゴがシナモンの香りと上手い具合に混ざってとても美味しい。
何切れでも食べられそう。
ついでに紅茶も一口。
「うま~」
この紅茶ってどこの茶葉なんだろ?
とっても高そう。
まあいいか。
白い陶器のカップに夕焼け空みたいな茜色の紅茶は映えるなぁ~
「お気に召したかな?おかわりもあるからたんと食べるといい。」
ニコニコと主さんはこちらを見守っている。
「食べながらでいいから僕達の紹介をしよう。」
「この双子君達は僕の小さなお友達。瞳の色が紅い方がイルム、瞳の色が蒼い方がテルだよ。凄く似てるけど微妙に違う所がいくつかあるから見分けはつくはずさ。」
「彼女も僕のお友達。名前はグレース。お菓子作りが得意でここに並んでいるお菓子達は全て彼女の手作りなんだ。ちょっとした魔法も使えるんだよ。」
「最後にさっき説明した通り僕は館の主。名前は秘密。みんなからは『|主《あるじ》さん』って呼ばれてる。ここは僕たちだけの館。君は久し振りのお客様だからね、とっても楽しんでもらいたいんだ。」
そういえば今、何時なんだろう?ポケットに携帯が入ってたはず…あれ?無い。ポケットには入っていなかった。
「どうしたのかね?何か気になる所があったのかい?それとも今お探しのこの板のことかな?」
主さんが右手に掲げているのは自分の携帯だった。
「それです。|それ《携帯》、返してくれませんか?大切な物なんです。」
今、携帯を板って言った?スマホ知らない人っているのか?
「それは無理だねぇ~」パシッツ
「え…?」
笑顔で携帯、消されました。なぜ?。マジックかなにか?
「びっくりした?」
「お茶会はもういいかな?僕とちょっとしたゲームに付き合ってもらいたいんだ。君がゲームに勝ったらあの板も返してあげる。でもね、君がゲームに負けたら………ん~どうしようかな。」
「はぁ……」
なんということでしょう、お菓子誘われてお茶会に出てみれば携帯を消されたではありませんか!
現在進行形で地獄見てんだけど。
携帯返してホントに…
「ゲームって言っても至って簡単。館の中で『宝さがし』をするだけだから。この目の前にある振り子時計が3回鳴るまでにこの館のどこかにある|あの板《携帯》を探すだけ。時間確認用の懐中時計を渡すから。ね、簡単でしょ?」
渡された懐中時計は細かな装飾が施されている。針は1時ちょうどを指していた。
「そうですか…分かりました。やりましょう、宝さがし。」
「ヒントはどこかの部屋の棚に置いてあるよ。」
こうして携帯を探す『宝さがし』がはじまった。
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後編へ続く!
長くてとても意味が分からない小説(当社比)になりました。自分でもよく分かりません。しかも前編て…
書きたかった話からなんか遠くなった気がします。
自分の読みたい話が見つからないからって自給自足して書くのは難しいですね。
最後までお読み頂きありがとうございました。
後編もお楽しみに。
いつ書き上げられるか分かりませんが、いつかは投稿します。